2024 年 80 巻 20 号 論文ID: 24-20140
地域公共交通政策のうち,Mobility as a Service (MaaS) と呼ばれる分野が勃興する以前から,「交通に関連する地域の課題への対応をベースにして,市民と行政が協働して進めるまちづくり」として,「交通まちづくり」という思想体系が発展してきた.本稿ではこうした MaaS の政策進捗において,「交通まちづくり」のそれと類似する理想が実現されているか,また公共交通事業者の一方性を取り除けているかについて,2020 年度の「日本版 MaaS」の全事例を精査した.その結果,交通政策において重視される機能の維持管理に関して,多くの計画では関知できていなかった.さらに市民参加による事業精査を内部に組み込んでいる事例も少数であった.この結果から,日本版 MaaS は構想段階では「交通まちづくり」と捉えられるが,実装段階ではそうではないといえる.