2024 年 80 巻 23 号 論文ID: 24-23333
日本の公共工事執行では,低価格入札への対応とくじ引き落札は,依然として重要な問題である.くじ引き落札は,地域・社会から信頼される「正直者」の成長を阻害する危険性がある.人口減少時代を迎え,後継者難が深刻化する中,正直者が成長できる制度環境を継続的に整備することが必要である.生産性革命と働き方改革の二大革命と改革は,正直者の形成・成長に大きく寄与すると考えられる.両者の実現には,公共工事執行制度の抜本的改革が不可欠であると考えられる.その方向性を検討したものの一つとして,「高知県版;公共調達規則(試案)土木一式工事の一般条件」がある.抜本的制度改革は,関係者に大きな不安を伴うため,関係者の不安を緩和しつつ改革を進めることが望ましい.心理学の分野では,一般に,不安とはリスクに対する感情的反応であると認識されている.本研究では,地方公共発注者が,公共工事執行と建設業界に関して,具体的にどのようなリスクを認知しているのか,それらの低減・解消のために公共調達規則の考え方と具体条項はどの程度有効と認識しているかを明らかにすることを試みた.