2024 年 80 巻 27 号 論文ID: 24-27016
本研究は道路等の線状築造物の有無が氾濫伝播に対してどの程度影響するか,2015年関東・東北豪雨災害における鬼怒川氾濫を対象事例とした数値実験により調べた.数値実験の結果,道路等の線状築造物の有無によって氾濫流の伝播速度は最大半分程度まで異なることが明らかとなった.具体的には,道路なしの場合の氾濫流の伝播速度は最大で0.49m/sであるに対し,道路ありの場合は0.27m/sであった.歩行困難者や身体障害者の歩行速度の目安が0.50m/sであることから,氾濫流が到達するまでの避難者の十分な移動距離を確保するためには,道路等の線状築造物が重要な役割を果たすことが示唆された.