2025 年 81 巻 3 号 論文ID: 24-00126
「流域治水」の達成には,河川と流域における浸透・貯留機能を回復し活用することが大きな鍵となる.本研究では,河川に本来備わっている河岸浸透貯留現象を活かすことによって,洪水流量を河畔に一時的に貯留し洪水流量を低減させる可能性について検討した.河道の流れと地下水流の支配方程式をもとに,河道と透水層の結合系における相互作用をモデル化した.河畔透水層が河道から半無限に広がるケースと,その広がりが有限な範囲に限られるケースについて,それぞれ細砂層から礫層まで幅広い透水性を設定した.河川と透水層の相互作用を考慮した洪水追跡により,河畔透水層の存在が洪水流量の低減にどれほど貢献できるかを定量的に評価した.その結果,河畔域が砂礫地盤の場合は,河岸浸透貯留による洪水流量の低減が十分に可能であることが示された.