2011 年 67 巻 1 号 p. 48-56
本研究は,近年大幅な技術的進歩をした繊維補強コンクリート(FRC)に着眼し,このコンクリートが保有する基本的音響性能の評価を行い,将来の楽器としての可能性を検討した.FRCにおいて製造メーカーの相違,すなわち結合材量と繊維量の差は,板構造の音響特性にほとんど影響を与えなかったが,板厚が薄くなるほどFRC独特の音響性能が出せる可能性がある.管構造(フルー管)の音響解析から,FRCは木材と比較し,高周波数域で高い音圧レベルを示した.この差が官能検査結果に差異を与え,FRC製が木材製に比べ「‘明るさ’‘美しさ’‘迫力’」の面で優位になり,楽器としての性能を保有することが分かった.