2020 年 76 巻 3 号 p. 209-228
本文は,機器・設備類の固定に用いられる先付けアンカーの地震時履歴特性について,コンクリートの曲げひび割れを考慮した静的実験および動的実験に基づいて解明するものである.試験体は頭付きアンカーボルト4本を定着させたRC部材であり,アンカーの破壊モード,曲げひび割れの有無,ひび割れ補修の有無をパラメータとした検討を行った.静的実験の結果,ボルト降伏先行型では,曲げひび割れ有りの場合には無しの場合と遜色ない耐力や変形性能を発揮すること,コンクリート破壊先行型では,曲げひび割れによって耐力が低減するものの,ひび割れ補修によって耐力の回復が見込めることを明らかにした.また,動的実験では,加振による応答履歴が静的実験の結果と概ね整合することなどを確認した.