2020 年 76 巻 4 号 p. 332-348
九州地区における実構造物の実態調査を基に,劣化の顕在化に与える影響要因を明らかにした.次に,室内試験および実構造物から採取したコアを用いて透気係数と各種劣化因子に対する物質移動抵抗性との関係性を明らかにし,透気係数を軸として劣化が顕在化し易いか否かについて評価を行った.その結果,「水掛かりあり」の箇所は鉄筋腐食の進行が早く,腐食ひび割れの発生や錆汁,剥離等の外観変状が早期に顕在化し易いことが分かった.また,同構造物において劣化部と健全部で透気係数を測定したところ,各種拡散係数が同等であっても劣化部の透気係数は,健全部に比べて大きくなっていた.採取コアを用いた透気係数の測定によって,将来的に劣化が顕在化し易いか否かを評価する指標として適用できると考えられた.