土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
ISSN-L : 2185-4688
海洋開発論文集 Vol.27
沖合波浪およびAISデータを用いたフェリー海難の事故分析に関する研究
笹 健児若林 伸和小林 英一寺田 大介塩谷 茂明
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2011 年 67 巻 2 号 p. I_832-I_837

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抄録
 船舶海難は人命の損失だけでなく,積載貨物や燃料油,船舶が海洋中を漂流し沿岸環境の被害も伴う.近年,ナウファスの沿岸波浪データがWEB上で提供され,船舶関係者に貴重な情報源となっている.しかし,一昨年に大きな船体動揺にて航行不能となったフェリーA丸の海難事故など荒天時における安全管理は未だ課題も多く,波浪情報から船舶や貨物の安全限界を推定する方法論に改善の余地がある.本研究では航行中に船体破損した上記海難時の波浪データと船舶AISデータの関係を分析し,船体動揺の数値解析により海難を誘発した要因を考察した.検討の結果,A丸が海難に発展する大きな横揺れが発生した理由としては,変針によって横揺れが増大する相対波向となったことが大きい.波浪外力のみでは25°の横揺れが発生するとは考えにくいが,操舵による当て舵時の外方傾斜と同位相になった場合には横揺れ角が大きく増大する可能性がある.また変針後に10°前後の横揺れが2時間ほど継続した影響で,積載貨物の固縛が弱まり,カオス現象等で見られる貨物の荷崩れが突然発生したため,25°の横傾斜につながった可能性の両方が考えられる.
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© 2011 公益社団法人 土木学会
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