抄録
平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震はMw9.0の海溝型巨大地震であり,それにともなう津波により東日本の沿岸域を中心に甚大な被害を持たらした.本稿では,千葉県銚子市沖約3kmにおいて観測された同津波の特徴的な波形について,非線形長波モデルによる数値的再現性を確認した結果を示す.
数値解析の結果,観測された水位・流速の変動パターンはよく再現されていたが,その一方で,変動の大きさについては過小評価となっていた.過小評価の原因としては,初期水位の計算において震源断層の破壊伝播速度が無限大であると仮定したことが挙げられる.また,数値解析の結果に基づき銚子沖における津波の伝播特性を調べた結果,犬吠埼における回り込みや屏風ヶ浦における反射などが重なり合った複雑な様相が見られた.