抄録
本研究では,「ライフサイクルマネジメントのための海岸保全施設維持管理マニュアル(案)」に基づき実施された点検結果を分析し,海岸保全施設の劣化予測に資する知見を蓄積することを目的とした.そのために,上記マニュアルに基づく点検結果を分析し,その課題を抽出するとともにマルコフ連鎖モデルに基づいて劣化進展速度(遷移率)を算出した.その結果,海岸保全施設の遷移率は概ね対数正規分布に従うこと,施設形式や建設地域に依存した遷移率の明確な傾向は確認されず,一定の割合で劣化進展の速い施設が存在することなどを示した.また,今後の課題として,建設年,施設形式,点検・補修履歴などの情報のデータベース化を推進するとともに,点検診断結果に基づく健全度判定および劣化予測の手法を高度化する必要があることを指摘した.