抄録
海浜砂の色彩は,景観や生態系など海浜の持つ様々な機能と関係しているにもかかわらず,これまで海岸工学分野において研究対象になってこなかった.本研究では,我が国の23の海浜において採取した砂の色を定量的に分析し,相対比較することにより,各々の海浜の色彩の個性を明らかにした.加えて,それらの砂の供給源になると想定される近隣河川の流域地質特性の面から色彩の成立条件について検討した.海浜の色彩は,明暗と茶色黒色系統で座標化することが可能で,前者は苦鉄質火山岩と珪長質岩石類との比率に,後者は珪長質の火山岩と深成岩との比率に関係することが明らかになった.例えば,鹿児島県内の海浜は総じて茶色系統の暗め色彩であるが,これらが苦鉄質火山岩類に影響されていることなど,各地域における地質構成と海浜色彩の関係がわかった.