2013 年 69 巻 2 号 p. I_1114-I_1119
ホソウミニナが提供する生態系機能と,取り巻く生物との種間関係を明らかにするために,ホソウミニナ,ユビナガホンヤドカリおよび底生珪藻に着目して,野外観察・実験を行った.既存干潟の77.5%のユビナガホンヤドカリはホソウミニナの貝殻を利用していた.ホソウミニナとユビナガホンヤドカリ,それぞれ単独では底生珪藻の密度を低下させたが,両種を混在させると底生珪藻の密度低下が緩和された.ホソウミニナは生態系エンジニアとして,ヤドカリの棲み場所の提供や物質循環を担っていたが,そのヤドカリにより種間相互作用が更に複雑化されていた.ホソウミニナのような生態系エンジニアにしっかり配慮していくことで,生物多様性の高い干潟の創出につながっていくことが明らかになった.