土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
ISSN-L : 2185-4688
69 巻, 2 号
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海洋開発論文集 Vol.29(特集)
  • 鷲尾 朝昭, 坂本 登, 中嶋 周作, 青木 功, 川口 浩二, 永井 紀彦, 仲井 圭二
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_1-I_6
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     本稿は,洋上風力発電の実用化をめざすために,北九州市沖海域で進められている気象・海象観測のこれまでの経緯と現況を紹介するものであり,洋上風の特性把握や,波浪と洋上風の同時生起性の検証を通じた最適な風作用と波作用の組合せ方法の構築等を研究の最終目的としている.このため,本稿では,北九州市沖に新たに建設された洋上の総合的な気象・海象観測システムの経緯と現況を紹介するとともに,2012年10月の観測開始後の気象・海象観測データの一部を報告する.
  • 河合 弘泰, 川口 浩二, 関 克己, 猪俣 勉
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_7-I_12
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     NOWPHASのGPS波浪計と沿岸波浪計の観測データを用い,年や月単位で20分平均波パワーの累積分布曲線や統計量を求め,波パワーの海域特性や季節変化,年変動を調べた.その結果,20分平均波パワーが年・月の平均値を超える確率が20~40%であり,20分平均と日平均のどちらの波パワーで統計するかによって年・月の最大値や最小値は倍半分も違うことが明らかになった.波パワーの年変動は大きく,平年値をある程度正確に求めるためには多年のデータが必要である.東北地方の太平洋沿岸と日本海沿岸のGPS波浪群では,波パワーの平均値も中央波向もほぼ一様である.沿岸波浪計の波パワーはGPS波浪計より小さく,取り囲む地形の影響で地点間の違いも顕著である.さらに本研究では,波浪推算による欠測期間の補完も試みた.
  • 中村 孝幸, 阿部 洋士, Firman HUSAIN, 井内 國光
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_13-I_18
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     潮流エネルギー変換装置の代表的なものであるサボニウス式水車は,水車起動のための水流初動速度が小さく回転トルクが大きいなどの利点はあるが,回転速度が遅く結果的にエネルギー変換効率が低くなるなどの欠点もある.
     本研究は,基本的な性能に優れる直立型サボニウス式水車に着目して,その変換効率を高めるため新規に水車の周囲に流向制御板を取り付けるなど増速装置を付設する工法を提案すると共にその有効性について明らかにする.既に著者らは,外輪型流向制御板を導入することで,直立型サボニウス式水車による潮流エネルギーの変換効率が有意に改善できることなどを示した.ここでは,発電用水車の支持構造や実海域を想定した場合などを含め,さらなる潮流エネルギー変換効率の改善工法について検討を加えたので,その成果について紹介する.
  • 村上 和仁, 吾妻 咲季, 中村 明彦
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_19-I_24
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     富栄養化が極めて進行した状態であった蓮沼海浜公園ボート池(千葉県山武市)を対象として,東日本大震災に伴う津波が生態系構造にいかなる影響を及ぼしたかについて検討した.蓮沼海浜公園ボート池は,リン過多の富栄養状態にあり,藍藻類によるアオコが毎年のように発生していた.住民からの不安や苦情もあり,2004年,2009年,2010年にボート池の底泥の天日干しによる好気化処理が施されたが,アオコの抑制効果は一時的なものに過ぎず,2009年のシオグサの大繁茂や2010年には再びアオコが発生するようになった.2011年3月の津波による海水の流入により,ボート池の水質は大幅に変化し,同時に絶滅危惧種であるカワツルモの大繁茂など生態系構造も大きく変化し,水質も富栄養化状態から改善され,生物多様性も豊かになった.
  • 日比野 忠史, 高橋 敦嗣, 福井 勝吾, 二瓶 昭弘
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_25-I_30
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     震災ガレキに含まれる多量の有機泥(ガレキ泥)を安全に使用するための手法を確立した.ガレキ泥には動物性と考えられる微細有機物が含まれており,分解に伴うガスの発生が懸念される.微細有機物はシルト・粘土粒子に付着し易いため,ガレキ泥には微細有機物が高密度に付着した数10μmの有機泥として含有されている.有機物は燃焼温度の低い不安定な有機物と燃焼温度の高い腐植性有機物に分けることができる.本研究ではこの燃焼特性を利用してガス発生のリスクの高いガレキ泥の特定方法を提案するとともに,ガスの発生を抑制できるアルカリ剤造粒物の利用法について示した.
  • 岡田 知也, 古川 恵太
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_31-I_36
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震によって発生した津波によって,干潟・浅場は大きく地形変形し,藻場は消失するなど,宮古湾(岩手県)の生態系は甚大な影響を受けた.著者らは,アマモ場に着目し,アマモ,地形および底質環境を合わせた総合的な環境復元過程を検討すること考えた.本研究では,宮古湾において,アマモ場の復元のための初期の情報として底質の状況を把握することを目的とした.調査は2011年2月と10月に行った.2月調査により,津波被害後のアマモ場を,底泥の粒度分布からアマモ生育の適性度を評価し,3つにゾーニングした.10月調査では,ゾーニングに基づいて空間的に密な調査を実施し,詳細な底質およびアマモの分布状況を把握した.この底質の分布データは,今後の底泥およびアマモの回復過程の初期データとして有用となる.
海洋開発論文集 Vol.29
  • 小笠原 敏記, 中畑 摩耶, 松林 由里子, 堺 茂樹
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_37-I_42
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     2010年東北地方太平洋沖地震津波では,和歌山県においても大津波警報が発令された.近い将来,南海トラフ沿いで発生の可能性がある巨大津波から人命を守るためには,今回の津波での避難行動を把握することは重要である.本研究では,アンケート形式によるヒヤリング調査を実施し,避難行動を把握すると共に,昭和南海地震津波の風化が懸念されるが,その経験が避難行動に活かされているのかを明らかにする.その結果,避難率は3割弱であり,主な避難者は大津波警報を基に,海岸から100m未満かつ浸水の可能性があった場所に居た人たちと推察される.また,強い揺れ=津波という教訓が,今回のような遠地津波では避難率を低下させる要因であったと言える.さらに,日頃の防災対策が大切であり,避難によって難を逃れた岩手県の事例を報告し,逃げるためのソフト対策の重要性を示唆する.
  • 鷲見 浩一, 大淵 啓介, 武村 武, 落合 実
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_43-I_48
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震津波に際しては,ハード対策の限界を補うソフト対策の重要性が明白となり,巨大津波に対して,安全性の向上を考慮したハードとソフトの連携的な整備が必要とされている.本研究では,巨大津波来襲から2年が経過した市町村の防災対策の実態をアンケート調査により検討し,調査結果に基づいた災害教育手法を提案した.その結果,避難勧告・指示の発令基準と発令の意志決定プロセスなどについて,震災から2年が経過し,各地域間の対策に差違が生じ,充分な整備がなされていない場合も確認できた.また,学校教育において,参加者が主体的に避難活動に取り組むことによって,安全の確保を支援するデザイン教育と災害伝承とを融合させた教育手法について検討した.
  • 安野 浩一朗, 森屋 陽一, 西畑 剛, 間瀬 肇, 森 信人
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_49-I_54
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     東日本大震災による甚大な津波被害の発生を踏まえ,人的被害の抑制を第一に考える減災対策が重要視されるようになった.本研究は,気仙沼地点を対象として,これまでの想定連動型地震津波(レベル1津波),および東北地方太平洋沖地震津波(レベル2津波)について避難行動解析を実施し,津波レベルや避難方法,年齢の違い等が人的被害へ与える影響について詳細に解析した.その結果,レベル2津波では,海沿いの60 歳以上の高齢者は地震発生直後に徒歩による避難を開始したとしても避難困難となる可能性が高く,地震発生から40分後に避難開始した場合で30%の避難困難者が発生する.また,自動車による避難では,走行車両の数による避難成功率の変化が大きく,1000台程度まで車両が増加すると,徒歩避難よりもかえって避難時間を要し,40分後に避難開始した場合で40%台まで避難成功率が低下することなどの結果が得られた.
  • 土井 博
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_55-I_60
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     港湾はグローバル・サプライチェーンの中で機能しており,緊急時における港湾の機能維持・早期回復は必要不可欠である.港湾における緊急時の適切な対応を検討するため,東日本大震災時の安否確認、情報共有、業務再開等についてアンケートを実施した.その結果,情報共有の事前の決定は自組織内外の早期連絡及び早期会合の開催に大きく寄与していることが明確となった.平常時に情報共有の範囲・方法を定めておくことが緊急時に有効であり,その重要性が検証された.その一方で,情報の不確実性に関連する課題を解決するため,ICS等を参考に情報共有の具体的な範囲や内容等の検討が必要である.
  • 笹 健児, 寺田 大介, 塩谷 茂明, 若林 伸和, 大澤 輝夫
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_61-I_66
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     原油高騰や経済危機などもあり,船舶の運航時にコスト最適化が死活問題となっている.外洋を航行する場合,波浪による船体運動などの側面から気象海象の情報をいかに正確に反映・活用するが問われている.本研究では,日本近海および遠洋海域の船舶運航者を対象に広範囲な調査を実施し,船舶運航者から見た波浪予報の利用実態と現状での信頼性,問題点をある程度明らかとした.さらに東日本の太平洋側を航行する船舶の事例から低気圧が日本近海にて発達したときの波浪予報が的中しなかったパターンを整理し,日本南岸から北東進しながら急発達する低気圧の波浪パターンが予報困難であったことをデータも交えて2例明らかとした.一方,当時の波浪データから極大波への遭遇は見られず,統計的に特異な波浪によるというよりも局所的に卓越する低気圧による風や波浪を高解像度で予報する必要性を明らかとした.
  • 山瀬 晴義, 上田 茂, 岡田 達彦, 荒井 章之, 清水 謙太郎
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_67-I_72
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     本研究においては,著者が測定したわが国の主要コンテナバース2港および東南アジアの主要コンテナバース1港の接岸速度,他の機関等が測定したわが国の主要1港およびバルクバース1港の接岸速度を統計的に解析し,接岸速度と船型(DWT),風向・風速,波浪の有無,タグボートまたはスラスター使用及びその員数との関係を分析した.接岸速度の統計的性質に基づいて,船舶接岸用防舷材の信頼性設計への適用を検討し,船舶接岸用係留施設の所要の安全水準に対する設計用値について明らかにする.
  • 岡本 修
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_73-I_78
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     本報告では,東日本大震災が起こった際に,東北地方と関東地方の太平洋側の港湾に在泊していた船舶がどのような行動をとったかについて,詳細に調査しとりまとめている.船舶としては漁船やプレジャーボートを除く120隻について情報収集を行なっている.また,これらの船舶被害等に関する調査結果と実際に来襲した津波諸元との関係を調べ,いくつかの図表に取り纏めている.
     このほか,船社に対するヒアリング調査などから,東日本大震災を踏まえた今後の震災に関する教訓事項について取り纏めた後,今後港湾において津波時の船舶の安全性を向上させるための対策についても考察を加えている.
  • 増田 光弘, 増田 光一, 南 清和, 居駒 知樹
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_79-I_84
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     津波来襲時,荷役作業中の船舶や船員不在の船舶などは,緊急離桟し,安全な海域に避航できない可能性がある.そのような場合,岸壁に係留された船舶は,岸壁に係留されたまま係留索の破断や岸壁への乗り揚がり,他船や陸域の建築物などとの衝突といった津波の脅威に備えなければならない.岸壁に係留された船舶の津波対策の一つとして,増しもやい対策が考えられる.本研究では,3次元MPS法プログラムを用いて3,000DWTの船舶を一例として津波高と津波の入射角度の違いが係留索の破断に与える影響について検討を行い,係留索破断チャートを作成した.そして,その係留索破断チャートを基に,係留索の本数を増やすことによる増しもやい対策が係留索の破断に与える影響について数値シミュレーションを行い,増しもやい対策の有効性や課題点について検討を行った.
  • 増田 光一, 増田 光弘, 居駒 知樹, 村田 一城, 南 清和
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_85-I_90
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     津波における岸壁に係留された船舶の被害は船舶の衝突,漂流といったように複合的であり,その原因の1つが岸壁に係留された船舶の係留索の破断であるといえる.しかし,2011年3月11日に発生した東日本大震災時に宮城県塩釜港内にある浮桟橋では,係留された観光船の係留索は破断せず漂流しなかった事例が確認されている.そこで本研究では3次元MPS法を用いて浮桟橋を介して船舶を係留した場合,係留索張力が軽減させる効果があるのか数値検証を行い,浮桟橋の固定岸壁係留に対する優位性について検討した.また,浮桟橋の杭にかかる津波荷重や伝播する津波の入射角度の違いによる挙動特性の解析を行った.
  • 猿渡 亜由未, 丸山 利幸
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_91-I_96
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     海洋エネルギーを新たな再生可能エネルギー源として利用する為の研究開発が世界的に進む中,日本でも利用に向けた取り組みが活発化している.海洋エネルギーを利用する際サイトの選定が重要であるが,現在のところ日本沿岸における海洋エネルギーのマッピングは十分に成されていない.本研究では波浪エネルギーに着目し,北海道周辺における冬季の波浪場を波浪推算モデルにより再現し,エネルギーの分布や海域毎の特徴の違いについて考察する.北海道太平洋側ではえりも岬,根室を中心として大きな波浪エネルギーが存在し,その周辺に向うに従いエネルギーポテンシャルが低下していく特徴が見られた.一方日本海側では地形による平均波浪エネルギーのばらつきが大きいものの場所によっては比較的大きなエネルギーが分布していると考えられる.
  • 村上 啓介, 岡本 英久, 真木 大介
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_97-I_102
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     地球温暖化や平均海面の上昇が現実のものとなりつつある現在,自然エネルギーを利用した発電技術の開発に再び関心が集まっている.本研究は,小振幅の波に対して波エネルギーを効率的に取り出すことができる波力発電システムの開発を念頭に,半没水した円筒管(波動ポンプ)を直立壁前面に設置し,その内部で波運動を増幅させるシステムを着想し,円筒管内部の波運動の増幅特性を水理模型実験で明らかにすることを目的に実施した.このシステムは,内湾等の比較的静穏な海域において,円筒管を既設防波堤の前面に多数配置し,円筒管内部の波運動を増幅させることにより管の上端開口部で効率的に空気流を発生させることを想定している.また,本研究では,円筒管内部の浮体の運動エネルギーを利用した発電方法の開発も念頭に,円筒管内部に設置した浮体の運動特性を水理模型実験により検討した.
  • 武田 将英, 有川 太郎, 窪田 幸一郎, 下迫 健一郎, 五十嵐 学, 加藤 大, 金谷 泰邦
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_103-I_108
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     大縮尺の水理実験では,耐久性や強度の問題から実験模型に鉄やコンクリートなどを使用する事が多く,安全性,施工精度,施工性,工程管理など,現場の工事に類する施工管理が必要となる.そのため,一般的な室内実験の知識に加え,構造物建設に関する現場の知識も要求される.しかし,そのような知見についてはこれまで整理されていない.そこで,本研究では,波力発電装置の波浪実験で使用した縮尺1/6.67の大規模模型を例に,実験模型に対する要求事項を満足させつつ,大規模模型や実験水路に由来する現場作業における制約事項を検討し,どのように模型を製作していったかという過程について整理を行った.
  • 小牧 裕幸, 山城 徹, 城本 一義, 仁科 文子, 中村 啓彦, 広瀬 直毅
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_109-I_113
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     黒潮流軸データとADCP流速データを用いて,黒潮を利用した海流発電の適地を調べた.その結果,トカラ海峡は海流発電の適地であることを明らかにした.特に,口之島と中之島においては,黒潮の強流帯が沿岸近くに位置していることを示した.口之島北端部と中之島南端部の水深60m以浅の海域において,0.8m/s以上の流速が水平方向に約1.5km以上にわたって分布していた.また,数値モデル(DREAMS)の計算結果は中之島南側の海域の方が口之島北側の海域よりも海流発電に適していることを示唆した.
  • 島谷 学, 力石 大彦, 佐々木 慎, 中井 崇斉, 山口 祐一郎
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_114-I_119
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     再生可能エネルギーを活用した発電方法のうち,洋上風力発電はそのポテンシャルの高さから日本国内での実用化が期待されており,現在北九州市沖にて洋上風力発電施設の建設が進められている.建設においては,陸上での施工とは異なり多くの課題が存在する.本研究では,その中でも風車側の性能要求事項である鉛直精度を洋上の沖合にていかに確保するか,また限られた工期で安全に施工を行うにはどのような管理が必要かに着目し,洋上風力発電施設の建設工事を通じて施工管理方法の検討を行った.
  • 居駒 知樹, 増田 光一, 大森 光, 大澤 弘敬, 宮崎 剛, 木原 一禎
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_120-I_125
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     波力発電装置の1つの形式として振動水柱(OWC)型波力発電装置がある.OWC型装置にプロジェクティングウォール(PW)を取り付けることによって一次変換性能が向上することが確認されているが,詳細な性能向上メカニズムは解明されていない.そこで,本研究は理論計算により装置の一次変換性能に与えるPWの効果を明確にすることを目的とした.系統計算を実施することでPW内とOWC内の水の挙動を調べ,装置の一次変換性能に与えるPWの効果を明らかにした.また,防波堤に取り付けたモデルでの検討も行い,一次変換性能に与える防波堤の影響についても評価した.
  • 田中 翔一, 野戸 秀晶, 武若 聡
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_126-I_131
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     気柱振動型波力発電装置の効率化に関する検討を行った.数値計算により,空気室カーテンウォール周りの渦の発生状況と空気流のエネルギーを調べた.計算には,CADMAS-SURFをベースとしたプログラムを使用した.入射波エネルギーの一部は渦の生成の消費され,これにより空気流の発生が影響を受ける.空気室のノズルから発生する往復気流を一方向流に整流する装置について検討した.整流装置には,空気室内の水位変動に応じて開閉を制御する弁を設けた.弁の制御を適切に行うことにより,一方向流を発生させられることを確認した.
  • 森本 陽介, 水谷 法美
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_132-I_137
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     防波堤の付加設備として機能させる波力発電装置の開発を目的として,下部ヒンジ振子型波力発電装置の開発と水理模型実験による性能評価を行った.発電装置には中空の三角形型の下部ヒンジ振子を使用し,それを防波堤を模擬した反射板前面に設置した.本研究により,装置設置位置と入射波長との無次元距離が発電効率に大きな影響を与えることを確認した.また,発電効率は波高水深比にも影響されることを確認した.本提案システムの入射波のエネルギーに対する発電効率は最大で7.3%を記録した.さらに反射率の算定結果より,本発電装置は波浪低減効果を有することも確認された.そして反射率も発電効率と同様,装置の設置位置によって影響を受けることが明らかとなった.
  • 居駒 知樹, 中澤 那世留, 増田 光一, 仲村 泰徳, 林 昌奎
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_138-I_142
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     本研究では, 流速の遅い海域においても起動が可能でありかつ,高いトルク性能,発電効率をもつ高性能可変ピッチ翼垂直軸型水車を開発することを目的とする.そのため,可変ピッチ機構には機械的に制御角を決定できる方法を導入した.本研究では可変ピッチ機構の有効性を示す為,水車模型を用いた水槽実験により水車の性能評価を行った.また,広範な流速域で発電を可能とする翼制御角度の設定方法の検討を行い、実海域での発電を想定した年間エネルギー獲得量の試算を行った.本研究の結果として,可変ピッチ機構を導入することにり,水車の性能が向上することが明らかとなった.
  • 佐々 真志, 山崎 浩之, 後藤 佑介
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_143-I_148
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     本研究では,液状化発生に及ぼす地震動波形の不規則性と継続時間の双方の影響を考慮した新たな液状化予測・判定法を構築した.そして,同手法の妥当性について,日本海中部地震,釧路沖地震,兵庫県南部地震,駿河湾地震および東北太平洋沖地震の過去の5つの被災事例を用いて検証し,新たな予測判定法によって液状化予測判定の精度が向上したことを明らかにした.今後は,同手法が,港湾・臨海部における液状化予測ならびに液状化対策の施策決定に幅広く活用されることが期待される.
  • 小濱 英司, 菅野 高弘, 竹信 正寛, 宮田 正史, 野津 厚
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_149-I_154
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     港湾において船舶とのコンテナ荷役に供するコンテナクレーンは1995年兵庫県南部地震において多大な被害を受けたことから,免振装置の導入などの耐震技術開発がなされてきた.開発されたクレーンは耐震強化岸壁上に導入が進められ,地震時におけるコンテナ埠頭の機能維持に大きく寄与をしている.コンテナクレーンは港湾におけるコンテナ荷役を支える一要素であり,地震後の港湾機能の確保において下部の岸壁構造との一体的な耐震性能が確保される必要がある.このような背景の下,コンテナクレーンの耐震性能照査に関連して,その基本的な動力学特性を把握する検討として,クレーンでの強震観測や微動観測などが行われつつある.本研究では,2011年東北太平洋沖地震において得られたコンテナクレーン及びその下部岸壁での強震観測データについて整理し,実際の地震時におけるコンテナクレーン及び下部岸壁の振動特性の解明を試みる.
  • 大石 雅彦, 長尾 毅, 大内 正敏, 佐藤 祐輔, 清宮 理
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_155-I_160
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     ニューマチックケーソンを基礎に適用した既設の港湾施設の横桟橋を対象に,常時微動観測により振動特性を把握し,2次元地震応答解析結果と比較することで振動特性が解析により正確に評価できることを示した.その結果を踏まえ,地盤の1次元地震応答解析により地盤ばねを評価し,これを骨組みモデルに適用することで,本工法を適用した横桟橋のレベル1地震動に対する簡易耐震性能照査を提案した.簡易耐震性能照査法において用いる減衰定数についての提案を行った.
  • 秦 吉弥, 秋山 充良, 高橋 良和, 後藤 浩之, 野津 厚, 幸左 賢二
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_161-I_166
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     宮城県本吉郡南三陸町志津川では,2011年東北地方太平洋沖地震による巨大津波の来襲により,土木施設に甚大な被害が及び,多数の死者・行方不明者が出た.志津川は比較的震源域に近いことから,津波来襲前の強震動により施設が損傷を受けていた可能性もあり,志津川における強震動の評価は非常に重要であるが,被害の生じた志津川平地部では本震記録として気象庁計測震度の値しか残されていない.そこで本研究では,志津川平地部において余震観測を実施し,得られた記録に基づいてサイト特性の評価を行い,スーパーアスペリティモデルに基づく強震波形計算を行うことにより本震時の強震波形を推定した.
  • 大矢 陽介, 小濱 英司, 野津 厚, 菅野 高弘
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_167-I_172
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     防波堤基礎の置換砂層が地震時に液状化すると防波堤は沈下し,後続の津波に対して必要な天端高を確保できない可能性がある.このような沈下被害があった兵庫県南部地震の地震動と比較して,近年のシナリオ地震動は継続時間が長く,地震規模の指標に使われるPSI値が大きいものが少なくない.本研究では,このような長継続時間地震動に対する防波堤の沈下量を予測する目的で,兵庫県南部地震の観測波形と南海トラフの想定地震動を用いた1g場大型模型振動実験を実施した.振動実験の結果,置換砂層における過剰間隙水圧の上昇過程や防波堤の沈下速度には地震動の波形の特徴が現れた.また,入力地震動のPSI値が大きくなると沈下量は大きくなり,巨大な地震動に対して防波堤が大きく沈下する可能性が示された.
  • 太田 隆夫, 平山 隆幸, 安田 誠宏, 辻尾 大樹, 松見 吉晴, 間瀬 肇
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_173-I_178
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     本研究は,消波ブロック被覆堤を対象として,モンテカルロシミュレーションによる消波工のライフサイクルコスト(LCC)の算定において,高波発生回数が及ぼす影響を検討したものである.LCCとして初期建設費と供用期間の補修費を計上し,高波発生回数を年1回とする場合と,波浪観測資料にもとづく統計的特性を考慮して与える場合の2通りの計算を行った.日本沿岸の4地点での高波資料を解析した結果,年間の高波発生回数はポアソン分布で近似できることが示され,LCCの算定においてポアソン乱数で高波発生回数を与えた.結果として,LCCを最小とする消波ブロック径が高波発生回数の与え方によって異なったのは1地点のみであったが,補修費の変動性については差異が生じ,高波発生回数の及ぼす影響を考慮する必要性が示された.
  • 尾崎 亮太, 横田 弘, 橋本 勝文, 古谷 宏一
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_179-I_184
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     本論文では,直杭式横桟橋の下部工を対象に補修シナリオの評価を行った.桟橋下部工の鋼管杭の腐食により桟橋の性能低下が生じると考え,コンクリート上部工,鋼管杭および地盤の非線形系を考慮したプッシュオーバー解析により桟橋の静的荷重-変位関係を求めた.その際,腐食速度は鋼管杭の水深毎の肉厚測定結果から算出し,腐食による桟橋下部工の残存肉厚の変動をモデル化した.1質点非線形動的解析によりレベル1地震動とレベル2地震動による地震作用を得た.破壊確率は桟橋の性能限界値と地震作用の確率分布より,モンテカルロシミュレーションを用いて求めた.さらに,4つの補修シナリオを設定し,ライフサイクルコストを指標として補修シナリオの妥当性を評価した.
  • 長尾 毅, 辻尾 大樹, 熊谷 健蔵
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_185-I_190
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     本研究は,ライフサイクルコスト最小化の観点から,既設の混成堤と消波ブロック被覆堤を対象として,最適な復旧水準を一般化するための基礎的な検討として,異なる波浪条件,被害額条件を設定し,それらの条件が最適な復旧水準に与える影響を検討するものである.混成堤,消波堤ともに,期待滑動量は水深波高比と強い関係があり,本研究の対象条件の範囲では水深波高比0.5程度で極小値をとり,同じ耐力作用比であっても耐波安定性が異なることがわかった.防波堤の最適な復旧開始水準は,耐力作用比,波浪条件,間接被害額条件によって異なるが,耐力作用比に最も強く影響を受けることがわかった.本研究を通じて,既設防波堤の各条件に適用でき,復旧開始水準を定量的に評価できる解析手法を提案し,モデル防波堤によってその妥当性を確認した.
  • 兵頭 武志, 北里 新一郎, 本城 勇介, 大竹 雄
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_191-I_196
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     港湾構造物は厳しい海洋環境にあることから,塩害が劣化の主要因とされる.特に桟橋上部工コンクリートの下面側は塩害による劣化進行が速く,維持管理上,重視すべき主要な構造部材である.上部工下面側については,通常の点検では,海上から小型船舶を使ってアクセスし,外観目視調査により概略の健全性評価を行う.さらに詳細に調査する場合は,コア採取による塩化物イオン量測定を実施することになるが,荷役作業など施設の利用中は調査が行えないことやコア採取時の足場の確保など,効率的に行うには制約や課題が多い.
     本研究では,離散的な位置での情報から対象域全体の情報を推定する場合によく用いられる空間統計学(クリギング)を適用し,桟橋上部工におけるいくつかの塩化物イオン量の離散的なデータから対象全体の劣化状況分布を推定するとともに,目視点検結果と塩化物イオン量の分布の関連性を比較分析し,効率的な維持管理方法を提案する.
  • 長尾 毅, 島田 伊浩, 三吉 正英, 小坂 康之, 力竹 正広, 東 博之
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_197-I_202
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     海洋を主とする公有水面での浚渫工事や埋立工事等において,発生する汚濁の拡散を防止するために設置される汚濁防止膜は,フロート部,カーテン部,アンカー等により構成され,近年カーテン部の再利用が進んでいる.ポリエステル織物が一般に用いられるカーテン部は経時劣化が避けられないことから,設置期間に対応した劣化強度を見込んで設計が行われる.この劣化強度は,データ数が比較的乏しいことなどから,特に再利用品については従来かなり安全側の設定が行われてきた.本研究では,汚濁防止膜カーテン強度の経時劣化評価法を構築することを目的として,実海域における実験データをはじめとする数多くの経時劣化データを収集し,設計に用いる劣化強度関数を提案した.
  • 島田 伊浩, 新井 洋一, 長尾 毅, 三吉 正英, 山本 直文, 岡本 直, 石坂 修, 須藤 彰二
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_203-I_208
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     汚濁防止膜は,工事中に発生する汚濁の拡散を防止する環境対策を目的として設置され,設置期間中に汚濁防止膜の破損等により汚濁の流出があった場合は,自然環境の破壊など社会的に大きな影響を与えることになる.近年の循環型社会形成の観点から,レンタル製品の利用が進められているところであるが,材料の使用目的から簡単にリサイクルすることは困難であり,カーテン部の品質の確認手法が重要となる.しかし,汚濁防止膜のカーテン部に使用されているポリエステル織布の品質については,使用期間と劣化の関係について明確なデータが存在しない状況にある.そこで,同一現場における経年劣化の実態を把握するため,実海域に汚濁防止膜を設置し,定期的に供試体を採取し物理的特性の関係を研究した.
  • 伊井 洋和, 水田 洋司, 浅田 潤一郎, 佐々木 公彦, 藤田 浩一, 菅付 紘一, 高橋 洋一
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_209-I_214
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     方塊ブロック式や直立消波ブロック式などの重力式コンクリートブロック多段積み構造に対して,ブロック間にゴムマットを設置することで摩擦力を高めるとともに,弾性体としてのゴムマットの特性を利用し,ブロック多段積構造の耐震性を向上させる方法を提案した.提案法の検証のためにコンクリートブロック多段積み模型を作製し,ブロック間にゴムマットを設置して振動台加振実験を実施した.ゴムマットは硬さの異なる5種類を用意した.摩擦係数試験を行い,5種類のゴムマットの静止摩擦係数と動摩擦係数を測定した.これらの実験結果から,ゴムマットを設置した場合の各々の振動特性を明らかにし,耐震性を向上させるゴムマット設置効果の有効性を確認することができた.
  • 松下 紘資, 平石 哲也, 川田 達也, 間瀬 肇
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_215-I_220
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     近年の海面上昇や台風の大型化によって,偶発波浪と呼ばれる既存構造物の設計値を大きく上回る異常波浪が頻発しており,ケーソンが滑動する被災事例が多くなっている.このような被災に対して,間瀬ら(2011)は防波堤の港内側に設置して滑動抵抗力を増大するカウンターウェイトブロックを提案している.本研究では,このカウンターウェイトブロックを設置した防波堤について水理模型実験を実施し,防波堤への適用について検証した.実験は,波高を一定として,3種類の周期の波を作用させた.その結果,カウンターウェイトブロックで補強したケーソンは滑動量を抑えることができ,防波堤の補強工法として有効であることが分かった.
  • 永井 栄, 泉田 裕, 清水 利浩, 小林 邦夫, 永松 宏一
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_221-I_226
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     外洋に面した海岸護岸では,直立壁の前面に消波ブロックを被覆する方式が広く採用されている.これら護岸の多くは,近年の波浪増大に対応するため越波対策が課題となっている.一方で,護岸の前面で海岸侵食が生じている海域もあり,海底地形に影響を及ぼさない構造形式が求められている.本研究では,両課題を抱える福井港海岸の消波ブロック被覆式護岸を対象にして,要求性能を満足する改良形式を水理模型実験により検討した.そして,護岸背後への越波流量の低減効果,護岸前面への反射波の抑制効果ならびに消波ブロックの安定性を定量比較することで,改良形式の水理特性を把握した.
  • 久保田 謙作, 高橋 祐, 高橋 隆男, 南雲 一也, 伊藤 正喜
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_227-I_232
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     消波ブロックの安定性については,海岸構造物を保全するうえで最も重要な要素のひとつであり,これまで水理模型実験など多くの研究が行われ,それにより求められた安定数算定式は設計手法として一般的に用いられるようになっている.一方,厳しい海象による海岸構造物の被災は留まることはなく,特に,最近の異常気象による被災は大きく,現地に応じた波浪対策設計が求められている.本研究では,被災した消波ブロックの詳細な現地調査を行い,既往の安定数算定式から算出された数値との比較評価により適用性を確認するとともに,近傍のナウファスデータを換算して波浪データに用いる手法を示している.これらについては,当海岸と同様な急勾配で岩礁を有する礫海岸での設計検討において大いに参考となるものと考えられる.
  • 大東 秀光, 大江 一也
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_233-I_238
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     被覆材としてハドソン式を満足する重量の異形ブロックを有する防波堤マウンドにおいて,法先に設置された被覆ブロックのみが被災した事例がある.本研究では,断面水理模型実験および数値計算を実施し,被覆ブロックが被災に至るメカニズムについて詳細に検討した.水理模型実験により,ブロック直上の流れの沖向きの加速度と被災率が高い相関を持つことを確認した.また,数値計算により,ブロック周辺の流れが岸向きから沖向きに変化する際に被覆ブロックに揚力が作用し,ブロック重量が大きいほど大きな揚力が作用することを確認した.
  • 木村 晃, 大田 隆夫
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_239-I_244
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     2007年から採用された設計指針では,性能に影響を及ぼさない範囲で構造物の破損が許容されている.この指針を構造物の設置計画に反映させるためには,構造物の供用期間中にどのような外力が作用するか,それにより構造物は“どのように”,“どの程度”影響を受けるかという点について,計画の段階で推定ができている事が重要である.この研究では混成堤の破損(滑動)に問題を限定して,供用期間中の総滑動量を,波候データを用いてこれらを推定する方法を提案する.研究では具体的な供用期間と許容される滑動量を設定して,堤体の設計条件と性能が維持される確率との関係を示す.
  • 團村 肇, 宮田 正史, 野津 厚, 若井 淳, 浅井 茂樹
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_245-I_250
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     岸壁の耐震性能照査において変形量を評価する場合,2次元地震応答解析が標準的なツールとして利用されるが,計算負荷が大きいという問題がある.このため,例えば,既存岸壁の地震時被災程度を概略推定する場合等において,簡易に岸壁の残留変形量を評価できる手法が望まれている.
     本研究では,重力式岸壁及び矢板式岸壁を対象として,地盤条件や水深・照査用震度等の設計諸元が異なる5,600ケースの2次元地震応答解析を行い,2次元地震応答解析により得られた岸壁変形量を別途実施した1次元地震応答解析の結果等から算定する提案式を重回帰分析に基づき構築した.更に,実設計における2次元地震応答解析を用いた変形量照査結果及び過去の被災事例を用いて提案式の適用性を確認した.
  • 古谷 宏一, 横田 弘, 橋本 勝文, 加藤 絵万, 小松 周平
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_251-I_256
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     本論文では,まず国内の複数の海岸保全施設を構成する無筋コンクリート胸壁の劣化に関する詳細な現地調査を実施した.胸壁に発生していた鉛直ひび割れに着目し,各スパンにおけるひび割れ本数およびひび割れ幅等の調査データを蓄積した.さらに,調査データを確率統計手法に基づき分析し,胸壁のひび割れ性状を定量的に評価した.最後に,極値統計手法をひび割れの調査データに適用し,ひび割れの少数サンプリング結果から施設全体における最大ひび割れ幅を高い精度で推定する手法を提案した.
  • 中村 孝幸, 鍵本 慎太郎, HUSAIN Firman
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_257-I_262
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     前面カーテン壁と背後重量物とで構成される単一遊水室型防波堤の特性を,主に従来のブロック被覆型ケーソン防波堤との比較により明らかにする.この際,反射波の低減効果および越波に伴う透過率に着目した.その結果,暴浪時に対応する中周期から長周期の条件下では,単一遊水室型防波堤の方がブロック被覆型ケーソン防波堤に比較して反射率が低くなるなど波浪制御効果に優れていることが判明した.ただし,単一遊水室構造の場合,遊水室が空洞であることから防波堤の耐波安定性が懸念され,遊水室内に消波ブロックを投入する工法の有効性などについても実験的に検討した.また,理論算定のみに限定されるが,単一遊水室型防波堤の各構成部材に作用する波力や全体波力の特性についても検討を行った.
  • 渡辺 国広, 野口 賢二, 諏訪 義雄, 関口 陽高, 嶋田 宏, 江島 敬三, 石河 雅典, 永澤 豪
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_263-I_268
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     サンドパックが地形変化に追従して変形した時および波浪を受けて揺動した時にサンドパック袋材に働く張力の特徴を明らかにするため,実物大実験および1/10スケールの縮小模型実験を実施した.完成時に計測された長手方向の相対的な歪みは理論値よりも高く,この違いは理論的な算定方法に袋材の伸縮が考慮されていないことに起因すると考えられた.サンドパックを変位させた時には,長手方向の歪みが増大することが確認されたものの,側方変位では変位の増加に比べて歪みの増加は停滞していた.縮小模型実験では波浪作用によって目に見えるサンドパックの変形は起こらなかったものの,波浪作用に対応した張力変動が計測された.これらの結果にもとづいてサンドパックに用いる袋材の張力を設定する際に望ましい安全率の考え方について考察した.
  • 古牧 大樹, 島谷 学, 下園 武範, 岡安 章夫
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_269-I_274
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     港湾内や海浜に流れ着いた流れ藻は自治体が回収・処分しており,対策が望まれている.流れ藻を捕捉する技術は開発されつつあるが,現状の捕捉設備では流れ藻が堆積した後に流れ藻を回収しなければならないなど改善の余地がみられる.本研究は,沈降型流れ藻を捕捉させる機能に加えて,効果的に排出する機能を併せ持つ構造物の開発を目的とし,水理模型実験にてその効果を検証した.
     断面実験を行い,海藻流入防止について本構造物が効果があることを確認し,更に平面実験を行い,実海域の適用性についての可能性が示された.
  • 浅川 典敬, 中村 隆, 加藤 広之, 早川 光, 佐藤 勝弘, 見上 敏文, 小玉 篤, 鈴木 彰
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_275-I_280
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による津波は,東北地方の沿岸域に甚大な被害をもたらし,堤防,護岸,胸壁等の海岸保全施設も多くの被災が生じた.今回の漁港海岸施設の被災では,これまでの設計条件を超える外力が作用したものと想定されたことから,被災状況の調査とその外力の解析,さらに復旧事業を実施するにあたっての設計条件の見直し等の考え方を検討・整理した.本報では,水産庁「平成23年度海岸保全施設設計条件等緊急調査」の結果より,漁港海岸施設の被災状況,被災パターンについて整理し,胸壁は堤防,護岸に比べ被災時に全壊割合が高い,押し波と引き波による被災割合は,堤防では同程度,護岸では引き波,胸壁では押し波による割合が高い,津波越流深が大きくなるに伴い被災率が一度減少し,再び高くなる等の知見を得た.
  • 佐伯 公康, 佐藤 秀政, 西本 敦範, 藤井 照久, 梅津 健夫, 浅川 典敬, 三上 信雄
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_281-I_286
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震・津波で漁港の多くの岸壁が被災した.今後の防災対策の推進のためには被災メカニズムの定量的な把握が必要であるが,被災後の観測から地震と津波のおのおのがもたらした変形量を把握することは不可能であった.そこで14施設を対象に二次元有効応力解析を実施し,地震による変形量を把握した.その際,各施設に来襲した地震波形はサイト特性置換法によって事後推定した.観測値と解析結果から,はらみだし量における地震動と津波それぞれの寄与度を算出した.地震動については液状化の寄与度も算出した.その結果,多くの施設で地震動の寄与が大きかった.またサイト増幅特性とはらみだし量の間に関連性が見られた.地震による変形は,その後の津波による変形を助長したと考えられる.
  • 中村 友昭, 中島 彩, 水谷 法美
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_287-I_292
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     津波避難ビル等の構造物とその海側に別の構造物が立地する状況に津波を作用させた3次元数値解析を行い,沿岸構造物の配置が陸側構造物に作用する津波力に与える影響を考究した.その結果,陸側構造物に作用する最大波圧の鉛直分布は静水圧に近い勾配を有するが,陸側構造物がない場合に対する浸水深の増幅率は沿岸構造物の配置の影響を強く受けることから,既往の算定式を上回る場合があることを確認し,沿岸構造物を考慮した解析を行い波圧を算定することの重要性を示した.また,陸側構造物に作用する津波力を効果的に低減できる沿岸構造物の配置が存在することを確認し,沿岸と陸側の構造物の距離が異なることによる津波力の変化は,沿岸構造物の間隔が等しい条件では,陸側構造物がない状態における運動量の変化量で概ね把握できることを示した.
  • 松本 和記, 泉宮 尊司, 石橋 邦彦
    2013 年 69 巻 2 号 p. I_293-I_298
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/13
    ジャーナル フリー
     本研究では,陸上に遡上した津波による陸上パイプラインに作用する津波波力に関する水理模型実験を行った.護岸からの距離に関する最大波力の鉛直分布の特性,および周囲の構造物が存在することによる最大波力の変化について明らかにしている.津波の波面が接地する位置直後において,波力が最大となり,クリアランスが小さくなるほど波力が大きくなる傾向を示していた.CADMAS-SURFを用いて作用波力を推定することにより,実測値との比較を行った.射流域では抗力係数CDを0.7にすることによって,比較的精度良く作用波力を推定できることが示された.
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