抄録
津波の解析には現地観測データが不可欠である.東北地方太平洋沖地震による津波は観測機器の多くを被災させた一方,津波を捉えた貴重な動画が残されている.動画を用いた津波挙動の把握はいくつかの例があるが,大部分は陸上遡上を対象としており、海面上や沿岸部の流速を求める研究は少ない.本研究では大船渡湾に来襲する津波を撮影した動画を用い,津波の流速を求めることを試みた.動画に測線を設定して輝度値に変換した時系列画像から津波の挙動を数値の変化としてとらえ,現地調査により俯角による実距離の歪み補正を行い,押し波時,引き波時の流速値を算定した.その結果,押し波引き波時の流速は共に約6m/sであることが推定された.