抄録
本研究では,博多湾における季節の違いによるアサリ浮遊幼生の挙動を,数値シミュレーションを用いて解析した.その結果,(1)各産卵場から産まれた浮遊幼生は,産卵場周辺の流れや出水に伴う海水表層の流れの変化により,博多湾内を移送される経路及び分布の特徴が異なる.また,出水期には非出水期と比べ多くの浮遊幼生が湾外へ流出し,各生息場へ供給される幼生の数は減少する.(2)出水が少ない春季や秋季に産まれた幼生の着定や着底後の成長・生残の状況により,アサリ資源量が変動する可能性がある.(3)アサリ資源の形成・維持のためには,春季・秋季産まれの稚貝の成長・生残を高める生息場の保全が重要である.博多湾央海域のアサリ生息場を保全し,資源量を増加させることにより,西側海域への幼生の供給量が増え,アサリ資源の形成に繋がることができると推察された.