抄録
わが国有数の渡り鳥の飛来地であるオホーツク海沿岸のコムケ湖において,干潟域での塩分や水位,浸透流の連続観測,および溶存有機物の分析を行い,春期と夏~秋期における干潟での水質変化と干潟地下水の挙動の関係性について明らかにした.第1湖の干潟ではバーの沖側で夏~秋期に比べて春期に陸域土壌由来のフルボ酸様物質の蛍光強度が大きく,季節的に河川水や地下水が干潟水質に及ぼす影響が変化している.また,第1湖の干潟では夏~秋期に比べて春期では1桁大きい速度で干潟地下水が湧出していることが分かった.一方,第2湖の干潟では通年で第1湖の干潟に比べて干潟地下水の浸透流速が小さい.さらに,春期と夏~秋期の湖水と干潟堆積物中の塩分プロファイルの結果より,地下水の湧出が塩分上昇を妨げている可能性が示唆された.