抄録
2013年11月にフィリピン中部を襲った台風Yolanda (Haiyan)は,高潮と強風により甚大な被害をもたらした.本稿では,この災害においてフィリピン政府がとった災害対応,住民に対する災害情報の伝達,住民の行動実態のうち,特に高潮災害について,既存資料,レイテ島とサマル島を中心に実施したアンケート調査・インタビュー等を通じて分析した.結論として,1)政府は,政府内の手続きに従い,災害情報の発信,警報発令,避難勧告を行っていたこと,2)政府チャネルを通じた情報提供が必ずしも十分ではなく,この点に課題があること,3)住民側には,高潮やその危険度の理解,避難に関する知識・意識に課題があること,4)災害現象を現実的な感覚を伴って伝えておく必要があることがわかった.