抄録
2013年11月にフィリピン中部を襲った台風Yolanda (Haiyan)は高潮と強風により沿岸域に甚大な被害をもたらした.本稿では,被害の大きかったレイテ島とサマル島を中心に,災害発生から約1か月後に実施した現地調査の結果を示し,今回の災害の規模と被災状況を明らかにするとともに,近年生じた他の地域における高潮災害と比較することで,今回の災害の特徴を分析した.高潮高さはレイテ湾の最奥部沿岸の広範な地域で5mを超えており,高潮高さが概ね3mを超えている地点で家屋の流失等の大きな被害が生じていた.今回の災害は,強風による被害と強風に伴う急速な変動をもつ高潮が海岸線から数百mの局所的な範囲に被害をもたらした点が特徴であった.