抄録
本研究では,津波に対する避難誘導や水門・陸閘閉鎖などの防災活動,被災後の迅速な救助や復旧活動の支援を目的として,地震発生後に沖合で観測された津波データを使用して,即時的に浸水域を推定するリアルタイム津波ハザードマップシステムを開発した.プロトタイプを名古屋港をモデルとして作成し,その検証を内閣府による南海トラフ巨大地震を対象にした数値実験により実施した.その結果,南海トラフ沿いの8基のGPS波浪計によって地震発生後から6分間観測された津波データを使って津波波源を推定し,それに基づいた伝播・浸水計算から名古屋港における津波波形や最大浸水域を精度よく推定できることを明らかにした.画像処理ユニット(GPU)を活用することにより,波源推定から浸水域の推定までに要する時間は約80秒であった.