抄録
人工干潟のモニタリング手法の最適化のために,底生生物調査地点の設定方法について検討を行った.人工干潟で造成した場の環境が複雑であれば,形成される生態系は多様となる.このため,調査地点の設定は,単に干潟の広さでなく,形成された生物生息環境の多様性に基づいて行う必要がある.過去の自然干潟における調査結果から,有明海・八代海の砂泥底の干潟に生息するマクロベントスでは,地盤高0.5m毎,含泥率20%毎に干潟を区分して調査地点を設定することで,干潟全体を調査した場合の8割以上の種が確認可能であることを示した.また,この調査地点の設定方法は今回調査を実施した人工干潟においても有効であった.ただし,人工干潟では,造成後に地盤が安定するまでの間,短期的に地盤高や底質の粒度が変化する可能性が高いため,環境の変化に合わせて柔軟に調査地点の見直しを行う必要がある.