抄録
輪送船舶の大型化は近年の国際的な動向である一方で,既存施設の戦略的な維持管理や有効活用が求められており,船舶の大型化に対しても既存の係船岸を増深する工法を検討する事例が増えている.しかし,重力式係船岸の安定を確保しつつ増深するには,前面海域に新規桟橋を構築するなど構造形式を変更して増深する工法を採用することが多く,また前面海域に余裕がない場合,法線を変更できないため,工法の適用自体が難しい.そこで著者らは,既設重力式係船岸の捨石マウンドの一部を改良・固化してからマウンドを掘り下げ,法線位置を変更せずに数メートル増深する工法の研究を行った.設計手法の検討および施工可能性の検証を進め,大型土槽において実物に近い捨石へ注入実験を行い,実用化に向けた研究成果が得られたので報告する.