抄録
三河湾東奥部の天然アマモ場において,約3年間,冬季衰退から夏季繁茂に至る過程を観察するとともに,形成阻害要因と考えられる波浪と水中光量子密度を適時観測し,指標となるシールズ数および飽和光量子量以上照射日数を求めた.初年度は冬季に残存した栄養株が繁茂に寄与していた.翌冬季には栄養株は完全に消失したが,実生株による再生産が図られ,一部は冬季まで残存した.最大シールズ数は0.23とアマモ場形成の適値を上回っており,また夏季に必要飽和光量子密度照射時間が確保された日数の割合は50%未満とアマモ場形成に厳しい環境であった.当該海域のアマモ場再生には安定化基質を用いた播種が有効であるが,底質安定のための波浪減衰,光量確保のための海水交換,種子散逸防止のための循環流発生機構が必要と推察された.