土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
ISSN-L : 2185-4688
71 巻, 2 号
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海洋開発論文集 Vol.31(特集)
  • 安田 公昭, 本巣 芽美, 深田 亮平, 永井 紀彦
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1-I_6
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     本稿では,洋上ウィンドファーム事業を推進するため必要となる合意形成と行政手続きについて,岩船沖洋上風力発電事業を事例として,現状の課題を示し,課題解決のための提言を行った.当該事業と漁業との共生の将来像を明らかすることをめざして,合意形成のための研究会や市民および漁業者との話し合いの中で,事業者による売電収益の地元還元の具体的な方法を検討し,スキームをとりまとめた.予定海域に港湾法を活用する可能性を視野に入れ,事業者の選出までを村上市で責任を持って実施する体制を考案した.すなわち,村上市に推進委員会を設置することを条例で定め,同委員会のなかに評価委員会をおいた.評価委員会は,FSの手順書を作成し,その手順書に従って村上市は事業者を公募した.
  • 白石 悟, 福原 朗子, 米山 治男, 永井 紀彦
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_7-I_12
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     世界的にみても風力発電をはじめとする再生可能エネルギーの導入が進んでいるが,日本においては再生エネルギー特別措置法の施行後も多くの地域において導入が進んでいない状況にある.本論文では港湾空間における風力発電の円滑な導入のため現在取られている施策及び海外の先進事例を参考に今後の課題を述べた.また,港湾における電力の利用状況を分析した上で,再生可能エネルギーの利用拡大の一つの方策としての自己利用への展望を述べた.
  • 赤星 貞夫, 岡本 博, 永井 紀彦
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_13-I_18
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     日本は世界第6位の広さの排他的経済水域を有しており,この広い海域の風力エネルギー活用が期待されている.一方,IEC(国際電気標準化会議)においては,風車の品質・安全保持と輸出入の円滑化等の観点から,様々な国際規格の整備を精力的に行ってきている.また,2010年には風車が前述の規格群に適合して設計,製造されていることや,風車及びその支持構造物が設置場所の気象や地盤条件に適合しているかどうかを第三者が認証するスキームを規格化した.既に,風力発電の先進地域である欧州においては,これらの認証制度が活用されている.日本周辺海域は,地震に伴う津波や台風,うねり,冬季雷など,固有の厳しい環境条件が存在する.IEC国際規格及び認証制度を活用して風車の安全と安定操業を確保することが,洋上風力普及の鍵となると考えられる.本稿では,洋上風力発電の認証制度の活用を検討した.
  • 山田 浩章, 松下 泰弘, 井岡 良太, 平野 辰昇, 川口 浩二, 猪股 勉
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_19-I_24
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     GPS海洋ブイは,現在,国土交通省港湾局のナウファスの「GPS波浪計」として日本全国に18基設置され,沖合の大水深海域で波浪の定常観測を実施している.GPS海洋ブイは津波観測も可能であり,東日本大震災による大津波発生時には,岩手県釜石沖などに設置されていたGPS波浪計が津波を観測し,気象庁の津波警報の更新に利用されたが,津波をより早期に観測するには更に沖合にGPS海洋ブイを設置する必要がある.しかし,従来のGPS海洋ブイではGPS測位法と無線通信によるデータ伝送の制限から設置可能距離は沖合20km程度までであった.本稿では,更なる沖合観測のために開発した新型GPS海洋ブイの概要と実海域での実証実験の状況について報告する.
  • 横田 雅紀, 一色 勇志, 橋本 典明, 児玉 充由
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_25-I_30
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     本研究では確率台風モデルの入力条件に資することを目的とし,MRI-AGCM3.2Sの気候予測値(海面更正気圧,6時間毎)から抽出した台風を現在と将来で比較することで台風の強度や経路について平均的な出現特性の変化を検討した.緯度毎に通過する台風を整理し,通過経度の平均値および,台風の中心深度を考慮した加重平均経度を求めたところ,北緯29~31度の範囲のみ最大2度程度の東への移動傾向がみられるものの,その他の緯度では大きな差が発生せず,台風経路を単純に東へ平行移動させるような将来変化を仮定するのは難しいことが示唆される結果であった.将来予測の条件として海域毎の平均中心気圧の変化および台風の年平均発生数の減少を考慮すれば良い可能性がある.
  • 中村 亮太, 岩本 匠夢, 柴山 知也, 三上 貴仁, 松葉 俊哉, Martin MAELL , 舘小路 晃史, 田野倉 祐介
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_31-I_36
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     2014年12月中旬に発生した温帯低気圧は急速に発達し,根室に高潮被害をもたらした.本研究では,根室に生じた高潮の現地調査の結果を整理し,数値モデルを用いて高潮の再現を試みた.現地調査の結果,根室市街地の浸水高は最大で2.20 mであった.一方,根室港では最大の2.82 mを記録した.現地調査の結果,地盤高が海岸線から市街地に向けて徐々に低下していた.この地形的特性が根室市弥生町市街地に高潮被害をもたらした原因の一つである.数値計算の結果,根室湾で水位が上昇・下降する現象が見られた.具体的には,まず東風が吹き,根室湾の水位が上昇する.次に,風向きが北風に変化して,根室湾に溜まった水塊が根室半島に吹き寄せられ,根室港での高潮偏差が増加するという結果を得た.根室市街地の地形的特性,風向きの変化と根室湾と根室半島の相対的位置関係などの条件が高潮被害をもたらした.
海洋開発論文集 Vol.31
  • 中村 隆志, 平山 克也
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_37-I_42
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     護岸等の耐波設計への適用が進むCADMAS-SURFによる波力や越波の推定において,計算コストを低減しつつ平面的な波浪変形の影響を考慮するために,波動モデルとの接続計算が検討されている.しかし,接続境界で必要となる水平流速の鉛直分布の推定に用いられるFFT法は,片方向接続への適用に限定されるほか,近似する波形の非線形化に伴い成分波数が飛躍的に増加し,この抑制には比較的沖合での接続を余儀なくされる.そこで本研究では,不規則波形上の各時刻の水位と代表流速に対して非線形波の理論式を当てはめる「単一成分波近似法」を新たに開発し,この精度検証を通じて,NOWT-PARIとCADMAS-SURFとのリアルタイム接続計算がFFT法に比べ安定かつ効率的に実施されることを確認した.
  • 山田 貴裕, 柴木 秀之, 濵口 信彦, 與那嶺 和史, 島袋 和男
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_43-I_48
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     航跡波が発生する石垣港内において波浪,目視観測による現地調査を実施した.波浪観測は,波高計の設置・撤去を含む3日間の連続観測を実施し,目視観測は,中日1日に実施した.観測データの解析結果に基づいた本研究の成果は以下の通りである.(1)石垣港内で発生する航跡波は,波高増幅に大きく寄与していた.(2)航跡波の波浪諸元として,最大波高、有義波高,有義波周期,波向を定量的に把握できた.(3)航跡波に対する消波ブロックの反射率は,一般的な反射率よりも小さい値となった.
     従って,本研究成果は,外洋波である外的要因に対して静穏性が確保されている港湾も,航跡波による内的要因によって静穏度が低下している可能性があるとともに,港湾の指標の一つである静穏性を評価する上で,貴重な基礎資料となった.
  • 長谷川 巌, 及川 隆, 仲井 圭二, 福田 孝晴
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_49-I_54
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     長周期波による荷役稼働率低下を解消するために,港内で長周期波の反射波を抑制する工法の一つとして,マウンド構造物を設置する対策がとられる.マウンド構造物を防波堤の港内側に設置する場合には,マウンド構造物の被覆材が越波伝達波に対して安定でなければならない.そこで,上部斜面構造防波堤の港内側に設置するマウンド構造物の被覆材の安定性を二次元水理模型実験で検討した.また,防波堤の港内側に設置するマウンド構造物が,港外側から港内側への伝達率に与える影響についても検討した.上部斜面構造防波堤の港内側に設置するマウンド構造物の被覆材は,矩形構造防波堤背後より安定性が厳しい.防波堤の港内側にマウンド構造物を設置すると,越波伝達波がマウンド構造物に作用することによりエネルギーが減殺され,伝達率が小さくなる.
  • 村上 啓介, 真木 大介, 陶山 亮哉, 柿木 浩成, 竹鼻 直人
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_55-I_60
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     護岸の補修・改良事業において一部区間をフレア型護岸に置き換える場合がある.施工箇所によっては改修区間のフレア型護岸法線が未改修区間の直立護岸法線と隅角部を形成し,隅角部での越波量の増大が懸念される.護岸隅角部での越波量の増大が懸念される場合には,一般的には必要個所を消波ブロック等で被覆する対策がとられるが,フレア型護岸前面を消波ブロック等で被覆すると円弧断面部での波返し運動が阻害され,護岸本来の越波低減機能の低下が懸念される.本研究では消波ブロック被覆工を用いないフレア型護岸隅角部の越波処理対策を検討することを目的に,天端張出工を設けたフレア型護岸断面を提案し,その越波低減機能を水理模型実験により評価した.また,越波低減機能の強化を目的に天端張出工に隔壁工を併用した対策工の効果を評価した.
  • 中島 謙二郎, 宮崎 啓司, 浅見 尚史, 笹井 剛, 峯村 浩治, 安田 将人, 塚原 健一, 小島 治幸
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_61-I_66
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     国土交通省九州地方整備局は,2008年度より,下関港海岸保全施設整備事業(高潮対策)事業に着手し「長府・壇ノ浦地区」「山陽地区」の2地区,延長約18kmについて整備を進めている.「山陽地区」は,地盤が高潮より低い地勢であり,高波に対する防護の他,高潮の河川からの遡上・浸水に対する防護のため,海岸護岸の他,水門・樋門,陸閘,排水機場等の整備と確実な運用が必要であるため,下関港海岸保全施設の整備計画の策定においては,施設の維持管理の運用と経済性が課題となった.
     このため,海岸保全施設(護岸,胸壁・陸閘,水門・樋門,排水機場等)の概略設計と事業費算定(工事費及び維持管理更新費)とさらに内水解析・現地観測を実施し,防護ラインの比較検討を行い,LCC(ライフサイクルコスト)と内水対策を考慮した「下関港海岸整備計画」を策定したものである.
  • 鷲見 浩一, 岡野谷 知樹, 武村 武, 中村 倫明, 落合 実
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_67-I_72
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     本研究では,不規則波の作用時に人工リーフ堤体を構成する砕石の相違が,透過率や堤体の断面変化などに与える影響を検討する実験,ならびに人工リーフ周辺での流速分布を考究する数値計算を実施した.混合砕石で築造された堤体の透過率は,単一砕石で構成された堤体の透過率よりも小さくなった.また,堤体が混合砕石で構成された透過波のスペクトル分布は,単一砕石のスペクトル分布よりも比較的広い周波数帯で小さくなった.流速分布に起因する堤体の断面変化は,法肩周辺の砕石が侵食されて天端後方域に堆積する形態となったが,単一砕石と混合砕石において砕石が堆積する分布形状に有意な相違は確認できなかった.これらから,堤体の形状がほぼ同様な場合,透過波高の低減にはマウンドの構成材の相違が支配的であることが明らかとなった.
  • 稲垣 聡, 坂田 健一郎, 佐藤 広和, 遠藤 勉, 畠田 大規
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_73-I_78
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     砂地盤上の海上構造物の周辺では,波浪などの流れにより洗掘が発生する恐れがある.構造物が円筒形など単純な形状の場合は洗掘範囲の評価式が知られる.しかし,海底に設置された放水口など,構造物が複雑な形状で周辺構造物(防波堤など)の影響も受ける場合は評価式が存在せず,洗掘対策立案時に課題となる.本研究では,海底放水口周辺の波浪による流速を数値波動水槽CADMAS-SURF/3Dの解析により評価し,洗掘防止工の設置範囲と必要重量を設計する方法を検討した.海底放水口周辺流速を解析で評価し,2次元計算と3次元計算の適切な接続により全体の計算量を低減しつつ発生最大流速の評価を行うことができた.また,解析の流速分布から洗掘防止工の範囲を定め,イスバッシュ式を用いて被覆ブロック必要重量を算出する方法を提案した.
  • 林 建二郎, 多田 毅, 大井 邦昭
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_79-I_84
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     洪水流やダム・堤防の決壊流れ、および津波・高潮の来襲による非定常な遡上流れ等による構造物や樹木等に作用する流体力特性の把握は、これら柱状物体が有する耐流特性や抵抗則の評価において重要である.一様流速分布を有する定常流中の静止物体に作用する流体力特性の把握に比べて,自由表面や底面境界を有する開水路流れに置かれた3次元物体である柱状体に作用する流体力特性の把握は不十分である.本研究は,開水路中に非水没状態で鉛直設置した柱状体(円柱と直方体)に作用する遡上流れの抗力計測を、常流と射流域で行ったものである.フルード数Frの増加に伴い,柱状体の後流域には空洞部が増加し,柱体背面での圧力低下が小さくなる結果,抗力係数Cdは,フルード数Fr > 1の射流域ではFrの増加に伴い減少することを明らかにした.
  • 太田 隆夫, 河村 裕之, 松見 吉晴, 藤井 優, 大野 賢一
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_85-I_90
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     本研究は,数値波動水路CADMAS-SURFにおける透水層の抵抗力算定法とそれに含まれる係数の設定について検討したものである.CADMAS-SURFでは,抵抗力の算定に抗力係数を用いるモデルとDupuit-Forchheimer則によるモデルの2つが使用可能であり,捨石や消波ブロックで構成される護岸を対象に,波の反射率と越波量を評価指標として,これらのモデルによる計算と水理模型実験の結果を比較した.係数の値については,これまでの研究で提案されているいくつかの組み合わせを用いた.Dupuit-Forchheimer則と,石および消波ブロックに対して近藤1)が提案した係数値を用いたケースで,全体的に実験結果とよく対応することが示された.
  • 猿渡 亜由未, 大野 紘史
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_91-I_96
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     波力発電装置を実海域に設置する場合,発電装置と波浪との相互作用により設置サイト周辺における波浪場が変化するため,周辺の生物環境や地形への影響を予測,評価する必要がある.本研究では発電サイト周辺波浪場への影響を正しく評価する為に,波浪推算モデルに適用可能な発電装置周辺の不規則波浪の変形モデルを構築することを最終目的とし,ここではその基礎研究として単純化された波力発電装置モデルに入射する不規則波の変形の特徴を調べる為の水理実験を行った.浮体式振動水柱型発電装置を本研究での想定発電装置とした.装置によるエネルギー吸収が最大となる波の周波数と入射波のピーク周波数との関係により透過波と反射波のスペクトルの形状が決定される事が明らかになった.
  • 大西 健二, 鈴木 靖, 三嶋 宣明, 林 健次, 経塚 雄策
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_97-I_102
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     長崎県五島市沖を対象とし,潮流発電プロジェクトにおける発電施設の設計を目的とした現地波浪条件の詳細推定を行った.長期間の波浪条件推定を簡便に行うために波浪推算データベースと波浪変形計算モデルSWANを組み合わせた方法を用いた.さらに近隣の波浪観測値を用いて精度検証と推定値の補正を行い,推定精度の確保を図った.
  • 木原 一禎, 増田 光一, 下迫 健一郎, 大澤 弘敬, 居駒 知樹, 金谷 泰邦, 永田 修一, 細川 恭史
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_103-I_108
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     これまで,30年以上の研究実績がある振動水柱型空気タービン方式(Oscillating Water Column:以下OWC)に着目し,従来に比べて高効率な発電装置の開発を行っている.研究コンセプトは, 発電装置を既設の防波堤や護岸に後付けで据えることで建造費用を抑える事ができる安価なシステムである.OWC発電装置は,水面変動を往復気流に変換し,空気流で発電タービンを回転させる.発電部が水上にあるため,維持管理が容易であり,既存の防波堤,護岸などを利用して後付けでユニットを設置することで,建造費を抑えることができる.既存施設を利用するため,沖合に独立して係留する場合と異なる課題を検討した.本稿では,酒田港で実証実験を行っている消波ケーソン(有孔ケーソン)に設置した事例について紹介する.
  • 國里 立紀, 加古 真一郎, 山城 徹, 中川 智文, 山本 峻太郎, 城本 一義
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_109-I_114
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     潮流発電に関連して現地観測と数値計算を行い,鹿児島県奄美大島周辺海域における潮流パワー賦存量を算定した.その結果,大島海峡には潮流パワーが最大約1.5 kW/m2,与路島水道には最大約1.7 kW/m2の海域が存在することを明らかにした.さらに,大島海峡に潮流発電装置を20基設置した場合の数値実験を行うことによって,1日あたりの抽出可能な最大エネルギー量は約19 MWであることと,設置した周辺海域の潮流振幅を最大で約20%程減少させることが示唆された.
  • 小牧 裕幸, 加賀 惇也, 山城 徹, 加古 真一郎, 城本 一義
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_115-I_119
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     気象庁で開発されたMOVE/MRI.COMの計算結果を用いて,日本近海における黒潮のエネルギーポテンシャルの変動特性を調べた.その結果,台湾西方沖と奄美大島西方沖,四国南方沖,紀伊半島南方沖,房総半島南方沖でポテンシャルの値が大きいことがわかった.ポテンシャル変動のおよそ 0~20%が経年変動,5~10%は季節変動によっている.また大蛇行期には紀伊半島沖と房総半島沖でポテンシャルが増加していた.さらにMAPEからポテンシャルの平均値を算出するために必要な期間の長さを明らかにした.
  • 津田 宗男, 倉原 義之介, 山口 創一, 経塚 雄策, 清瀬 弘晃, 長瀬 浩, 高島 尚吾, 栗原 明夫
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_120-I_125
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     潮流発電は,不確定な天候の影響を受けず発電量が予測可能で,エネルギー密度が高い高効率な再生可能エネルギーである.また,騒音などの環境問題も少なく,その発展が期待されている.昨年,五島周辺海域は,総合海洋政策本部によって潮流発電の実証実験フィールドに選定された.この海域において,環境省の委託業務で国内初の定格出力1MW級の潮流発電実証事業の計画が進められている.
     本論文では,現地調査や数値シミュレーションによって得られた実証フィールド内の地形や潮流特性,潮流の流速分布や潮流エネルギーの賦存量を検討した.その結果,五島海域では,実証事業で計画されている1MWの発電装置で,1基当たり奈留瀬戸では年間300万kWh,田ノ浦瀬戸では年間240万kWhを発電できる可能性が示された.
  • 宇都宮 智昭, 吉田 茂雄, 佐藤 郁, 飛永 育男
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_126-I_131
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     環境省浮体式洋上風力発電実証事業において,2MW風車を搭載したスパー型洋上風力発電施設が五島市椛島沖に設置され,2013年10月より洋上試験を実施中である.当該施設の構造設計にあたっては,暴風時・発電時それぞれに対して,動的シミュレーションに基づく時刻歴応答解析結果から設計荷重を算出している.本稿では,設計自然環境条件の設定方法,構造設計で用いた設計荷重ケース,荷重解析手法,構造解析手法,疲労解析,係留解析,等,本施設の構造設計の概要について紹介する.
  • 大澤 輝夫, 嶋崎 翔太, 市川 弘人, 嶋田 進, 竹山 優子, 小垣 哲也, 川口 浩二, 中村 聡志
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_132-I_136
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     ブイによる表層気象観測とメソ気象モデルによる数値シミュレーションから得られる鉛直プロファイルを使って風車ハブ高度の風況を推定する新しい洋上風況推定手法を開発する一環として,本研究では港湾空港技術研究所波崎海洋研究施設の桟橋上で表層気象観測及びドップラーライダー観測を同時に行うことにより上記手法の検証に必要なデータを取得し,その有用性の検証を行った.その結果,海風時には外洋と同程度の推定精度が確認された一方で,陸風時には1次元モデルでは不十分で,大気安定度の影響を含めて水平移流を考慮できるWRFによる3次元シミュレーションが必要であることが明らかになった.
  • 中尾 知博, 大澤 輝夫, 香西 克俊, 中村 聡志
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_137-I_142
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     本研究では波崎及び白浜において,WRFによる海上風シミュレーションを行うに際して,それぞれ冬季(2月)と夏季(8月)の2ヶ月を対象に四次元データ同化の適用範囲を変化させることで,海上風推定精度に及ぼす影響を評価し,最適な同化の掛け方を検討した.その結果,第1領域を全層同化し,第2領域は上層(大気境界層上端以上)のみ同化を行うというケースが最も精度が高いと結論付けた.
  • 吉岡 健, 坂本 登, 青木 功, 川口 浩二, 永井 紀彦, 仲井 圭二
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_143-I_148
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     本稿は,北九州市沖海域で進められている洋上風力発電実証研究の成果の一端を紹介するものであり,洋上風力発電設備支持物の合理的な設計に資するための海象特性の影響を明らかにすることを目的とする.まず,発電時の疲労限界状態設計に重要となる洋上風の変動特性に及ぼす海象の影響として,波浪による機械的な影響や,海面との熱的な影響を受けることを示す.続いて,逆一次信頼性理論に基づき,暴風波浪時の終局限界状態設計に重要となる風作用と波作用の合理的な組合せ方法の考え方を示す.
  • 中嶋 周作, 稲葉 真一, 島谷 学, 力石 大彦, 坂本 登
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_149-I_154
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     北九州市沖において,2009年度から2016年度にかけて国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの受託研究ならびに共同研究として「洋上風況観測システム実証研究(北九州市沖)」,「洋上風力発電システム実証研究(北九州市沖)」をそれぞれ実施している.洋上風力のアクセスには,波の影響を受けることが陸上風力との大きな差異であり,陸上風力に比してアクセス性が劣る要因となっている.このため,波浪を指標としてアクセス可能な日時を正確に予測することは,保守点検業務を効率的かつ安全に実施するために不可欠である.本稿では,確実なアクセス性の確保を目的として活用している波浪予測システムの概要および予測精度,ならびにアクセス実態について紹介し,当該システムの妥当性評価について述べる.
  • 長尾 毅, 小松 歩実, 小田 隼也
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_155-I_160
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     桟橋は背後の土留めからの荷重伝達が行われない構造とすることが一般的である.これは桟橋上部工と背後地盤を独立にすることで,桟橋上部工に背後地盤の土圧が伝達されなくなるため,耐震性能上有利となると考えられてきたためである.しかしながら,地盤-構造物の一体解析によって桟橋の地震応答解析を行うと,杭頭ではなく地中部で杭が塑性化する結果となることが多いほか,桟橋上部工と土留めを結合した方が独立とした条件よりも杭に生じる断面力が小さくなるケースがあることが既往の研究でも指摘されている.以上の背景のもと,本研究では,土留めとの境界条件が桟橋の耐震性能に及ぼす影響について検討した.
  • 長尾 毅, 小田 隼也, 小松 歩実
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_161-I_166
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     大震災発生後には緊急支援物資の輸送が必要であるが,沿岸域の係留施設も被災している可能性が高い.兵庫県南部地震発生時,神戸港で旅客輸送に使われていたT桟橋は,解体撤去後の調査で地中部などで杭の座屈が生じていたことが分かった.仮に大規模な余震が生じていれば大災害が生じていた可能性があったといえる.桟橋の杭の被災後の健全性評価は綿密な現地調査を行う必要がある.ただし,桟橋は被災により固有周期が長くなると想定されるが,既往の研究により,常時微動により桟橋の固有周期を推定することが可能と報告されている.以上の背景のもと,本研究では,大震災発生時の桟橋の固有周期の変化度から桟橋の被災程度を推定する方法について検討した.
  • 塩崎 禎郎
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_167-I_172
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     今後発生が懸念される首都直下地震,南海トラフ巨大地震に備えるため,臨海部のエネルギー関連施設の耐震対策は急務である.石油・ガス等のエネルギー入出荷用の鋼管杭式桟橋には,ローディングアーム等の機械が上載されていることから,機械の損傷を防ぐため桟橋上部工の加速度応答を抑えることが求められ,配管が陸まで敷設されていることから変位応答も抑える必要がある.さらに,桟橋本体の健全性を保つため鋼管杭の損傷も防がなければならない.このような要求に応える手法として,座屈拘束ブレースを用いた制震(振)化について解析的な検討を行った.その結果,既存桟橋よりも水平方向の剛性が高い組杭による新設基礎を設け,既設桟橋との間に座屈拘束ブレースを配置することで効果的な制震化が図れることがわかった.
  • 野村 早奈美, 千々和 伸浩, 岩波 光保, 三好 俊康, 小笠原 哲也, 宇野 州彦
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_173-I_178
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     鋼管杭式桟橋の上部工はりにおける局所的な鉄筋腐食が,全体構造系の耐震性能に与える影響を解析的に評価し,その結果に基づいて適切な維持管理手法を提案した.本論文では,まず合理的にコンクリート内部の鉄筋腐食を評価できるモデルを提案し,その妥当性を検証した.その後,提案したモデルを実際の鋼管杭式桟橋の上部工を成すRCはり部材に用いて,構造性能を評価すると同時に,実験により解析の妥当性も検証した.その解析モデルより得られたRCはりの構成則を全体構造系へ適用し,桟橋の時刻歴応答解析を行うことで耐震性能を評価した.最後に,解析結果に基づいて合理的な維持管理手法の考え方を提案した.
  • 堀 尚, 千々和 伸浩, 岩波 光保
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_179-I_184
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     近年,注目の集まる海底資源の開発において深海構造物へのコンクリートの適用性を探るための基礎研究として,深海並みの高水圧が作用した場合のセメント硬化体の破壊挙動の進展や機構の把握を試みた.セメントペーストによる破壊形状の比較から水セメント比と空気量の差異が破壊の進展の度合いに影響を及ぼすことが示唆された.モルタルによる体積ひずみの時間変化の測定から,空気量の差異が体積ひずみの収縮側への増加量に影響を及ぼすことが示唆されたと共に,高水圧下で長時間静置した後,体積ひずみ変化が膨張側に転じる傾向があることが推察された.
  • 笹 健児, 陳 辰, 塩谷 茂明, 若林 伸和, 寺田 大介
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_185-I_190
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     日本は沿岸波浪の情報は充実してきているが,沿岸から離れた海域は未だにデータが少なく,船舶が危険な状況に陥る要因となっている.本研究では国際航海に従事する貨物船を対象に太平洋上の荒天航海時における波浪情報をレーダー式波浪計にて計測し,これをWRFおよびSWANといった気象海象モデルにて再現・比較した.このときに同時観測した横揺れ,縦揺れなど船体運動の実測値と波浪データからEUTにより推定した値の比較を行った.レーダー式波浪計による計測値をもとに船体運動を推定した場合,若干ほぼ実用的に推定でき,一方数値モデルによる波浪追算は波向および周波数特性を精度よく再現できるが,波高はやや過小評価となることが明らかとなった.この点については船舶からの観測データをネットワーク通信により蓄積し,数値モデルの補正精度を向上させることで波浪情報の充実を図れる.
  • 野口 孝俊, 佐藤 克行, 髙橋 宏直
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_191-I_196
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     東日本大震災では東北各港湾の航路が漂流物により閉塞した実態を踏まえて,大規模地震による東京湾への津波来襲時での船舶の安全避難を行うために,避難水域を含めた開発保全航路が東京湾中央航路として大きく拡大された.一方で,この避難水域は台風来襲時等での避泊水域としても稠密に利用されていることから,台風来襲時での避泊水域としての有効性についても再評価が強く求められている.
     本研究では,この津波来襲を契機として設定された避難水域を,台風来襲時での避泊水域として再評価するために,避泊隻数の時系列推移及び1隻あたりの錨泊規模の観点から台風来襲時と津波来襲時との比較評価を実施する.
  • 柳 馨竹, 塩谷 茂明, 笹 健児
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_197-I_202
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     安全航海を目的に,著者らは出港前にこれから航海する航路の模擬体験航海を行い,航路の周辺状況の把握が可能な航海シミュレーションシステムの基礎を構築した.また,三次元海図を作成し,様々な航海情報を重ね合わせて提供するシーナビのシステムの基礎部分を構築した.これらのシステムにより,航路状況の把握が容易となり,操船支援装置として有効であることが期待できる.
     本研究の目的は,これら二種類のシステムの紹介と評価を行い,今後のシステムの高度化および改良を図ることである.システムの評価は実習生に対しアンケート形式で実施した.その結果,本システムが有効であることがわかり,様々な意見から,これらのシステムの今後の発展に処することが可能になった.
  • 安部 智久, 谷本 剛
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_203-I_208
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     現在新興国の旺盛な資源需要やパナマ運河拡張計画を踏まえて超大型船の建造・竣工が進展している中で,我が国においても国際バルク戦略港湾政策が進められている.超大型バルク船を対象とした複数寄港が想定されているため減載状態を対象とした航路諸元(航路水深,航路幅)算定手法が必要となる.本研究では,航路算定手法の確立に向けた基礎的な検討として,2007年に改訂された「技術基準」より導入された第二区分の航路諸元算定手法の考え方等に基づいて減載時の船舶挙動を分析し満載時と比較した.
  • 里村 大樹
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_209-I_214
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     近年,海上輸送・港湾分野において保安対策が強化されている一方,港湾のコンテナターミナルではゲート処理の時間短縮が課題となっている.そうした中,2014年7月1日から三点確認が義務化された.
     本研究では,三点確認義務化によりコンテナターミナルのゲート前の渋滞悪化が懸念されたため,現地調査を行った.また,今後,保安対策が強化された場合におけるゲート処理の円滑性確保策を検討した.現地調査を行ったコンテナターミナルでは,三点確認義務化による渋滞の悪化は確認されなかった.しかし保安対策が強化されてコンテナ搬入の処理時間が仮に5分長くなる場合を想定したシミュレーションの結果,現状設備ではオーバーフローするが,ゲート処理を多段化すること等でオーバーフローを回避でき,ゲートイン処理が効率化できる可能性が確認できた.
  • 琴浦 毅, 片山 裕之
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_215-I_220
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     海上工事を安全で効率的に進めるために気海象予測情報の取得は重要な課題であるが,作業限界波高1.0m程度の波浪推算精度についての検証例は少ない.また,リーフ周辺は地形や波浪場が複雑であるため,数値解析においても課題が多い.そこで,本研究ではリーフ地形周辺の現地波浪観測を行い,その結果を用いて,海上作業可否判断に資する波浪予測モデルの構築を試みた.
     現地観測の結果,リーフ周辺の波はリーフエッジ沿いに屈折しながら回りこむ波浪が支配的であったため,浅海域の波浪解析手法としてエネルギー平衡方程式を用いてリーフを回りこむ波を評価し,沖波に対する対象地点の波高比を算出した.WAMで求めた沖波推算波高に,算出した波高比を乗じて予測値を提供する簡易波浪予測モデルを構築し,そのモデルが実務的な精度を有していることを確認した.
  • 倉原 義之介, 中野 敏裕, 成田 裕幸, 濱田 文生, 渡邉 義文, 栗原 明夫, 宮崎 哲史, 津田 宗男
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_221-I_226
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     マリーナに求められる要求性能は,提供するサービスの質により異なる.既設のマリーナでは利用限界波高を0.3mとして計画した事例が多い.一方で,波浪と浮桟橋の同調により,波高0.3m以下でも浮桟橋の動揺量が大きくなり,利用者が不安を感じることがある.
     本研究では,マリーナの静穏度向上対策を実施するにあたり,浮桟橋の動揺量に着目して利用限界を検討した.まず,波浪による浮桟橋の動揺の数値解析を行い,浮遊式海洋建築物の既存の研究成果を参考に,波高が0.3m以下でも利用者が浮桟橋上での昇降作業に不安を感じる可能性がある事を示唆した.次に,マリーナの現地観測を行い,浮桟橋の動揺および港内外の波浪の特性を把握し,浮桟橋の利用限界を確認した.得られた特性を基に静穏度向上対策を実施し,その効果を確認した.
  • 大野 正人, 増田 光一, 居駒 知樹, 惠藤 浩朗, 村田 一城, 星野 智史
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_227-I_232
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     東日本大震災では,津波来襲後の港湾内及び周辺海域に津波漂流物が散乱し,港湾機能の復旧に早急な航路啓開活動が必要となった.しかし,海域の啓開作業を行う作業船の津波による被害評価を検討した事例は少なく,現状の津波災害対策では作業船団が十分に機能できない問題が生ずる恐れがある.従って,作業船の津波対策の整備に向けた初期段階として,港湾機能の早期復旧を担う作業船団に対して係留区域の安全性を検討する必要がある.そこで本研究では,津波作用時の港湾内に係留された作業船の挙動特性について津波伝播計算と船舶応答計算の統一的な解析から検討した.特に本論では係留索破断に焦点を当て,実勢の係留区域に関する津波危険度を評価することで数値検証を実施した木更津港で避泊する際に有効な係留区域を明らかにした.
  • 居駒 知樹, 増田 光一, 惠藤 浩朗, 榎本 修
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_233-I_238
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     潮流発電用の水車の種類はいくつかあるが,流速条件が必ずしも良くない日本では垂直軸型が有利になる可能性が高い.本研究では幅広い流速域でトルク性能を発揮させるために可変ピッチ機構を導入した6枚翼水車について,実海域での船舶による曳航試験を実施した.理想的とはいえない条件下でどの程度の水車性能を発揮できるのかについて把握することが最大の目的であった.また,波浪等の影響について有用なデータを取得するためであった.曳航試験結果から,設置角度-30度(±30度で可変)の設定で,15%の軸パワー効率を示し,最大で40Wの発電を確認した.波浪の影響は極めて顕著に水車性能の時系列に現れ,また時間をかけて流速が加減速する際には,それぞれの状況において水車性能が異なる可能性があることを示唆する貴重な結果を得た.
  • 福山 貴子, 秋山 義信, 高橋 俊彦, 飯田 和弘, 岩前 伸幸
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_239-I_244
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     海上施工で安全確保や施工精度向上のために最も重要となる作業船の動揺量を,防波堤や護岸,他の浮体の影響も考慮できる複数浮体動揺解析技術を用いて,実施工を想定した動揺解析を実施して検討した.
     浮体単独の動揺解析結果と比較をすると,防波堤や他の浮体の存在を考慮した場合は,作業船の動揺量にそれらからの反射波による影響が見られ,周期によっては動揺量が大きくなることから,近くに他の構造物がある場合には,他の構造物の存在を考慮した解析が必要となることが分かった.また,動揺解析結果を用いた作業中止条件の異なる工種を考慮した稼働率の算出方法を示し,現地施工計画へ反映した.
  • 佐藤 之信, 中山 恵介, 舘山 一孝, 佐野 史弥, 駒井 克昭
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_245-I_250
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     本研究は, オホーツク海南域における流氷量と波浪発生の要因である風に着目し,オホーツク海沿岸の波浪と流氷との関係を明らかにするため,氷量と有義波高及び風速に関し観測データの解析を行った.解析対象波浪は,オホーツク海沿岸に影響を及ぼす波向を北~東と考え,波向に対応する風が6時間以上連続して発生した際の有義波高とし,風速と有義波高の比率とその時の流氷量の関係から,流氷が有義波高に及ぼす影響を解析した.その結果,風速と有義波高の比率は流氷量が多いほど小さくなっており,特にオホーツク沿岸域に近い領域における流氷体積の増大が,有義波高の減少に最も寄与していることが分かった.これにより,今後の波浪と流氷の検討には, 可能であれば流氷体積を利用すべきであることが示された.
  • 佐野 史弥, 中山 恵介, 舘山 一孝, 佐藤 之信, 駒井 克昭
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_251-I_256
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     流氷に含まれる栄養は,北方圏における自然河川の値とほぼ同等な窒素濃度,リン濃度を示すことが過去の研究に知られており,オホーツク海にとって重要であることが分かってきている.しかし,近年の地球規模での環境変動の影響により,流氷の北海道オホーツク海沿岸域における接岸回数が減少しており,オホーツク海南部における流氷による栄養輸送が減少していると考えられる.そのため,将来において流氷の輸送がどのように変化するかを検討するためには,まず現在までのデータを利用して,流氷がどのように輸送されているかを理解する必要がある.そこで本研究では,衛星データを利用して流氷の移動ベクトルを推定する手法を提案し,その精度検証までを行った.提案手法で推定した結果,最小誤差約45%で流氷移動ベクトルを再現することができた.
  • 竹内 貴弘, 木岡 信治, 宮崎 均志
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_257-I_262
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     海氷が水平方向に激しく移動しない環境下においても,潮汐により海氷は上下方向には絶えず移動する.結氷が発生してない期間に腐食した鋼構造物表面を冬期間に海氷が損耗させる条件にあれば構造物表面が繰り返し活性化され腐食摩耗が促進し,結果として氷海域では通常の海域にある鋼構造物と比較して摩耗速度が大きくなる.この海氷が錆層を削る条件を見つけ出すためにその主要な因子となる接触圧力や介在する砂をパラメータとして低温室内での滑り摩耗試験を実施した.それらの結果と現地の条件, さらに経過年数と腐食量との関係から氷海域における鋼構造物の劣化予測につながる.
  • 橋田 雅也, 木村 克俊, 越智 聖志, 宮武 誠, 高橋 幹夫, 浜口 正志
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_263-I_268
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     海岸鉄道では,高波時の越波によって道床の洗掘被害や車両の制動障害が発生することがある.本研究ではまず,縮尺1/40の水理模型実験を行い,護岸の直背後へ打ち込む越波の特性を明らかにした.さらに,越波の打ち込みを縮尺1/4の落水実験によって再現し,これを線路模型に作用させ,道床バラストの洗掘状況を把握した.
     洗掘被害の対策工として,道床前面上にネットを被覆した場合のバラストの流出防止効果を調べた.また,鉄道線路の移設および防波壁設置による道床の洗掘被害の低減効果を検証した.越波による打ち込みに対しては,護岸背後3mの位置に線路を敷設し,高さ45cmの防波壁を設置した場合が,道床の洗掘被害の対策方法として最も有効であることを確認した.
  • 本間 大輔, 山本 泰司, 宮武 誠, 木村 克俊
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_269-I_274
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     近年,海面上昇や波高増大に伴い,海岸道路に来襲する高波の発生頻度が増加傾向にあり,これにより海岸道路の盛土被害が多発している.本研究では,北海道のオホーツク海沿岸における被害事例から,1:10程度の海底勾配をもつ海岸道路の被災限界の目安として,汀線から盛土までの距離が60m程度であることを明らかにした.また,盛土被害の発生条件とその対策について水理模型実験により検討した.その結果,現地の盛土被害の要因と考えられる代表遡上高R2%と沖波波高の関係を明らかにした.さらに,盛土被害の発生条件の目安を,遡上流速u2% = 0.6m/s,水脈厚η2% = 0.9m程度と推定した.また,海岸道路盛土の被害の応急対策として大型土嚢,恒久対策として消波堤の効果を検討した.
  • 関寺 将司, 小林 昭男, 宇多 高明, 野志 保仁
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_275-I_280
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     北端・南端を鹿島港の埋立地護岸と波崎漁港の防波堤により挟まれてポケットビーチ化の進んだ波崎海岸では,波崎漁港による波の遮蔽内では南向きの沿岸漂砂が卓越しているものの,汀線付近の現象に着目すると,海岸線の中央部以北では逆に北向きの沿岸漂砂が卓越していた.北部での卓越方向は,従来推定された沿岸漂砂の方向と逆向きであった.当海岸の汀線変化は,鹿島港以北での観測結果と同様,波向が季節的に変動する場におけるネットの沿岸漂砂の存在によって説明可能と考えられる.
  • 中村 聡志, 遠山 憲二, 平田 昭博
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_281-I_286
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     備讃瀬戸航路とその周辺には,サンドウェーブ(波高数m波長数十m程度の連続した砂堆)が存在する.サンドウェーブによって航路水深が局所的に浅くなる航行障害が生じており,航路障害を未然に防ぐため,計画的な維持管理を行うことが求められている.本研究では,地形形状や潮流速を外力条件とするサンドウェーブの発達予測モデルを開発した.予測モデルは,河床波の安定理論を基に,海底砂の水中安息角による制限条件,および,サンドウェーブの谷における砂礫移動の連続性による制限条件を加えた.また,サンドウェーブの勾配に比例する漂砂量を加えることによって,サンドウェーブ波高の時間発達式および移動速度の式を求めた.既存調査のサンドウェーブの波高,波長,移動速度などの値をもとに,予測式に含まれるパラメタを決定した.
  • 佐藤 雅史, 岩崎 伸昭, 宇多 高明, 石川 仁憲, 三波 俊郎
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_287-I_292
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     現在,清水海岸では,景観に配慮しつつ漂砂を制御するためにL型突堤の計画が進められているが,この海岸では既に消波堤や離岸堤が設置され,これらにより海岸防護が図られている.しかし,高波浪が襲来するとそれらの周辺で急激に侵食が進む恐れがある.このような高波浪時の海浜変形は,今後のL型突堤の計画検討においても重要な点となる.本研究では,2013年に襲来した台風18, 26号時の高波浪を受けた際の清水海岸の海浜変形を実測データを基に調べ,高波浪時には消波堤や離岸堤の消波効果が低下し,その背後の堆砂が流出したことを明らかにする.
  • 東原 浩志, 小林 昭男, 宇多 高明, 三上 康光, 野志 保仁
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_293-I_298
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/04
    ジャーナル フリー
     盤洲干潟縁辺部を対象として空中写真に基づく汀線変化解析と現地実測を行った.小櫃川河口北側では河口隣接部が北向き漂砂のバランスの崩れから侵食され,砂が北向きに運ばれて北支川左岸に砂嘴が形成されたことが分かった.その場合の沿岸漂砂は最大で127 m3/yrであった.また,2011年3月11日の大地震時の津波が砂州越流を起こしてbarrierが平均で7 m陸側に移動するという現象が新たに発見された.
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