抄録
本研究では,空気を注入して起立する空気袋構造形式の堤防に対し,その耐津波性能を水理模型実験から検証した.陸上遡上時の水深が比較的小さい津波を対象とし,実スケールの実験を実施した.半地下土倉を壁で仕切った上で,壁面開口部に試験体堤防を設置して注水し,設計津波波圧分布を模擬した静水圧を膜体の堤防に作用させて,膜の歪みや変位,内部気圧の変化などを計測した.
実験の結果,空気袋構造形式では,津波作用時に袋内の空気圧縮と内部圧の上昇に伴う材料変形や空気圧を介在した背面側の袋体の変動,初期内部気圧と大気圧のずれによる材料歪みの変化などに留意が必要である.一方,津波作用時の袋内の圧力上昇は,膜体前面の歪みを緩和するため,耐津波性能は向上する.