土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
ISSN-L : 2185-4688
72 巻, 2 号
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海洋開発論文集 Vol.32(特集)
  • 秦 吉弥, 湊 文博, 常田 賢一, 青木 伸一, 鍬田 泰子, 小山 真紀
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_1-I_6
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     静岡県沿岸域は,南海トラフ巨大地震において非常に大きな強震動の作用だけでなく巨大津波の来襲が予想されており,強震動作用中の避難困難時間と強震動作用後の避難所要時間をそれぞれ評価しておくことは重要である.そこで本稿では,まず,静岡県沿岸域の既存強震観測点を対象にした南海トラフ巨大地震による強震動予測を実施し,避難困難時間を評価した.次に,強震動予測地点から周辺の避難所までを対象にした歩行計測実験を行うことで,避難所要時間を評価した.最後に,避難困難時間と避難所要時間の関係性に基づいて,静岡県沿岸域が有する津波避難パフォーマンスの現状に関して議論を行った.
  • 横山 卓司, 大石 昌仙, 宇多 高明, 石川 仁憲, 宮原 志帆, 芹沢 真澄
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_7-I_12
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     清水海岸における既設L型突堤の周辺地形を詳細に測量し,その上でBGモデル(Bagnold概念に基づく3次元海浜変形予測モデル)を用いてL型突堤周辺の地形変化の再現計算を行った.この結果,計算により既設L型突堤の背後で観察された地形的特徴がうまく説明され,モデルの適用性が確認できた.次に,L型突堤の横堤長を90, 120, 150 mと変えた場合の沿岸漂砂量の低減効果を算定したところ,突堤なしの場合を基準とした沿岸漂砂量比は,それぞれQ/Q0=0.78, 0.75, 0.73となり,沿岸漂砂量の低減効果は横堤長にはあまり依存しないことが分かった.
  • 川崎 浩司, 金 明奎, 下川 信也, 村上 智一
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_13-I_18
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     地球温暖化による台風の強大化と海面上昇の影響により,深刻な甚大な高潮災害が発生することが危惧されている.また,地震後に陸域地盤が沈下した場合,より一層の甚大な浸水災害が生じる可能性がある.昨今,南海トラフ地震の発生が懸念されている中,地震後の高潮災害への対策について議論することは重要である.そこで,本研究では,大阪港沿岸部を対象に,南海トラフ巨大地震後に,既往台風あるいは巨大台風が襲来したときの高潮浸水解析を行い,現状の海岸施設の防護レベルについて検討した.その結果,地震発生後に,海岸・河川堤防等の防護施設が機能しない沿岸部に長期滞在することは危険で,小規模の台風が襲来した場合においても人的・物的被害を拡大する可能性があることを示した.
  • 淺井 正
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_19-I_24
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     気候変動への適応として高潮対策が必要とされているが,そのシナリオ設定や解析手法,解析結果の評価等については明らかでないことが多く,対策の実施においてボトルネックとなっている.そこで,気候変動に関する政府の取組みの動向をレビューする.レビュー等から得られた課題を受けて,高潮浸水想定を把握するための高潮浸水シミュレーションを行い,政策決定における評価手法や具体的な対策における技術的課題を抽出する.
  • 中條 壮大, 藤木 秀幸, 金 洙列
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_25-I_30
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     2015年8月に熊本県宇城市で生じた高潮による浸水被害は河道内に設置された水門操作の遅れに一因がある.豪雨警報が発令されている状況下での防潮堤閉門は河川氾濫の危険性もあるために閉門のタイミングを見極めることが難しく,水位のモニタリングを行いながら操作を行っていた.本研究ではこの2015年15号台風Goniの高潮特性について観測結果と数値モデルを用いて分析し,過去の事例と比較を行うことで急激な水位上昇の発生原因を調べた.加えて既往の台風経路に同一の中心気圧と進行速度の変化シナリオを与えて水位上昇率の変化幅を推定した.その結果,今後の水防活動で想定すべき高潮の水位上昇率とそれが生じる台風経路の特性について明らかにした.
  • 竹下 哲也, 姫野 一樹, 冨永 侑歩, 伍井 稔, 加藤 憲一, 諏訪 義雄
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_31-I_36
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     既往最大規模の高潮浸水想定区域図の作成に用いる台風モデルの条件設定に資するため,実績台風の中心気圧や移動速度について台風経路別の変化特性を考察した.
     対馬海峡以西を通過した台風については,太平洋側を通過した台風に比べて中心気圧が高いため,北緯34~38°付近で最低中心気圧が940hPaであることを示した.また,北海道,東北,北陸の一部海岸においては,台風の移動速度について,伊勢湾台風相当の73km/hに加え,第二室戸台風規模の96km/hも台風モデルの計算条件の候補とすることが望ましいことを示した.
海洋開発論文集 Vol.32
  • 大中 晋, 市川 真吾, 橋本 宏, 遠藤 秀文
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_37-I_42
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     インド洋のモーリシャス国において,顕在化しつつある海岸侵食や高波浸水被害,および今後の気候変動に対する適応策を検討するための我が国の技術協力事業が実施された.その中で,低標高の海岸エリアに対する高波越波対策として,当国で実施事例のなかった礫養浜を,パイロット事業として実施した.実施後のモニタリング調査より,海岸防護面,海岸利用および環境面における改善効果が図られ,本手法の有効性が確認されるとともに,地域主導による海岸維持管理が構築された.
  • 佐貫 宏, 田島 芳満, 琴浦 毅, 前田 勇司, 茅根 創
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_43-I_48
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     サンゴ礁州島の形成・維持機構について,様々な現地調査や実験,数値計算が行われてきているが,サンゴ礫の移動特性や州島の地形変化特性に関する現地調査は少ない.本研究では,西表島北方リーフ上にサンゴ礫だけで形成されるバラス島を対象として継続調査を行い,バラス島周辺の外力場を評価するとともに,州島の形成を担うサンゴ砂礫の移動特性について検討した.その結果,サンゴ礫の移動に対して,潮流ではなく波が支配的であり,特に移動限界シールズ数は0.02程度で既往の研究と概ね一致することがわかった.また,着色礫の追跡により島の東西から来襲する波によってリーフフラット上のサンゴ礫が島へ集積されることが明らかとなった.さらに,斜面法尻部に設置したセディメントトラップ調査から島南方へのサンゴ礫流出が確認された.したがって、サンゴ礁州島がリーフ上のサンゴ礫の集積とリーフ斜面への流出によって維持形成されていることが明らかとなった.
  • 市川 真吾, 大中 晋, 泉 正寿, 遠藤 秀文, 宇多 高明
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_49-I_54
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     ツバル国は,その国土がサンゴ礁起源の砂礫が堆積して形成された低平で狭隘な土地からなるため,高潮災害や海岸侵食が顕在化していたが,資機材の調達の困難さから,これまで十分な海岸保全対策がなされてこなかった.そこで自国で入手可能なサンゴ礫と砂を養浜材として利用し,防護とともに利用・環境に配慮した保全対策として礫養浜を提案し,実証事業として実施した.礫,砂の取得については,周辺海浜への影響を抑制するよう,その移動機構を考慮した計画とした.また海浜断面や突堤等の設計では,施設機能と利用・景観面の要求機能を満たすよう工夫するとともに,設計数量の削減も図った.また施工後における地域主導による海岸管理の実現と,それによる良好な海岸環境維持を目的とした環境啓蒙活動を実施し,一定の意識向上効果が確認された.
  • 鈴木 崇之, 岡崎 光平, 佐々木 淳, Thamnoon RASMEEMASMUANG, Anurak SRIARIYAWAT, 齊藤 翔 ...
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_55-I_60
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     タイランド湾奥部において海岸侵食対策として用いられている海岸構造物の1つである竹柵に着目し,現地における竹柵の波高減衰効果の検証を行った.さらに,竹柵を模した丸棒を用いて室内実験を行い,その形状による波高減衰効果を検討した.その結果,現地の竹柵では24 %程度の波高減衰効果が見られていたが,その割合は年を追うごとに低下しており,これは竹柵の竹そのものが折れてしまうことにより生じたと考えられた.また,室内実験の結果より,周期が短い波の場合においては消波距離が長く,丸棒の交差配置であるほど波浪減衰効果が高く,最大約45 %の減衰効果が見られた.しかし,波の周期が長くなるほどその効果は小さくなり,消波距離,丸棒の配置にかかわらずその減衰効果は10 %程度にとどまることがわかった.
  • Vo Cong HOANG, 田中 仁, 三戸部 佑太, Dinh Van DUY
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_61-I_66
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     Google Earth画像はここ10年程度の期間における汀線変動を知る際にはきわめて有効であり,これまでも多くの海浜変形に関する研究において使用されている.ただし,撮影時刻が示されていないことから,汀線判読にあたって潮位補正を行うことが出来ないという大きな欠点を伴っていた.そこで,晴天時に撮影された画像には建物など背の高い物体の影が写っていることが多いことから,この情報を活用して撮影時刻を推定する手法を提案した.まず,長期にわたり撮影画像が蓄積されている仙台海岸を対象に同手法を適用し,既知の撮影時刻との比較により,推定時刻の誤差が最大でも7分ほどであることを明らかにした.その後にGoogle Earth画像への応用を試み,この補正の有無が中期的な汀線の後退・前進の判断に及ぼす影響を検討した.
  • Tran Minh THANH, 田中 仁, 三戸部 佑太, Nguyen Trung VIET, Vo Cong HOANG
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_67-I_72
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     近年,局所的な海岸侵食が発生しているベトナム・ニャチャン海岸において,二台のビデオカメラにより汀線変動を約13ヶ月にわたってモニターした.その結果,約650 mの区間において季節的な変動を示していることが明らかになった.その変動幅は砂浜の端部で40 mほどであり,端部からの距離の増加とともに減少していることが分かった.また,画像に記録された砕波帯幅の大小の情報から,北東モンスーン期とそれ以外の時期において大きく異なる波浪特性を確認することが出来た.得られた汀線変化データから沿岸漂砂量を推定するにあたり,このような波浪の大小に伴う移動限界水深の変化を考慮する必要があることから,単純な海浜断面の仮定により,砕波帯幅から移動限界水深を推定した.従来の一定値とする手法に比べ,沿岸漂砂量について有意な違いを生むことが明らかになった.
  • 山本 吉道, Uba SIRIKAEW, Kornvisith SILAROM
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_73-I_78
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     タイ国では,炭材確保のために自然の消波施設であるとマングローブ林を伐採したことによる海岸侵食が問題になっていたが,20世紀後半の経済成長に伴う開発行為によって,養殖場確保のためのマングローブ林伐採に加えて,日本と同様な原因による海岸侵食が無視出来なくなってきた.Khlong Wan海岸では,先進国で多発した防波堤設置による海岸侵食を避けるために,桟橋形式による沖出し漁港を二か所に建設したが,中途半端に増設してしまった突堤と巨大離岸堤によって,それらの中間地にあるリゾート地で顕著な海岸侵食が発生した.本研究では,この海岸侵食機構を再現して,海岸汀線の将来予測を行い,最も危険な箇所の海岸保全施設改良を海岸侵食と越波の防止の観点から検討し,養浜案が最良であることを明らかにする.
  • Takaaki UDA, Tsung-Hsien TSAI, Yu-Hsiang LIN, Chun-Hung PAO
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_79-I_84
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     Golden Beach in south Taiwan is widely known and has been attracting many beachgoers. In recent years, this beach has been eroded and measures to restore the sandy beach are required. The cause of the beach erosion was investigated on the basis of bathymetric survey data. In the study area, northward longshore sand transport, which was induced by the wave-sheltering effect of Anping Harbor, prevails, and the rate of transport was estimated to be 1.25×105 m3/yr with the conditions of the depth of closure (hc) of -6 m, the berm height (hR) of 2.2 m, and the characteristic height of beach changes (h) of 9.2 m.
  • 宇多 高明, 小林 昭男, 伊達 文美, 三上 康光, 芹沢 真澄
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_85-I_90
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     Vietnam東部のVan Phong BayにあるBip Island周辺に伸びた陸繋砂州の現地調査を行った.この陸繋砂州は,卓越風向であるほぼN5°E方向からの風波の作用の下で,Bip Islandの西岸に沿って南下する沿岸漂砂により運ばれた砂がリーフの発達した浅い海域に堆積してできた.また,衛星画像によれば,2002年4月から2008年7月には西岸の汀線突出部から砂嘴が伸びたことから,この砂嘴の堆砂量の変化より,南下する沿岸漂砂量が655 m3/yrと推定された.一連の海浜変形より,島北部から供給された砂が,島陰で発達した南向きの沿岸漂砂により運ばれることにより,陸繋砂州の形成が促されたことが確認された.
  • 宇多 高明, 大谷 靖郎, 大木 康弘
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_91-I_96
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     九十九里浜南部の一松海岸では,2014年10月の台風時急速に侵食が進んだが,2015年の夏季には4個の台風が続けさまに襲来した結果,一宮海岸とその北側の一松海岸では従来にも増して激しく侵食が進み,砂丘(土塁)が大きく削り取られた.両海岸とも近年侵食が進み浜幅が狭まってきていたが,そのような状態で高波浪を受けたために既往の対策手法では問題解決が困難なほどの侵食が起きた.本研究ではその状況を3回の現地調査により明らかにし,今後の方策について考察した.
  • 野志 保仁, 永渕 康平, 小林 昭男, 宇多 高明, 三上 康光
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_97-I_102
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     東条前原海岸では,2015年夏季に3個の台風が続けて襲来し,高波浪により著しい侵食災害が発生した.本研究では,その災害調査のために2015年11月にRTKによる海浜縦断測量と底質採取を行い,また侵食実態調査を行った.その上で近年の汀線変化について空中写真を用いて解析した.この結果,南部に造られた防波堤による波の遮蔽効果により誘起された沿岸漂砂による侵食が現在も継続し,汀線付近の水深が増大し,その状態で高波浪が作用したことが緩傾斜護岸などの陥没原因となったと推察された.
  • 宇多 高明, 大木 康弘, 三波 俊郎
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_103-I_108
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     日立市河原子海岸では近年侵食が著しく進み,砂浜が消失して海水浴ができなくなった.本研究では,まず北部の会瀬漁港から河原子港間の長さ約4kmの海岸線を対象に空中写真による汀線変化解析を行った.次に,2015年12月26日には河原子港周辺海岸で侵食状況の踏査を行い,さらに河原子港周辺について1982~2013年に取得された深浅測量データを基にした地形変化解析を行った.侵食原因には,北部の会瀬漁港での離岸堤背後の遮蔽域へと砂が運び去られたこと,また2011年の大地震に伴う地盤沈下が係わると推定された.
  • 宇多 高明, 三波 俊郎, 大谷 靖郎, 大木 康弘
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_109-I_114
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     空中写真や深浅データなどを基に北九十九里浜の汀線変化と飯岡漁港周辺の海浜変形について調べた.深浅データの分析によれば,飯岡漁港の南防波堤建設後,屏風ヶ浦から供給された土砂が南防波堤周辺域に堆積し,1980~1990年には6.2×104m3/yrの割合で土砂量が増加した.その後は,堆積域が満杯となって漂砂が下手側へと流出したため,堆積速度は1.3×104m3/yrへと漸減傾向を示した.一方,南防波堤による波の遮蔽域内に入る下永井・横根海岸での1977~2014年の堆積速度は6.5×104m3/yrであり,上手側からの供給量とほぼ一致した.以上より,現況では屏風ヶ浦方面からの供給土砂が下永井・横根海岸に集中的に堆積し,下手側にはほとんど供給されていないことが明らかとなった.
  • 宇多 高明, 伏木 祐二, 村井 寛昌, 大谷 靖郎, 大木 康弘
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_115-I_120
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     海岸線近傍まで海底谷の発達した富山湾内の片貝川河口付近を対象として,衛星画像と1968~2014年に取得された深浅測量データを用いた地形変化解析を行い,2015年5月の現地踏査と併せて海底谷周辺での土砂移動の実態を調べた.片貝川河口の南側直近では,海岸線近傍まで深い海底谷が迫っており,片貝川の洪水時に供給された土砂が河口に堆積後,この海底谷へと落ち込んでいる.河口正面(No. 12付近)を通過して海底谷へと向かう沿岸漂砂量はほぼ0.6万m3/yrと推定された.
  • 宇野 宏司, 岸本 周平, 辻本 剛三, 柿木 哲哉
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_121-I_126
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     都市河川河口では,夏季の貧酸素化や,冬季の河口閉塞による水質の悪化が問題となっている.一方,河口砂州は河口を閉塞させることで,稚魚の生育に必要な汽水域を形成する可能性も持っている.このため,砂州の動態を把握し,これを適切に管理することで都市河川河口及びその沿岸の水環境の改善が期待できる.そこで本研究では,明石川河口部において現地調査と航空写真判読を行い砂州の動態を把握するとともに,潮流と波浪の数値計算を行うことで明石川河口砂州の形成要因を把握した.現地調査から,直近の4年間においては右岸砂州が,航空写真判読から,長期的には左岸砂州がそれぞれ発達する機会が多いことが確認された.また,数値計算から,明石川河口付近では潮流よりも海浜流の流速の方が大きく,これに伴い土砂が移動することから砂州の形成要因は波浪の影響が大きいことが示唆された.
  • 宇多 高明, 石川 仁憲, 三波 俊郎, 石野 巧, 鈴木 悟, 岡本 光永
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_127-I_132
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     富士海岸背後の浮島ケ原を流れる高橋川と沼川の合流点付近では,洪水の危険度が高いため新放水路が計画された.計画では,放水路吐口をバームより陸側にすることにより漂砂による堆砂を防ぎ,建設費を低減可能な方式として新たにセットバック型が提案された.一方,富士海岸の沼津付近では既に暗渠型の新中川放水路が設置され,有効に機能する一方,新放水路の計画地点付近にはセットバック型に近い排水路が設けられている.そこでこれらの放水路周辺の地形特性を比較し,放水路形式の相違が周辺地形に及ぼす影響について考察した.
  • 石川 仁憲, 宇多 高明, 水野 良幸, 佐藤 雅史, 三波 俊郎
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_133-I_138
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     深浅測量データおよび空中写真等の解析により,静岡清水海岸における近年のsand bodyの移動実態と,その移動促進策としての養浜の効果について明らかにした.静岡清水海岸では,安倍川からの1.8×105m3/yrの砂礫供給により,sand bodyが漂砂下手側へと確実に広がっている.また,静岡清水海岸では,2007年以降sand bodyの移動促進策として安倍川下流域の河床堆積土砂を用いた養浜が継続的に行われてきたが,これにより清水海岸は堆積傾向となり,養浜の効果が確認された.しかしsand body先端付近の自然海浜は,粒径の細かい礫と砂で構成されているのに対し,養浜盛土付近の海浜は大礫を多く含み,結果的に沿岸方向の土砂移動速度が小さく,これによりsand bodyの移動が抑制された可能性が高いことが分かった.
  • 黒田 耕平, 泉宮 尊司
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_139-I_144
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     本研究では,地殻変位データとABIC規準を用いて,従来の断層のすべり量とハイパーパラメタだけでなく,断層の走向および傾斜角の点推定を同時に行っている.AkaikeによるABICの値が,ハイパーパラメタと観測誤差ノルムの関数であることを利用して,ABICの最小値から断層の走向および傾斜角を推定する方法の精度について,数値シミュレーションにより検討している.その結果,誤差ノイズが5%程度であれば,走向および傾斜角の真値とABICが最小となる走向および傾斜角がほぼ一致しており,誤差ノイズが10%程度でも十分精度よく断層パラメタの推定を行えることが分かった.
     さらに,1秒毎の地殻変位時系列データを用いて,東北地方太平洋沖地震を対象に準静的津波波源インバージョンを行った.その結果,地殻水平変位データの観測値と計算値の比較では,変位量に若干の誤差が見られたが,変位のパターンはよく再現されていた.また,津波波形の比較では,Central Iwateを除いて比較的良く一致していた.
  • 佐藤 兼太, Bruno ADRIANO, 越村 俊一
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_145-I_150
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     浅水長波理論に基づく格子ボルツマン法は,その外力項である地形勾配の影響が正確に計算されないことが既往の研究から明らかになっている.これに対して,地形勾配の取り扱いを修正した新しい格子ボルツマン方程式が提案されているものの,依然として地形勾配が緩やかな流れ場の検証にとどまっており,実地形における津波数値解析への適用性は明らかとはなっていない.そこで本研究では,格子ボルツマン法の実地形における津波数値計算の適用性の向上に向け,格子ボルツマン方程式の外力項に着目した高精度化について検証を行った.本研究の手法を用いて2011年東北地方太平洋沖地震津波の再現計算を行ったところ,本研究の手法は,従来の格子ボルツマン方程式と比較し,有限差分法の計算結果をよく再現することが可能であることを明らかにした.
  • 永島 弘士, 石堂 聡大, 米山 望, William James PRINGLE
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_151-I_156
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震時に,宮城県松島湾沿岸域においては津波被害が比較的小さかった.これは,松島湾内部や湾口部の島嶼部により津波が減勢されたためであると考えられているが,松島湾の地形条件が津波減勢効果を発揮した具体的な要因は明らかではない.本研究では,数値解析により,松島湾周辺の地形を様々に変化させて津波水位等を比較し,松島湾における津波減勢の要因を考察した.その結果,松島湾においては,島嶼部の存在に加えて,湾口部で海底が外洋部に比べて急激に浅くなるという特有の地形条件によって津波減勢効果が得られていたことがわかった.また,松島湾の地形条件による津波減勢効果を人工構造物により得ようとすると,湾口部に全長約6.5km,天端高T.P.+6.0m程度の防波堤を建設する必要があることが推定された.
  • 池谷 毅, 高橋 俊彦, 福山 貴子, 末長 清也, 喜々津 仁密, 壁谷澤 寿一, 岩田 善裕, 奥田 泰雄
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_157-I_162
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     陸上構造物に作用する津波波力を評価するためには,津波の浸水深と水深係数を知る必要がある.従来,水深係数として3が用いられてきたが,東日本大震災後の現地調査により,海岸線からの距離により低減が可能であることがわかった.しかしながら水理学的なメカニズム,適用の合理性については課題が残る.
     本論文では,初めに既往の研究成果から,水深係数がフルード数に依存して決まることを示す.次に,簡便に入手可能な津波ハザードマップの浸水深に関する情報から,エネルギー線法によりフルード数の変化を表現する方法を提示する.さらに,想定縮尺1/100のフルード相似則に従った水理模型実験を実施し,評価方法の妥当性を確認した.最後に,エネルギー線法により,海岸線からの距離,粗度係数,標高をパラメータとしてフルード数の変化を評価し,地表面粗度が粗いほど,海岸線からの距離が大きいほど,地盤標高が高いほど,フルード数が低減することを確認した.
  • 中村 友昭, 鈴木 愛美, 趙 容桓, 水谷 法美
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_163-I_168
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     浮遊砂を含んだ水の粘性係数の測定を行い評価式に含まれるパラメータの同定を行うとともに,その評価式を組み込んだ数値計算モデルを用いて一様流と津波による流動場に与える浮遊砂の影響を考究した.その結果,浮遊砂濃度とせん断応力が与えられれば評価式から粘性係数が推定できることを示した.一様流を対象とした数値解析より,浮遊砂による粘性係数の変化を考慮することでwakeの流速が増大する既往の研究と対応する結果が得られることを確認した.津波を対象とした数値解析より,浮遊砂の影響の考慮の有無で流動場が変化することが判明した.また,準定常的な持続波圧で最大津波力が生じる場合には,浮遊砂による密度と粘性係数をともに考慮することで最大津波力が増加する現象が確認でき,このことから浮遊砂の影響を考慮することの重要性を示した.
  • 藤田 祥平, 加藤 茂, 岡辺 拓巳
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_169-I_174
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     近年,南海トラフ巨大地震を想定した津波の伝播計算とその結果を用いた津波防災に関する研究が数多く行われている.本研究の対象とする伊勢湾・三河湾に来襲する津波は,地形的特徴から必ず伊勢湾口を通過するため,湾口周辺での情報を湾内各地に来襲する津波の事前情報と考えることができる.加えて,2014年には伊勢湾口沖にGPS波浪計が設置され,湾内に来襲する津波の情報を早期に入手できる可能性が高まった.そこで本研究では外洋から伊勢湾・三河湾に来襲する津波のシミュレーションを実施し,湾内での津波の最大水位とその到達時間の空間分布の特徴を把握し,湾内の津波危険度分布について考察した.伊勢湾内においては,知多半島先端が特に水位伝達率が高く,最大水位到達時間も短いため,津波による被害発生危険度が高い地域であることが明らかになった.
  • 有働 恵子, 武田 百合子
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_175-I_180
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     本研究は,インドネシア・タイの海岸における,巨大津波による侵食とその後の回復状況を仙台湾南部海岸と比較し,特徴的な共通の汀線変化特性(砂州の侵食および異なる位置における再形成,砂浜全域の大規模な侵食と限定的な回復)を明らかにした.2011年津波による被災海岸では,被災後1年間は顕著な回復が認められたものの,5年が経過した現在においても十分な汀線回復が認められない場所が多く存在する.これは2004年津波による被災海岸においても共通しており,被災から10年以上が経過した現在においても十分に回復していない場所が存在する.これらを総合的に考えると,2011年津波後十分に回復していない海岸において,自然状態での短期的な回復は期待できないと判断される.
  • 諏訪 義雄, 二階堂 竜司, 浜口 耕平, 原野 崇, 渡辺 国広, 中園 大介, 原 文宏, 青木 伸一
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_181-I_186
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     本研究は,航空レーザ測量,空中写真等を用いて,2011年の東北地方太平洋沖地震津波による砂丘,盛土,丘および地盤等の侵食実態を分析したものである.対象地域は,青森県から千葉県の津波浸水範囲内であり,各地点の地形変化状況をとりまとめることにより,地形の侵食量と津波外力の相関関係を算定した.また,特異な侵食が生じていた千葉県旭市の盛土を対象に,航空レーザ測量と空中写真による実態分析と津波シミュレーションによる侵食量の試算を行い,局所的な侵食の発生状況およびその要因の考察を行った.
  • 八木澤 順治, 武村 武, 小野 翔太郎, 板橋 直樹, 篠嶋 賢一, 鈴木 純平, 田中 規夫
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_187-I_192
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     本研究では岩手県浪板海岸において,東日本大震災後の年間を通じた漂砂動態の把握を目的としたカラーサンドの追跡調査と,震災時の地震による地盤沈下の影響が漂砂動態に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした水理模型実験を実施した.その結果,カラーサンドの追跡調査から,冬季・夏季ともに,投入した砂(d50=0.6-1.0mm)の大部分が短期間で移動限界水深地点よりも沖側に輸送される可能性は少なく,養浜で同程度の材料を用いた場合,その一部が砂浜の再形成に寄与する可能性があることがわかった.また,水理模型実験より,震災前後の地盤高によらず汀線付近では冬季に砂が減少し,夏季に増加するという震災前と同様の漂砂動態の傾向を維持しており,養浜により地盤高が回復すれば砂浜が再生される可能性があることを明らかにした.
  • 浜口 耕平, 原野 崇, 二階堂 竜司, 中園 大介, 原 文宏, 諏訪 義雄
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_193-I_198
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     南海トラフ地震よる津波により大量の津波漂流物が発生し,火災などを引き起こすことで被害が拡大する恐れがある.しかし,広域にわたる津波漂流物のリスクを評価する手法は未だに確立されていない.そこで,津波漂流物のシミュレーションを行う為に必要なデータセットを作成することを目的として,東日本大震災における津波漂流物の漂着位置と量の推定を行った.
     津波漂流物の位置は空中写真等から判読し,重量は自治体などの報告書等から収集した.津波漂流物の漂着面積あたりの重量には地域によってばらつきがあった.陸前高田市,気仙沼市,亘理町を例にとり,その要因を調べたところ,海岸堤防などが引き波時に津波漂流物の海への流出を防ぐ効果があり,津波の遡上距離が長い地域では,津波が減衰し,広域にわたり分布する傾向となると示唆された.
  • 野島 和也, 桜庭 雅明, 小園 裕司
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_199-I_204
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     本研究では,比較的広域で多種の漂流物の移動・滞留状況を把握する実務的な漂流物シミュレーションにおいて,個々の漂流物の不確定性を考慮した被害予測手法を開発した.多種多様の漂流物が対象となる,実地での漂流物シミュレーションにおいて,同種の漂流物に対して代表的なひとつの移動条件を設定する方法では,個々の特性による漂流経路や滞留場所の変動を表現することができない.本研究では,漂流物の特性を示す代表的なパラメータとして漂流開始水深,抗力係数および慣性力係数に着目し,不確定性を考慮した数値シミュレーションにより,変動特性を考察した.また,現地における既往津波に対して本検討を発展し建物の影響の有無による比較を行った.
  • 田島 芳満, 桐ケ谷 直也, 櫻澤 崇史
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_205-I_210
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     本研究では,氾濫流とそれに伴う漂流物群との相互作用による影響の分析を試みた.まず断面二次元水槽に一様勾配斜面と多数の木片群を配置して段波を作用させ,氾濫流および木片の挙動を画像解析を用いて抽出した.次に氾濫流には断面積分した非線形分散波方程式を,木片の挙動には個別の運動方程式をそれぞれ適用した数値モデルを構築した.木片に作用する流体力の算定にはモリソン式を用い,その反作用力を非線形分散波方程式に加えることによって,漂流物と流体との相互作用を考慮した.モデルを実験条件に適用した結果,相互作用による影響の大きさは,氾濫流場の規模と漂流物群の比重や個数との相対的な関係によって変化するものの,氾濫場の水位変動特性だけでなく,漂流物自身の挙動にも有意な影響を及ぼすことが明らかとなった.
  • 深津 圭佑, 小林 貴瑠, 菊池 喜昭, 兵動 太一, 二瓶 泰雄, 倉上 由貴, 龍岡 文夫
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_211-I_216
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     2011年の東北地方太平洋沖地震では,防潮堤よりも高い津波が越流することで多くの防潮堤が崩壊した.本研究では,大越流に対する防潮堤の抵抗特性を検討した.具体的には,小型循環水路内に,補強材とパネルを連結したうえで,法面勾配と堤体表層の砕石層の厚さと被覆工パネル間の隙間を変えた防潮堤と補強材の敷設長さを変えた部分補強防潮堤の模型をそれぞれ作製し,越流時の防潮堤の侵食に対する抵抗性を検討した.その結果,海側法面を2割勾配,陸側法面を5分勾配にし,パネルと補強材を連結したGRS防潮堤は最も耐越流性能が高いことが分かった.また,補強材敷設長さが短い場合は,少ない流量でパネルと砕石層が一体となって陸側部分が崩壊するなど,補強材敷設長さや敷設方法の違いによって耐越流性能が変化することが分かった.
  • 伊藤 政博, 馬場 真一
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_217-I_222
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震津波が浸水した宮城県の海岸林を対象に,津波による海岸林樹木の立木・倒木,津波浸水深,樹径,年輪および樹高などを現地調査した.この調査結果に基づいて,海岸林の津波浸水深,海岸林の樹径と樹高,および立木・倒木の相互の関係を検討した.津波に対して立木として生育していた海岸林樹木の樹径(樹齢)と浸水深の関係を明らかにした.さらに,樹木に作用する津波流体力モーメントと林学的方法による樹木の引倒し試験結果を用いて傾倒の限界を提示した.この傾倒限界式を用いて浸水深と樹径(樹齢)関係を検討した結果,式中の抗力係数CD=1, Froude数Fr=0.53としたとき,両者の関係が一致することを示した.
  • 中村 友昭, 伊藤 早紀, 山本 勘太, 趙 容桓, 水谷 法美, 小竹 康夫
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_223-I_228
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     据付時の上部斜面堤ケーソンの3次元的な動揺特性を水理実験により考究した.その結果,ケーソンの幅と入射波波長の比である相対堤体幅の減少とともに,未係留時はHeaveとRollの全振幅が,係留時はSurge,Heave,Roll,Pitchの全振幅が単調に増加する傾向があることが判明した.また,引き寄せワイヤと振れ止めワイヤによる係留には,Swayと Heaveの全振幅を低減させる効果があることを示した.さらに,沖側の引き寄せワイヤに作用する張力はSurgeの影響を,新設ケーソンの岸側上部から既設ケーソンの沖側上部に張った振れ止めワイヤに作用する張力は,周期が短い場合にはSurge,周期が長い場合にはSwayの影響を受けることが判明した.以上の傾向は係留方法が異なる断面2次元実験時とは異なっていたことから,モデル化に際して係留索の状況を適切に設定することの重要性が示唆された.
  • 惠藤 浩朗, 佐藤 千昭, 増田 光一, 居駒 知樹, 岸田 智之, 久保田 充
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_229-I_234
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     本研究では東南アジアでの石炭輸送効率を上げるための石炭貯蔵・払出浮体(以下,LFCSとする)を提案し,その基本構造を提案するとともに海上での基本特性について調べた.LFCSは全長590m,全幅160mであり,最大積載重量は50万tである極めて大排水量な浮体である.まず,大容量の石炭を貯蔵できるだけの構造断面を提案し,浮体全体の安定性を石炭積載方法ごとに調べた.数値計算にはFEMを適用し,静的な応力分布の評価も行った.別途,流力弾性応答問題を解くことで,重量分布が異なる条件での波浪中弾性応答を調べた.これらの結果から,重量分布や積載による重量変化によって波浪中弾性応答性状は異なるが,その差は必ずしも大きくないことがわかった.
  • 昇 悟志, 久保田 真一, 松本 朗, 千々和 伸浩, 岩波 光保
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_235-I_240
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     消波ブロックの構造性能の評価手法を確立するために,消波ブロックに作用する荷重の中でも上載荷重に着目し,荷重の分布や波浪による変動荷重の大きさ等の特性を明らかにすることを目的に荷重の測定実験を静穏下ならびに波作用下の条件で実施した.その結果,静穏下における最下層ブロック単体に作用する上載荷重はガンマ分布で近似でき,また消波工の相対密度や浮力に関係することを示した.波作用下における最下層ブロックに作用する変動荷重は,波高が小さい場合は浮力の増減,波高が大きい場合は浮力以外に波力がブロックを伝播して作用する接触力の増減が支配的となることが明らかとなった.また,変動荷重の振幅は波高の増加とともに増大することを確認した.
  • 勝呂 基弘, 菊池 喜昭, 兵動 太一, 山崎 佑太朗, 玉置 才哉子, 森安 俊介, 及川 森
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_241-I_246
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     2011年の東日本大震災において防波堤が津波によって被災した.そこで,ケーソン式防波堤を鋼管杭と裏込め材で補強した構造形式が提案されている.この構造形式に用いる鋼杭の曲げ剛性の合理的設計に資するべく,実物の1/60のスケールで,模型気中載荷実験を行った.本研究では,鋼杭の曲げ剛性の違いによるケーソンの補強の効果の変化を検討した.その結果,ケーソンの抵抗力の発揮には,ケーソン奥行方向の鋼杭の全体剛性が影響することがわかった.また,鋼杭の曲げ剛性が異なることによってケーソンから杭に作用する荷重分布にも違いがみられることがわかった.
  • 井内 国光, 山口 正隆, 野中 浩一, 日野 幹雄, 畑田 佳男
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_247-I_252
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     第3世代波浪推算モデルSWANの特性を調べるため,一様風とstormの各条件に対して波の発達・減衰式と海面抵抗係数Cdや時空間解像度を変えた計算を行った.主要な結果として,一様風条件に対し 1) 摩擦速度u*表示の無次元エネルギーε*と無次元吹送距離F*の関係は発達・減衰式の種類により相違し,いずれのε*も経験式による値を上まわる.とくにJanssen式は最も大きいε*を与える.ε*F*関係に及ぼすCd式の影響は無視しうる.2) ε*F*関係に及ぼす風速U10の影響はみられない.また,ピーク周期と平均周期の間の勾配値は経験値1.1に近い値をとる.storm条件に対し 3) 各種パラメータ条件下のSWANは高い精度を与えるが,最大波高へのCd式や発達・減衰式の影響はある程度有意である.4) 空間解像度の影響はみられないが,計算時間間隔の影響はJanssen式の場合に有意である.
  • 野中 浩一, 山口 正隆, 日野 幹雄, 宇都宮 好博, 畑田 佳男, 井内 国光
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_253-I_258
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     スペクトル法に基づく波浪推算において有義波高Hや有義波周期Tの算定は周波数スペクトルの0次積率の平方根値および-1次と0次積率の比にそれぞれ定数の換算係数α(= 4.004),β(= 1.000)を乗じて得られる.しかし,αとβはスペクトル幅パラメータQPやκ01とともに増加し,QP→∞やκ01→1で上記の値に漸近するベキ乗式で近似される.このため,係数αやβを変量とする場合には定数とする場合に比べてHTが小さく評価されるので,波浪推算における過大評価は適正評価の方向へ是正される反面,適正評価や過小評価は過小評価の助長につながる.ここでは,わが国の太平洋岸沖合の多数のGPSブイ波浪計による観測結果とSWANによる推算結果の比較を通じて,台風(T)1106時に前者の傾向が,T0918時には後者の傾向が周期や最大有義波高に対して現れることを確認した.
  • 山口 正隆, 野中 浩一, 井内 国光, 日野 幹雄, 畑田 佳男
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_259-I_264
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     気象庁MSM風資料と第3世代モデルSWANよりなる波浪推算システムの東シナ海における適用性を,経路が典型的に異なる台風T1102時とT1216時の風および波浪の観測資料との比較に基づいて明らかにしたのち,最大波高の最大値に及ぼす波の発達条件の影響を調べて,つぎの結果を得た.1)南西諸島全域を経て九州西岸に点在する14灯台でMSM風速は観測値より10~20%大きい傾向にあるものの,全般的によく符合するが,九州西岸では北側地点ほど大きくなる.風向に対して両資料の対応は良好である.2)南西諸島と九州西岸北部の観測地点で推算波高・周期は観測結果とよく符合するが,T1102時では周期の再現性がやや低い.3)最大波高の最大値に代表される波高の推算値は海面抵抗係数や波の発達項の表示式に依存して有意な程度に変化する.
  • 鈴木 善光, 髙山 知司, 吉永 泰祐, 岡田 弘三, 窪田 和彦, 宇都宮 好博, 松藤 絵理子, 君塚 政文
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_265-I_270
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     本研究では,第3世代波浪モデルWAMとWW3を用いて波浪の再現性を検討し,設計波浪の算定や波浪予測における両モデルの適用性を調べた.近年日本周辺に高波浪をもたらした台風や低気圧,冬季風浪の異常時および常時について,各モデルの波浪追算を行った.波浪推算結果とナウファスGPS波浪計および沿岸波浪計の観測値との比較により,両モデルの波浪推算特性,特にうねり性波浪に対する再現性と課題を明らかにした.その結果,異常時の多くのケースでは,WW3のピーク時波高や全期間の周期で実測値とよく一致していること,また一部のケースでは,波高のピークで過大評価であることを示した.過大評価については,対象事例を増やし,その原因を究明しておく必要がある.
  • 琴浦 毅, 田中 仁
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_271-I_276
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     第三世代波浪推算モデルであるWAMは設計波の算定,波浪予測情報の提供など実務に適用されているものの,海上工事が可能である低波浪時における予測精度の検証は少ないため,著者らはこれまでWAMを海上工事に適用するための検証を進めてきた.これらの検討を通じて,特に低波浪時において波高を過大評価,周期を過小評価するケースがあることを確認していた.
     本研究では低波浪時の波浪推算精度を低下させる要因を現地観測との比較を通じ検討した.その結果,周波数スペクトルを用いた比較検証から,WAMにおいては高周波数成分のエネルギーを過大に評価する場合があることを確認した.全体エネルギーが小さい低波浪時においては,過大評価したエネルギーが相対的に大きく,結果的に波高の過大評価,周期の過小評価につながっていると考えられ,この高周波数成分のエネルギーの評価改善が低波浪時の予測精度向上につながると推察した.
  • 鈴山 勝之, 品川 円宏, 木下 徹也, 加藤 広之
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_277-I_282
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     内湾域を対象に波浪推算精度を向上させるためには外力条件となる海上風の推算精度を向上させる必要がある.現状の実務の海上風推算法としては,最も簡便で,過去多くの研究及び実務の実績がある傾度風モデルや経験的台風モデルが用いられているが,これら既往モデルでは陸上地形の影響を考慮できないため,内湾域を対象にしたとき非現実的な風場を与える場合がある.
     本研究で提案する,既往モデルの風場に陸上地形の影響を擬似的に考慮し内湾域の風場を求める方法は,既往モデルを用いて内湾域の外力の検討を行う場合の精度向上に有効である.また,波浪や高潮の予測システム等,可能な限り迅速に精度の高い結果を得たい場合には,既往モデルと本研究の補正方法を組み合わせることが有効な解決策の1つになりえる.
  • 鈴山 勝之, 島袋 均, 仲村 哲, 川満 寿幸, 加藤 広之, 西﨑 孝之, 樋口 直人
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_283-I_288
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     設計沖波の検討を行う際の海上風推算では,可能な限り高精度の平面的な海上風場を求める必要がある.近年,局地気象モデルによる気象場の計算も広まりつつあることから,様々な擾乱を対象とする必要がある設計沖波の検討を例にして傾度風モデルや経験的台風モデルとの計算特性の比較を行い,局地気象モデルの適用性について検討した.この結果,局地気象モデルが設計沖波の検討時の新たな海上風推算モデルとして活用できることが確認できた.また,設計沖波の検証方法に資することを目的として,一般的なエネルギー平衡方程式法に基づく波浪変形計算とSWANを用いた計算結果の特性を示し,SWANが新たな検証モデルとして活用できることを確認した.
  • 太田 俊紀, 松浦 知徳, 村上 智一, 下川 信也
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_289-I_294
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     冬季の富山湾では「寄り回り波」と呼ばれる高波浪が年に数回程度発生する.特に被害の大きかった2008年2月の寄り回り波では,富山港で最大有義波高9.92 m,最大有義波周期16秒を観測した.この被災を機に,寄り回り波のハインドキャストと予測についての研究が多数行われ,波浪推算モデルの精度の向上が図られている.しかし,輪島や直江津といった外洋に面した地点では精度がよい一方で,富山港および伏木港では大きな誤差が生じる.この原因はいまだ明らかになっていない.
     本研究では,その原因に対し富山湾の複雑な地形に着目し,波浪の変形としての回折と屈折について波浪エネルギー平衡モデル(SWAN)を使い数値的に調べた.その結果,適切な解像度により有義波高および有義波周期の精度向上が可能となった.
  • Suciaty FITRI, Noriaki HASHIMOTO, Masaki YOKOTA, Masaru YAMASHIRO
    2016 年 72 巻 2 号 p. I_295-I_300
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー
     Numerous efforts have been made for the improvement of nonlinear energy transfer computation. Until now, the DIA method is generally used for evaluating nonlinear energy transfer Snl in the practical wave model because of its low computational cost. Tamura et al. (2008), suggested SRIAM developed by Komatsu (1996) to be incorporated into the operational wave model. The performances of the wave model were significantly improved by using SRIAM. However, the computational cost is still 20 times larger than the existing operational wave model using DIA. Therefore, we modified SRIAM by reducing the number of the resonant configurations. It was found that 9 numbers of configurations produce the nonlinear energy transfer approximately well as compared to the original SRIAM which has 20 numbers of configurations. This method is then called as the Reduced SRIAM (R-SRIAM). The configurations of R-SRIAM show that the quasi-singular quadruplets contribute the most to the nonlinear energy transfer than the regular quadruplets. Hence, we proposed the efficient number of resonance configurations by selecting only from the quasi-singular quadruplets to be included in the calculation, which is called as the Alternative Multiple DIA (AM-DIA) method. The reduced number of the resonant configurations makes the computational method of the nonlinear energy transfer more economically acceptable.
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