抄録
阿寒湖チュウルイ湾に生息するマリモは,回転運動しながら光合成することによって,球状の集合体を形成している.成長した球状のマリモは世界でも阿寒湖でしか確認することができないことから,わが国では特別天然記念物に指定されている.マリモを回転させる外力として,風波が関係しており,阿寒湖上に適度な南風が発生すると,マリモが回転し始めることが分かっている.しかし,地球規模での環境変動の影響により,将来の風のパターンが変化し,マリモの回転運動に影響を及ぼす可能性がある.そこで本研究では,波高計と風向・風速計を設置し,風波と風の特性の把握を行った.その後,全球気候モデルを用いて将来の風のパターンを予測した.その結果,マリモの球状化に影響がある強い南風の発生頻度が将来気候において増加することが確認できた.