抄録
桟橋鉄筋コンクリート(RC)上部工は,点検結果に基づき鉄筋位置の塩化物イオン(Cl-)濃度が2.0kg/m3となる時期を予測し,対策実施時期を設定しているが,腐食理論に基づけば,環境や材料・配合等に応じて鉄筋腐食の発生条件は種々変化するはずである.本研究では,塩害劣化予測の高精度化に向けた基礎検討として,海水中に含まれるイオンが鉄筋腐食速度,およびCl-の浸透性状と細孔溶液のpHに及ぼす影響を実験的に検討した.その結果,健全なRC構造物中のpHでは,鉄筋表面のCl-濃度が3%になっても腐食電流密度は極めて小さいが,pHが低下し海水中の多種イオンが存在すると低Cl-濃度でも腐食電流密度が大きくなった.また,海水中の多種イオンの影響によりCl-の拡散と移流は抑制されることが明らかとなった.