土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
ISSN-L : 2185-4688
73 巻, 2 号
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海洋開発論文集 Vol.33(特集)
  • 三井 順, 久保田 真一, 松本 朗
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1-I_6
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震津波を契機に,防波堤や海岸堤防などの港湾・海岸構造物は設計を超える津波に対する「粘り強さ」が求められるようになり,これまで精力的に研究が行われてきた.粘り強い構造の実現のためには,想定される不安定化の要因に対して安定限界や変形量を精度良く予測する方法の開発と,それらの要因に対する効果的な対策工法の開発が重要と考えられる.本報告は今後の研究開発に寄与することを目的として,津波に対して粘り強い防波堤および海岸堤防に関して被覆工の安定性を中心に既往の研究をレビューし,技術の現状を概観したものである.
  • 宮本 順司, 鶴ヶ崎 和博, 岩本 哲也, 中瀬 仁, 松田 達也, 前田 健一
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_7-I_12
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     本研究では,ドラム型遠心載荷装置の津波水路を用いて,実スケールのマウンド内応力や浸透流場を再現したうえで,腹付工を設置した混成堤の津波越流実験を行い,複数の腹付工構造を対象に,津波時の挙動を詳しく観察するとともにマウンドの粘り強さを調べている.浸透に対するマウンドの安定にはケーソン背面直下のマウンドを腹付工により押さえ続けることが重要であることを示した.捨石による通常の腹付工は,越流洗掘に伴う捨石群のすべり崩壊により,腹付工がなくなり効果を失っていく.これに対し,袋状ユニットを用いた腹付工は,ケーソン背面のマウンドを押さえ続けることができるため,簡易な構造でも粘り強さを発揮する.袋状ユニットを法尻まで設置すると,洗掘の進行が抑えられ,マウンドは津波越流に対して最も安定することが得られた.
  • 川村 浩, 若崎 正光, 神山 豊, 千葉 忠樹
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_13-I_18
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震は,東北地方太平洋沿岸の港湾に甚大な被害を与えた.多くの防波堤が巨大な津波により被災し,防波堤の耐津波設計の考え方を見直させることとなった.防波堤の「粘り強い構造」の考え方は,発生頻度の高い津波(設計津波)を超える規模の津波に対して,防波堤が変形しつつも倒壊しないことを目指している.本稿は,津波により被災した東北港湾の防波堤災害復旧における,粘り強い構造に関する考え方に基づく対策について,先行事例である八戸港防波堤の災害復旧を中心に概観する.
  • 松居 茂久, 奥山 吉徳, 石川 淳一, 宍戸 博文, 小林 裕, 水野 俊丈, 原 文宏, 神保 正暢
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_19-I_24
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     仙台湾南部海岸では,2011年3月11日に発生した東日本大震災の津波によって被災した海岸堤防を“粘り強い構造の海岸堤防”として復旧してきた.名取川河口の北側に位置する仙台市の深沼地区海岸井土浦地区では,景観や生態系などの貴重な自然環境へ配慮し,用地,堤体材料等の制約条件から,「CSG海岸堤防」による復旧工事を進めてきた.
     本報は,深沼地区海岸井土浦地区において採用した「CSG海岸堤防」を施工する上での課題解決の過程,緩い地盤条件における設計の考え方,粒径5mm以下の砂分を最大70%含んだCSG(単位セメント量40kg/m3)の適用等の検討事例を報告するものである.
  • 大塚 夏彦, 大西 富士夫, 泉山 耕
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_25-I_30
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     2010年以降,北極海航路による東西輸送が拡大中である.当初は燃料や資源の高騰を背景とした欧州・アジア間輸送が拡大し,それが2014年に急減した後は,ロシア北極海沿岸の資源開発が駆動力となって,輸送貨物量は増大傾向にある.夏期北極海では海氷減少が進行中で,船舶の航行環境は緩和しつつあり,近年は多様な船が夏の北極海港航路を航行する様になってきた.北極海航路の輸送距離短縮により,燃料費や船体償却が低減され,ロシアの砕氷船料金などのコスト増を相殺する効果が出る.これにより,バルク貨物は輸送コスト削減が実現しやすい.当面はロシア北極海沿岸での天然資源開発に関連するバルク貨物が,北極海航路の主要貨物となって,海上輸送が拡大していくと考えられる.
  • 本村 眞澄
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_31-I_35
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     北極圏に埋蔵する石油・天然ガス資源に関しては,1970年代より多くの調査・研究が行われて来た.以来30年以上の年月を経て,近年ついに,ロシア北極圏での石油・天然ガス生産が一部で始まった.また,新たな油田発見も明らかになった.本論は,その主導的存在であるロシア北極圏の石油・天然ガス開発の最近の動向を紹介するとともに,北極圏での石油・天然ガス開発の意義について言及したものである.
  • 山口 一, 大塚 夏彦
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_36-I_41
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     地球全体に先駆けて北極域で進行する温暖化により,北極海の船舶航行環境が緩和されつつある.しかし北極海航路の利用は,環境や安全に最新の配慮を払って持続的に行われなければならない.本稿は,近年,北極海航路の持続的利用を目指して実施されてきた工学研究における研究課題への取り組みと研究成果を総括し,今後の課題について考察する.研究分野は,気象,衛星観測,海氷予測,波浪予測,着氷,船体への氷力,航路探索,経済性およびデータアーカイブを取り上げた.
海洋開発論文集 Vol.33
  • 佐藤 健彦, 宮田 正史, 竹信 正寛, 高橋 英紀
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_42-I_47
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     腹付工に関する現在の設計法には,腹付耐力を過小評価する等の課題がある.本研究では既往の研究で得られた知見を活用し,腹付工に関する新たな設計法を構築した.主な特徴は,(1)腹付耐力の算定方法を変更,(2)堤体から作用する全荷重が基礎マウンドと腹付工で分担されることを考慮,(3)腹付工の最小規定を見直した点にある.この設計法で計算される腹付工は,現行の設計法より小さな腹付形状であるが,模型実験の結果と比較すると十分安全側のものであることを確認した.また,腹付工の断面形状に関する感度分析結果から,滑動破壊に対しては腹付工の高さを高くすること,支持力破壊に対しては腹付工の幅を拡げることが効果的であることがわかった.これらの特性を把握しながら本研究の設計法を用いることで,より合理的な腹付工の設計が可能となる.
  • 関口 翔也, 高木 泰士
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_48-I_53
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     開発途上国では様々な環境問題が発現しているが,海岸侵食は最も深刻な問題の一つである.途上国においては木杭のようなローカル材料を利用した低コストの侵食対策が必要とされるが,科学的には有効性が十分に検証されておらず,最適な設計法も確立されていない.本研究では,現在急激な海岸侵食が起きているベトナム・ファンティエット海岸を対象として不規則波条件での高解像度波浪解析を行い,木杭の性能評価や力学設計に3次元流体解析が有用であるか確認した.スーパーコンピュータを用いた3次元流体解析により木杭列を詳細に再現し,消波性能や耐力を遡上軽減量や曲げ応力で簡易的に評価した.また,不規則波を3次元解析で考慮することで,規則波では十分に現れない杭背後の複雑な波の重畳や水位の増幅,水塊の滞留を評価できることを確認した.
  • 菅 章悟, 三井 順, 久保田 真一, 松本 朗
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_54-I_59
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     長周期波あるいは風波・うねりに対する港内静穏度対策として港内に消波構造物を設置する方法がある.その対策構造形式として天端が静水面に位置する没水型が提案されているが,風波・うねりに対する荷役限界波高における反射波抑制効果は明らかでない.本研究では,比較的周期が長い風波を対象とし,荷役限界波高を含む検討対象波高に対して没水型の反射波抑制効果について検討するとともに,越波に対する消波ブロックの安定性についても検討した.
     没水型は荷役限界波高を含む検討対象波高に対し,天端が静水面より高い干出型よりも反射波抑制効果が高いことがわかった.また,精度の良い所要構造物幅の算定方法を明らかにした.さらに,本研究の検討条件における消波ブロックの所要質量算定法を求めた.
  • 大熊 康平, 安田 誠宏, 松尾 祐子, 松下 紘資, 中西 敬
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_60-I_65
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     本研究では,2016年に国土技術政策総合研究所から発行された「人工リーフ被覆ブロックの波浪安定性能評価のための水理実験マニュアル」に則り,六角形の孔を有するハニカム構造被覆ブロック(ハニカム型ブロック)を用いて水理模型実験を行い,ハニカム型ブロックの波浪安定性と水深波長比h/Lが安定数Nsへ与える影響を評価した.実験の結果,ハニカム型ブロックは既存のブロックと比較して,安定数Nsが高いことが示された.また,h/Lが小さくなるほどNsは小さくなり,h/Lが安定性へ影響を及ぼすことがわかった.さらに,天端水深沖波波高比が高いとき,人工リーフ岸側における波高伝達率は,矩形ブロックよりも低い値を示した.変状連鎖を調べた結果,砕波位置を起点に変状連鎖が生じた.砕波帯内においてもハニカム型ブロックは,高い安定性を有していた.
  • 大井 邦昭, 八木 宏, 林 建二郎
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_66-I_71
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     藻場礁を構築するために海底に単独設置されるコンクリートブロックの作用流体力特性と安定性能を調べるため,水理模型実験により波浪及び一方向流れによるブロックの作用流体力(水平方向流体力Fx,鉛直方向流体力Fz,およびFx,Fzによる曲げモーメントMy)を多分力計で計測した.波浪に対するFxの評価式にモリソン式を適用し,式中の抗力係数CD,慣性力係数CMを評価した.その結果,CDKC<3程度で著しく増大し,KC>3程度でほぼ一定値になる.CMはCDよりも変化が小さいが低KC数でやや減少する傾向がみられた.Fxの周期間の最大値はこれらのCD,CMの評価値とモリソン式でほぼ精度よく算定できることを確認した.また,本実験ではブロックの被害は滑動により生じ,その時のFxは,ブロック水中重量WwFZの影響を考慮した静止摩擦力F0を超過していることを確認した.
  • 水田 洋司, 伊井 洋和, 浅田 潤一郎, 河村 裕之, 奥村 宏敬, 片桐 康博
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_72-I_77
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     本論文では,ホゾ有り直方体ブロック模型とホゾ無し直方体ブロック模型を使用し,ホゾとゴムマットが振動特性に及ぼす影響について検討した.また,ブロック模型による振動台実験の相似則が実際の状況に合致しないため,ブロック模型に適用できる相似則についても検討した.用いた模型は縮尺の異なる2種類の直立消波ブロック模型である。直方体ブロック模型の振動台実験からホゾは耐震性を向上させる効果があること,縮尺の異なる2種類の直立消波ブロック模型の振動台実験から得られた共振振動数と応答加速度の比較から,ブロック模型に適した相似則があることを確認することができた.
  • 松田 達也, 三浦 均也, 澤田 弥生
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_78-I_83
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     本稿では,上部工と杭基礎から成る有脚式構造物を対象に,波浪外力が杭基礎に与える影響について,支持地盤の不安定化に関するこれまでの知見も踏まえて,解析的に検討を行った.その結果,上部工に波力が作用する際には,沖側で引き抜き,岸側で押し込みとなる外力が杭基礎に作用するが,支持地盤の有効応力が増加傾向にあり,支持力強度を有した状態にあると考える.その後は,沖側・岸側の杭基礎ともに地中へ押し込むような外力が作用する際は,地盤表層の水圧が減少傾向になることから,地盤の支持力強度が低下し,沈下を促進される可能性があることがわかった.また,上部工の構造形式により,杭基礎に作用する外力が沖側と岸側で不均一となり,構造体にひずみを生じされる可能性があることを示唆した.
  • 西村 和真, 小林 昭男, 宇多 高明, 野志 保仁
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_84-I_89
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     2015年4月18日,館山湾南岸にある見物海岸の刀切神社前面の公園を観察した.この公園は,磯と砂浜の続く場所が埋め立てられて造成されたもので,直立護岸背後の平坦地が公園となっていた.公園の外郭をなす護岸付近を観察したところ,護岸前面に岩礁がある場所では背後地は安定であったが,岩礁と岩礁の間で沖合から護岸前面へと深みが迫る場所では護岸背後への越波が著しく,背後地では吸出しによる陥没も起きていた.本研究では,この理由を調べることを目的とし,地形測量や越波の現地観測を行うとともにVOF法による越波量の計算を行うことにより考察した.
  • 長山 昭夫, 田中 友崇, 浅野 敏之
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_90-I_95
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     2011年東北地方太平洋沖地震津波により沿岸域における大型施設内のタンク群が被災したが,遡上津波がタンク群に対してどのような影響を与えたのかについて明らかになっていない点が多い.そこで本研究は,実際の大型施設内ではタンク群が格子状または千鳥配置されている点に着目し,タンクを模した円柱を格子状に配置し,沿岸方向と岸沖方向の格子間隔を変化させた場合の円柱群への作用波圧と円柱群周辺での水位変動について数値計算による検討を行った.その結果,格子配置の内部円柱において,格子間隔の条件によっては単体円柱へ作用する波圧と同程度かまたはそれ以上の波圧が作用する可能性があることがわかった.さらに円柱が格子状に配置されていることで,単体円柱の条件下において作用波圧が小さくなる背面においても,大きな波圧が発生することを明らかにした.一方,円柱間における水位変動は円柱の格子間隔の条件により水位上昇開始が異なることがわかった.
  • 本田 隆英, 小俣 哲平, 織田 幸伸, 伊藤 一教
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_96-I_101
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     ピロティ構造は,津波に対して有効な構造形式であるが,エレベーターホールなどの1階小規模構造物に働く津波外力の評価手法は確立されておらず,既存の指針を準用して算出すると過小評価となる実験報告もある.そこで,この様な小規模構造物に働く津波波力特性の解明と,波力評価手法の提案を目的とし,平面水槽を用いた津波波力実験を実施した.実験結果から,津波波形によらず,直立壁の場合と同様に入射津波のフルード数と浸水深時系列を用いて波力の経時評価が可能であることが示された.また,1階部材が後退し,衝突した津波の流体運動が天井によって拘束される場合の津波波力は,入射津波の運動量を用いて推定可能であることが示された.
  • 有田 守, 小池 祐太朗
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_102-I_107
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     東日本大震災を受けて,設計波以上の津波外力に対して粘り強い構造物の提案が求められるようになった.津波防波堤や通常の防波堤に対しては,設計波以上の津波外力による防波堤背後の洗掘による被災を防ぐために腹付けマウンド,上部パラペットの形状,鋼管杭を設置するなどの工法が検討されている.これらの手法は設計外力以上の要求に対してどの程度のコストを許容するか,設計波以上の外力をどの程度に設定するかについての課題が考えられる.本研究は,津波防波堤の設計に際して設計波以上の津波外力に対して,通常すべてのケーソンが崩壊してしまうが,防波堤の一部を積極的に崩壊させて防波堤自身の被災を減少させて2次災害や復旧作業やコストを低減させる設計手法について実験的に検証する.
  • 竹下 修平, 笠間 清伸, 平澤 充成, 善 功企, 古川 全太郎, 八尋 祐一
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_108-I_113
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     本論文では,被覆材の重量,配置方法を変化させて,防波堤に来襲する津波を模擬した水理模型実験を行い,被覆材の被害の程度を評価した.得られた結論をまとめると以下のようになる.(1)被覆材は越流が発生する以前に被害が発生した.これは水位差による浸透力のために被害が発生したと考えられる.(2)実験結果から表層すべりに対して0.29 Nの被覆材は10 %以上だったが,0.38 Nは3.5 %以下となった.このことから0.29 Nと0.38 Nの間に被覆材が安定する限界の重量があると考えられる.(3)被覆材の配置方法を変化させた結果,正方形配置より三角形配置の方が安定していた.(4)表層すべりに対する安全率を定義した.これによって被覆材の正方形配置と三角形配置の安全率を比較すると三角形配置の方が安全となり,実験結果と一致するため,その被害の傾向は表せた.
  • 中村 友昭, 日比野 加奈, 趙 容桓, 水谷 法美
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_114-I_119
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     越流した津波により海岸堤防裏法尻周辺に形成される流動場の特徴とその形成条件を考究し,流動場の形成条件を踏まえた洗掘対策の有効性を検証するため,実スケールの数値解析を実施した.その結果,裏法を流下してきた流れが跳水の下に潜り込む潜り流れと保護工岸側端で剥離した流れの下に洗掘孔の表面に沿って上流に戻る流れが形成される時計回りの渦の2種類の流動場が形成されることを確認した.また,潜り流れは保護工岸側端での底面流速が下向きに近い時に形成されることが判明し,洗掘深と洗掘幅を増加させる潜り流れを形成させないようにするためには,底面流速の向きを水平に近づけることの重要性を示した.裏法を急勾配にして保護工を設置する対策には,底面流速の向きを水平に近づけ,保護工岸側端近傍の洗掘を抑える効果があることを示した.
  • 高橋 重雄, 下迫 健一郎, 富田 孝史, 河合 弘泰, 高山 知司
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_120-I_125
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     東日本大震災では,最悪のシナリオを考えることが重要であることを学び,震災後は,二つの津波レベル,「防災レベル(レベル1)」と「最悪のレベル(レベル2)」を考えるようになっている.しかしながら最近では,最悪のレベルの津波が次第に大きくなり,地域によっては,避難しか考えなくなっていると思われる.もちろん,沿岸域の強靭化のためには,津波の死者をゼロとすることが,最も大切であり,当然ともいえる.しかしながら,強靭化のためには,被害をできるだけ少なくする「減災」だけでなく,早期復旧が重要である.減災,縮災を着実に進めるためには,その制度を明示しなくてはならない. 本報告では,三つのレベルによる津波減災・縮災の制度を提案する.
  • 田上 剛, 疋田 大輔, 村上 啓介, 辻尾 大樹, 熊谷 健蔵
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_126-I_131
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     東日本大震災を契機として,港湾の防護施設,特に防波堤の津波対策の重要性が認識されている.大規模な津波が発生するポテンシャルを有している,宮崎県の重要港湾・細島港においても例外ではない.本研究は,細島港の防波堤を対象に,設計津波および最大クラスの津波に対して耐津波対策を検討し,水理模型実験を実施して,粘り強い構造化を図ることを目的としている.本研究では,津波シミュレーションによる最大流速を用いたイスバッシュ式での必要質量は,マウンド勾配を考慮すると著しく大きくなり,勾配を考慮しない場合に水理模型実験結果と概ね整合した.水理模型実験結果からアスファルトマットによるブロックの安定性向上の効果を確認した.被覆ブロック質量とマット有無等の対策の組合せから,当該防波堤の最適な対策案を選定した.
  • 森安 俊介, 及川 森, 久保田 一男, 妙中 真治, 菊池 喜昭, 兵動 太一, 引地 宏陽
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_132-I_137
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     巨大地震の発生地点によっては,防波堤は地震被害を受けた後,津波を被る可能性が考えられる.このような地震津波複合災害に対して,防波堤は防護機能を保持することが求められる.本論文では地震応答解析及び津波解析により,鋼杭で補強した重力式混成提の挙動を推定した.その結果,地震時には鋼杭によって海底地盤の変形を抑え,防波堤の沈下を抑制する効果がみられた.防波堤の変形状態を引き継いだ津波解析では,地震被害を受けず津波のみ作用する場合とほぼ変わらない抵抗力を保持することが推定された.これらの結果より,根入れされた鋼杭が地震及び津波それぞれに有効に機能することが示唆された.
  • 藤原 覚太, 高浜 宏輔, 山中 雄太, 八嶋 厚
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_138-I_143
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     地震や津波に対する減災技術として,地盤が液状化しても堤防高さを保ち津波が到来しても全壊に至らない「粘り強い堤防」が必要とされている.著者らは,海岸堤防の補強工法として,既設堤防の両法肩から鋼矢板を鉛直に挿入し,さらに鋼矢板と直角方向に鋼矢板(以下,隔壁)を等間隔で設置する工法を提案しており,地震時における堤防の変形や損傷が大きく抑制されることを確認した.しかしながら既往の研究は,本来は鋼矢板が組み合わさった3次元構造である本構造を,堤防延長方向に同一断面が連続すると仮定した2次元解析モデルを用いて検討している.そこで本研究では,堤防延長方向の挙動を考慮するため,隔壁の設置間隔に着目した3次元液状化解析を実施した.その結果,隔壁の設置間隔が大きくなることで二重鋼矢板などの構造部材は3次元的に挙動し,矢板に囲まれた地盤内の過剰間隙水圧が低減するといった,従来の2次元解析では追跡できなかった新たな挙動を確認した.
  • 井手 喜彦, 山上 澪, 山城 賢, 橋本 典明
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_144-I_149
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     台風時高潮数値シミュレーションの外力として使用される風場は,よく経験的台風モデルあるいは局地気象モデルによって作成される.経験的台風モデルは,計算コストが低いが,地形の影響を考慮できず計算精度が低い.一方,局地気象モデルは地形の影響を考慮でき高精度な結果を得ることができるが,計算コストが高く,仮想的な台風の作成は難しい.そこで,経験的台風モデルによって求めた風場を局地気象モデルの結果と比較し補正することで,局地気象モデルより低コストで経験的台風モデルより高精度な風場を得るための補正法の構築を試みた.構築した補正法を台風モデルに適用した結果,地形の影響が反映された高精度な風場を得ることができた.さらに海洋流動モデルを用いた高潮推算を行い,構築した補正法により推算の精度が向上することを確認した.
  • 野中 浩一, 山口 正隆, 宇都宮 好博, 畑田 佳男, 日野 幹雄, 井内 国光
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_150-I_155
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     気象庁により公表されているMSM(Meso Scale Model)に基づく1時間間隔風速・風向資料と,韓国の全沿岸沖合に展開されている9基の海象気象ブイ地点で取得された4~13年間の1時間間隔風速・風向観測資料より得た各種の風速統計量(風速の上位平均値,全資料の平均値と標準偏差)や風速・風向の誤差指標(相関係数,相関直線の勾配値,2乗平均平方根誤差)を全地点で検討することによって,1)MSM風資料は全体としては観測風資料とよく符合すること,2)領域別では東岸・南岸沖合地点でMSM風速が観測風速よりやや小さく,西岸沖合地点でやや大きいこと,3)MSM風の精度は東岸・南岸沖合地点より西岸沖合地点で若干低くなる傾向にあること,4)両資料に基づく平均風速は東岸・南岸沖合地点より西岸沖合地点で1m/s程度低いこと,を示した.
  • 平山 克也, 中村 聡孝, 伍井 稔
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_156-I_161
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     浅海変形後に施設に作用する波浪諸元は潮位の影響を強く受けるため,台風時の高潮に伴う高波による作用外力を検討することは設計上重要と思われる.そこで本研究では,高潮と高波の同時生起が確認できる観測記録として外洋に面した港湾での潮位記録に着目し,高潮偏差から波による平均水位上昇分を差し引いた気象潮,及び有意な高潮偏差が生じるときの高波の発生確率をそれぞれ推定することにより,同じ再現期間に対する高潮偏差と有義波高の期待値を算定する手法について検討した.この結果,ある再現期間に対する高潮に伴う高波の確率波高は高波のみに着目した一般的な確率波高に比べて減少すること等が明らかとなった.また,このときの高潮偏差は,高潮に伴う高波に対する平均水位上昇量を気象潮の期待値に加えて推定することを提案した.
  • Shinwoong KIM, Tomoaki NAKAMURA, Yonghwan CHO, Norimi MIZUTANI
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_162-I_167
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     A hindcast wave model was built using the SWAN model to estimate wave fields in front of the Ida beach. To verify its accuracy, estimated hindcast results were compared with NOWPHAS wave data. From numerical results, it was found that the hindcast results were in good agreement in terms of the significant wave height. Although the mean wave period and direction had lower statistical quality than the significant wave height, their tendency was estimated reasonably well. Using hindcasted wave data, the characteristics of wave fields at the Ida beach and their relationship with Owase's buoy data were analyzed. The significant wave height at Ida was smaller than that at Owase. However, the significant wave height with 2 to 4 m in the east direction was similar between Ida and Owase. Finally, the relationship between wave fields and beach profile change under high wave conditions was analyzed using the hindcasted wave data and DEM data. From these results, it was shown that the hindcasted wave data at the Ida beach can be used to assess the characteristics of beach profile change more appropriately than Owase's buoy data.
  • Le Tuan ANH, Hiroshi TAKAGI, Nguyen Danh THAO, Miguel ESTEBAN
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_168-I_173
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     Typhoon and storm surge are considered the biggest hazards that threaten coastal communities in Vietnam. The possibility of a large typhoon taking place in Southern Vietnam is considerably smaller than in the northern and central parts of the country. However, this does not necessarily mean that Southern Vietnam is less vulnerable against typhoons. In this paper the authors tried to analyze typhoon track data during the last six decades to analyze how frequently typhoons made landfall on southern coast, particularly focusing on the Mekong Delta. The analysis reveals that the chance of typhoons making landfall is not negligible, although the frequency is substantially lower than that in Northern or Central Vietnam. A questionnaire survey was also carried out to investigate disaster awareness amongst local inhabitants in the Mekong Delta. To do this, the authors visited many small coastal towns and the regional capital, Can Tho city, whose population is well over 1.2 million. The events of the worst storm in recent times, severe tropical storm Linda in late October 1997, which claimed more than 3,000 lives and caused severe damage in the delta and the remote islands, were also investigated by conducting interviews with local people who directly experienced the typhoon. The key objective of this paper is thus to understand the awareness and concern about typhoons and storm surges in the delta. The results show that the local population tend to have a high degree of awareness about the dangers posed by those events, contrary to the authors' original hypothesis. However, it is also noticeable that it is necessary to improve preparedness against coastal disasters in Vietnam, especially in term of the education of the younger generation, and the elaboration of a mitigation plan.
  • 武田 真典, 長谷川 巌, 小畠 大典, 本田 陽一, 岡安 章夫, 渡邉 浩二, 西部 博秀, 藪木 昭彦
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_174-I_179
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     本研究では,躍層を伴う成層条件でのマウンド礁による鉛直混合について調べることを目的に,水理模型実験および数値計算を行った.水理模型実験の結果より,躍層を伴う成層流の構造は,既往知見と同様に内部フルード数Frに依存しており,Fr<1の条件では,内部波が発生し,マウンド礁模型の直上近くまたはその下流側の躍層付近で混合が生じる一方,Fr>1の条件では,内部波の発生は見られないものの,マウンド礁模型の下流側の躍層部で混合が生じることが明らかとなった.さらに,実験条件における3次元LESによる結果と比較を行い,数値計算により実験結果が概ね再現できることが確認できた.
  • 白木 喜章, 片山 理恵, 柴木 秀之, 普天間 朝好, 桑江 隆, 崎枝 正輝
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_180-I_185
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     沖縄県では,2012年から2014年の3ヵ年にわたる流況モデルの開発プロジェクトにより,外洋域からサンゴ礁海域までを一体的に計算できる流況シミュレーションモデルを開発した.さらに,この流況モデルにおける外力条件の設定から計算実行,計算結果の描画までの一連の動作を,パーソナルコンピュータによる簡易なマウス操作で実行できるようにシステム化を行い汎用化を目指している.
     本報告では,このシステムの機能や計算結果を紹介するとともに,システムによる現地観測結果を対象にした再現計算結果について示す.
  • 犬飼 直之, 櫻井 龍亮, 山本 浩
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_186-I_191
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     離岸流は見極めが困難である事が水難事故発生の原因でもある.新潟県内では離岸堤付近でも水難事故が発生していることから,離岸堤付近で発生する離岸流の流況及び発生要因を把握する事を目的に,現地調査及び数値計算を行った.まず,海上保安本部及び新聞記事データベースより得た新潟県内の水難事故情報より,離岸堤付近で発生した離岸流事故を抽出した.次に新潟市五十嵐浜で海面着色剤を用いて離岸流を可視化し,UAVで上空から撮影して離岸流発生状況を把握した.複数回の調査より,波浪条件での離岸流の発生状況の違いを把握した.その後数値実験を行い波浪条件の変化による離岸流発生状況の変化を把握した.これにより,離岸堤付近では離岸流は砂浜のカスプ地形の両側で発生し,波高・周期の変化により合流叉は別々の挙動を示す事を確認した.
  • 宇多 高明, 石川 仁憲, 石野 巧, 鈴木 悟, 岡本 光永, 芹沢 真澄, 宮原 志帆
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_192-I_197
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     富士海岸の沼川第二放水路では,暗渠型放水路からセットバック型放水路への改修が計画された.この計画の実施にあたってはセットバック型に改修することによる周辺海岸への影響を予め定量的に予測する必要がある.そこで本研究では,昭和放水路から新放水路計画地点までの海岸を対象として,粒径を考慮した等深線変化モデルを用いて沼川第二放水路をセットバック型に改修した場合の周辺海岸への影響予測を行った.その結果,セットバック型の先端位置(汀線から吐口までの距離)や既設放水路先端部の残置に関わらず,沼川第二放水路の上手側約1.5 kmの区域で侵食が起こり,その場合汀線は10年後までに最大15 m後退することが分かった.
  • 犬飼 直之, Neam KOPY, Chamnab EM
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_198-I_203
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     カンボジアの海岸線は総延長約500Km程度である.近年では多数の開発計画に対し環境影響評価が義務付けられるようになったが,その為には流動機構および水質環境を把握する必要がある.本研究では,観測情報がないカンボジア南西部の沿岸域で複数年にわたり水深測量や気象観測,水質・水位観測などの現地観測を実施しており,数値実験とあわせて海域の地形情報の作成や,潮汐流や吹送流,波浪などの流動機構および水環境の把握を試みている.その結果,この海域では潮汐流と吹送流が卓越していることがわかった.また,海岸付近での季節風の特性を把握し,潮位推算により潮位を把握可能なことを確認した.この情報を用いて流れの数値シミュレーションを実施し,この海域の流動機構を把握した.
  • 渡辺 一也, 遠野 雄樹
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_204-I_209
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     東日本大震災の発生を受けて,従来想定よりもかなり巨大な津波が来襲することが予測されるようになっている.本研究では,浮体式津波避難用シェルターの使用を含めたハイブリットな避難に注目した.既往の研究では,シェルターの挙動は大きく3パターンに分けられることが分かっている.
     本研究ではフルード数によるデータの整理とシェルターにかかる波力の計測をし,シェルターを使った避難に対する評価を行った.その結果,写真解析と挙動解析からはパターン1が安定的であり,パターン2,3は不安定であった.しかし,津波によるシェルターの直接的な破壊という観点で考えると,波力からパターン1は非常に大きな値を示している.また,パターン2,3は比較的小さい値を示している.これらのことから今後最適な設置位置の検討が重要であると考えられる.
  • 渡辺 一也, 藤井 龍也
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_210-I_215
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     津波からの生存率の向上を図る手法として従来の高所避難と浮体式津波避難シェルターを組み合わせたハイブリットな避難手法がある.既往の研究では低地や建物上に設置した場合におけるシェルターの基礎的な運動特性が明らかにされている.しかし,それらは津波の第一波目を対象としたものが多く,そのため,必ずしも最大波を対象としていない可能性がある.
     そこで,本研究では,今までとは異なり,第二波目以降が最大津波となる場合を想定した水理実験を行い,シェルターの挙動や波高についての検討を行った.その結果,シェルターの挙動を6パターンに分類し,静水深の変化がシェルターの挙動に大きく関わっていることが確認できた.同じ条件でも異なる挙動を示す場合もあったため,今後は,波高,流速・波力などと合わせた解析を行っていく必要がある.
  • 秦 吉弥, 山内 政輝, 小山 真紀, 鍬田 泰子, 中嶋 唯貴
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_216-I_221
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     沖縄県石垣島の市街地では,石垣島南方沖の想定地震による津波の早期来襲が予想されており,1771年八重山地震による巨大津波の痕跡も残されている.本稿では,まず,石垣市街地において常時微動計測を高密度に実施し,地盤震動特性を評価した.次に,地盤震動特性を考慮した想定地震による強震動シミュレーションを実施し,強震動作用中の避難困難時間を評価した.さらに,強震動評価地点から周辺の津波避難施設までの歩行実験を行い,避難所要時間を評価した.最後に,津波来襲時間から避難困難時間ならびに避難所要時間を差し引くことによって,対象地域における津波避難困難区域の評価を行った.
  • 山内 政輝, 秦 吉弥, 鍬田 泰子, 小山 真紀, 中嶋 唯貴
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_222-I_227
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     山形県酒田市から北西に約40kmの日本海に浮かぶ飛島は,想定地震が発生した際,約五分で巨大津波の来襲が予想されている.そこで本稿では,まず,島内の津波来襲予想地域において常時微動計測を高密度に実施し,得られた記録に基づき地盤震動特性を評価した.次に,評価した地盤震動特性とアスペリティモデルを組合せた強震波形計算を実施し,強震動作用中の避難困難時間を算定した.最後に,津波来襲時間と避難困難時間の関係性を踏まえて,強震動の作用が津波避難に及ぼす影響について言及した.
  • 野島 和也, 桜庭 雅明
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_228-I_233
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     本研究では,津波避難ビル等の建物外部・内部の津波の来襲・侵入状況を把握・体験するために,疑似体験システムを構築し,建物の特性の違いによる検証を行った.津波来襲の計算には3次元のVOF法に基づく自由表面流れの計算をOpenFOAMのソルバを用いて行った.建物形状は開口部の占有率を変化させて2種類の津波来襲条件を設定し,建物が受けるせり上がりや把握および建物内の津波侵入状況を比較した.また,ヘッドマウントディスプレイ型のバーチャルリアリティシステムを用いて建物内部・外部での津波来襲が体験できるようにした.それぞれの津波・開口部の条件に対して建物内の各階における津波の浸水状況の比較を疑似体験として実施した.
  • 臼井 彰宏, 青木 伸一, 川崎 浩司
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_234-I_239
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震以降,粘り強い海岸・港湾構造物の開発・研究が行われており,その効果について実験的に検討する必要がある.著者らが提案した自走式造波装置は津波・高潮の実験を効率的に行うために提案したものであるが,任意波形の造波については検討していなかった.本研究では,体積力型IB法を導入した数値波動水槽CADMAS-SURF/3Dを用いて自走式造波装置による任意波形及び任意越流水深の実現可能性について検討を行った.その結果,次の知見を得た.1)浅水波理論による波面速度及び水粒子速度を用いて波変形を考慮すること,および造波板移動時間を修正することで,任意地点において任意波形の水位変動を得ることが出来た.2)構造物上での任意越流水深については,構造物による反射率及び越流による水位低下を考慮することで,実現可能であることが確かめられた.
  • 松田 信彦, 千田 優, 岩本 浩明, 江口 三希子, 武田 将英
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_240-I_245
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     東日本大震災以降,巨大津波による破壊メカニズムや対策を検証するために,多様な津波を再現する実験装置の開発が進められている.本研究は電動ゲートを使った新しい津波造波装置を開発した.この装置は一般的な水路を使って多様なタイプの津波を再現できるのが特徴である.その造波特性について調べた結果,分散波を含んだ段波を造波できることが分かった.次に,段波波高と分散波第1波の波高の制御方法について検討した.段波波高については,造波に必要なゲート開度を求めることができる簡易モデルを作成した.分散波の波高についてはゲートからの距離によって変わることから,T-STOCを用いてゲートからの距離と波高の関係について計算し,目標波高に一致する場所を求めることで波高を調整できる.
  • 安藤 圭, 鈴木 高二朗
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_246-I_251
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     津波が直立壁等の構造物に衝突し,轟音と共に飛沫が大きく打ち上がることで,その威力は感覚的に分かるものの,これまで飛沫が大きく打ち上がる条件や波力との関係は不明だった.
     本研究では,直立壁模型に孤立波を作用させ,飛沫の打ち上げ高と発生量,直立壁模型に発生した波圧を測定した.そして,造波板のストロークを変化させて孤立波の砕波位置をずらし,孤立波が直立壁模型に衝突する時の砕波状態を調べた.その結果,砕波力がWagner型,Bagnold型,遷移型の3種類に分類され,飛沫の打ち上げ高さと波圧が変化することが明らかになった.
  • 中村 彰吾, 木村 克俊, 越智 聖志
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_252-I_257
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     緩傾斜護岸の背後に位置する道路においては,高波時の越波により流木が打ち上げられ,通行障害が発生することがある.本研究では,現地調査を実施し,緩傾斜護岸における越波による流木の打ち上げ状況を明らかにした.水理模型実験では,縮尺1/40で現地の護岸と流木を再現し,不規則波を用いて流木の打ち上げ特性を調べた.実験では,3種類の周期条件に対して越波流量と流木の打ち上げ率の関係を明らかにするとともに,最も長い周期に対して流木の打ち上げに及ぼす流木の長さ,太さおよび比重の影響を調べた.流木の打ち上げ対策として,護岸前面の消波工の嵩上げによる効果を示した.さらに,当該道路の路肩に透過型フェンスを設置した状況を縮尺1/5の大型実験により再現し,流木を伴う流れによって透過型フェンスに働く力を評価した.
  • 村上 啓介, 都地 亮博, 川原 永萌, 荻野 啓, 真木 大介
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_258-I_263
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     護岸断面の設計では,沖波や現場の地形が主要な設計条件となるが,施工地点の風の条件(風速や風向など)は含まない.強い海風の影響を受ける沿岸部では,護岸前面で打ち上げられた水塊の一部が風の影響を受け,背後地に輸送されて越波量と飛沫量が無風時に比べて増大することは容易に想像できる.沿岸部の高度土地利用をより一層推進するためには,護岸越波量に及ぼす風の影響を定量的に評価する技術が必要と考える.風浪場における護岸越波量や飛沫輸送量に関する研究は散見されるが,風による越波や飛沫の増加量を適切に見積もるには至っていない.本研究では,風速の影響を考慮に含め,護岸越波量を適正に評価する手法の構築を目標に,護岸越波量に及ぼす風速の影響を水理模型実験により評価することを目的とした.また,強風下におけるフレア型護岸と消波工被覆護岸の越波量の増加特性を比較し,強風下におけるフレア型護岸の越波低減対策工の効果を評価した.
  • 佐々 真志, 山﨑 浩之, 小林 孝彰
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_264-I_269
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     本研究では,地震動波形の不規則性と継続時間の影響を考慮した粒度とN値による液状化予測判定法を国内外の多様な液状化予測判定チャートに活用しうるように一般化した.そして,同予測判定結果を東北地方太平洋沖地震における仙台港, 小名浜港, 千葉港, 羽田空港, 及び浦安での被災事例に照らして詳しく検証した結果,レベル2地震動に対する本手法の妥当性及び有効性を明らかにした.又,連続した地震動作用下における液状化予測判定法の適用指針を示した.
  • 小林 孝彰, 佐々 真志, 渡辺 啓太
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_270-I_275
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     本震で発生した過剰間隙水圧が残留する地盤が,余震を受けて液状化する状況を想定し,余震外力の特性化を目的として応力制御による非排水繰り返し中空ねじりせん断試験を行った.予め過剰間隙水圧を上昇させた供試体に性質の異なる地震波(2016年熊本地震,2009年駿河湾地震,2011年東北地方太平洋沖地震)を与え,本震・余震作用による液状化を再現して結果を比較した.港湾の基準で用いられる有効波数の概念により,地震動の波形と継続時間の影響を考慮して余震外力を特性化することで,試験結果における液状化の有無を適切に予測可能であることを示した.
  • 佐々 真志, 山﨑 浩之, 林 健太郎, 吉岡 保弘
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_276-I_281
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     本研究では,人工排水材(ドレーン)を用いた新たな液状化被害抑止工法の開発に資することを目的として,液状化伝播並びにボイリング被害抑止工法に関する一連の実験と解析を行った. その結果,ドレーンの敷設により,液状化の発生は許容しつつも,ドレーン下端上方において液状化域の進展・伝播を抑制することによって,地盤内の流動を防ぎ,ひいては,ボイリングの発生を有効に抑制しうることを初めて明らかにした. 今後は,本工法の設計法を構築・確立していくことが期待される.
  • 竹之内 寛至, 佐々 真志, 山崎 浩之, 足立 雅樹, 高田 圭太, 岡見 強, 金子 誓
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_282-I_287
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     CPG工法は,注入管より低流動性モルタルを地盤に静的に圧入して地盤改良する密度増大工法の一つで,液状化対策として様々な空港・港湾で適用されている.しかし施工にともない発生する地盤隆起が問題となる場合があり,その抑制が課題である.本研究では,圧入したモルタル中に,注入管を上下に往復させて地盤隆起を抑制させる,アップダウン施工(U/D施工)について,実機種および各種パラメータを変化させて実大規模の現場実証実験を行った.その結果,開発したU/D施工は当該現場で施工が可能であり,従来のCPG工法と比較して当該地盤の隆起量を最大で90 %以上低減した.また,提案する等価改良率の概念・定量化法を用いることで,U/D施工による地盤の隆起量および密度増加量を予測することができ,従来のCPG工法と同様の設計が可能であることを示した.
  • 秋本 哲平, 熊谷 隆宏, 福田 守芳, 古川園 健朗
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_288-I_293
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発生した津波により,福島第一原子力発電所は大きな被害を受け,高濃度の放射性物質を含む汚染水が漏洩した影響等により,港湾内海底土から放射性物質が検出された.放射性物質を含む海底土が巻き上がり,港湾外へ拡散することが懸念されたため,固化処理土による海底土被覆を行った.2012年度に第1期工事として72,600m2を被覆し,2014年度から第2期工事として,180,600m2を被覆した.第2期工事では,波浪条件が厳しい港口部を含んでいたことから,被覆土には早期強度が求められたため,砂質土を主材とする固化処理土を選定した.砂質土を主材とする固化処理土の課題であった水中打設時の材料分離は,特殊添加剤や打設治具を開発することで解決し,港湾内全域を被覆することができた.
  • 三好 俊康, 田中 智宏, 葛 拓造, 永尾 直也, 渡部 要一
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_294-I_299
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     管理型海面廃棄物処分場に適用される鉛直壁には護岸および遮水工としての機能が要求され,遮水性能とともに遮水工の損傷や欠陥等の万が一の事態に備えたフェイルセーフ機能の付加が関係法令や技術マニュアルにおいて要求されている.これまでに筆者らのグループは開発した土質系遮水材充填箱形鋼矢板壁を適用した実現場において,箱形鋼矢板の施工性や遮水性能評価方法について検討してきた.箱形鋼矢板壁は,その継手部の遮水性能を検査できるという,従来の鉛直壁構造には無かった特長を有するものである.本研究は,継手部遮水室内に土質系遮水材を充填する従来のフェイルセーフに加えて,遮水工のさらなる信頼性向上に向け,継手部からの漏水リスク低減を目的とした幅広箱形鋼矢板ならびに遮水工補修方法の開発を行うことで得られた知見について述べるものである.
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