抄録
バリア-アイランド状の細長い砂州地形から形成された龍神池は,災害の歴史的価値を含み,多面的機能を有する自然豊かなインレット状の海岸地形を呈する.近年,龍神池ではシジミが激減するなど環境変化が急激に生じたため,海水流入量を調整するための堰が水路に設置された.その後,閉鎖的な環境となり,富栄養化や成層化の進行によって,水質環境の悪化が指摘されるようになった.そこで,現地調査を実施した結果,龍神池の底質は中砂でありシジミの生息環境ではあるものの,水質は高塩状況が持続しているため生息環境に適していないと考えられる.海水交換は潮汐に伴う大潮時のみ生じ,海水交換量としては最大でも水容量の9%程度であることから,現状では海水交換が促進されず水質環境の悪化が懸念される.