土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
ISSN-L : 2185-4688
74 巻, 2 号
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海洋開発論文集 Vol.34(特集)
  • 昇 悟志, 橋田 雅也, 萩原 照通, 富永 柚香, 山崎 真史, 前川 裕之
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_1-I_6
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     消波工の設計や施工の効率化・高度化を目的に3Dデータの活用方法を検討した.消波工の設計では3Dデータから体積を直接自動計算する手法は従来の平均断面法より計算時間を短縮でき,数量計算の効率化が図られた.また,3Dプリンタの活用によりブロックの噛み合わせまで考慮した数量評価が可能になる.消波工の施工では3DプリンタとICTを活用した据付システムで潜水士の負荷が軽減され安全面が向上し,誘導時間の短縮も図られてブロック据付が効率化した.点群にブロック形状のソリッドモデルを自動配置させる手法を検証した結果,短時間で且つ高精度で自動配置が可能であることを確認した.この手法によりブロック配列まで考慮した3D CADモデルが作成でき,設計や施工の更なる効率化・高度化が期待できる.
  • 道前 武尊, Sivaranjani JAYAPRASAD, 樋渡 和朗, 琴浦 毅, 帯田 俊司, 西畑 剛, 平山 達也
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_7-I_12
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     港湾施設の中で建設後50年を経過するものが増加するなか,水中部の点検を実施する潜水士の数は年々減少傾向にある.今後,定常的に発生する港湾施設の点検に対し,潜水士による点検の代替手法として広域かつ短時間に水中部を計測可能な技術を確立することが必要不可欠である.本研究の技術は計測機器と潜水士を併用して運用し,点検の効率化を目指すため計測機器のリアルタイム性が重要となる.本稿では,水中部をリアルタイムに可視化可能な水中ソナーを用いた護岸計測実験を実施し,計測結果と潜水士による実測結果を比較することでリアルタイム水中ソナーを使用した際の計測精度を確認するとともに,港湾施設の点検診断ガイドラインに定められた点検項目の中で代替可能な項目について確認したことを報告する.
  • 網野 貴彦, 加藤 絵万, 山路 徹, 星野 雅彦
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_13-I_18
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     本稿では,桟橋に対する点検診断の補助ツールとして導入を試行しているセンサモニタリングの開発状況について報告する.桟橋は複数の鋼およびコンクリート部材で構成されるが,著者らはインターネット技術を利用してこれら部材の劣化進行の把握および評価に必要な各種センサの継続的な計測情報と専門技術者の状況判断を港湾管理者に提供する支援システムを開発した.また,実桟橋または実海洋環境に暴露した供試体において長期的なセンサモニタリングを実施し,支援システムの有効性を検討した.その結果,劣化の早期発見においてセンサモニタリングは有効であるが,センサ情報には気温変動等の影響が含まれるため,センサ情報を正しく理解するにはセンサの特徴や構造物の変状に熟知した専門技術者の関与が重要であることを確認した.さらに,港湾管理者や専門技術者がセンサ情報を一元管理できる本支援システムの利用は,桟橋の予防保全型の維持管理の遂行に有効なツールになり得る可能性を示した.
  • 安部 智久
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_19-I_24
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     北極海航路(NSR: Northern Sea Route)の利用により欧州アジア間の輸送距離が短縮されることから,物流分野において効率化が期待されている.コンテナ輸送については,従来のスエズ運河経由による海上輸送と航空輸送との中間的なサービスとなり得る.本研究では,現状の北極海航路の航行実態や輸送サービス(時間,コスト)について実績データ等から評価を行ったうえで,その利点である輸送時間短縮による効果を踏まえた北極海航路の利用形態や既存の輸送経路に対する優位性などについて,荷主の視点から考察を行った.
  • 大塚 夏彦, Xiaoyang LI, 泉山 耕
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_25-I_30
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     北極海航路を航行する船舶の航跡・航行速度を衛星AISにて取得し,氷海中における実際の航行実態を調査した.同時に,データ同化システムによる毎日の平均海氷密接度および海氷厚さから,各船が航行した位置の氷況を求め,氷海中の航行難易度を示す指標であるアイスインデックスを算出し,航行速度記録と比較分析を行った.この結果,氷海中での航行可能な速度を,アイスインデックスを用いて評価できる可能性のある事を示した.
海洋開発論文集 Vol.34
  • 佐藤 涼祐, 木村 克俊, 横道 立樹, 名越 隆雄
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_31-I_36
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     急斜面に続くリーフ地形上に位置するM島のK漁港において2009年に発生した高波被害事例について分析するとともに,その状況を縮尺1/50の不規則波を用いた2次元水理模型実験により再現した.その結果,護岸背後のエプロン部に陥没被害が生じた際の越波流量は1.0×10-2 m3/m/sとなった.消波ブロックについては,巻き波砕波の作用による移動のメカニズムを明らかにするとともに,波数と被災度の関係を示した.勾配1/7の条件に対して波数3000波で被災度1.0を基準として有義波高と安定限界質量の関係を求め,リーフ幅に対応したハドソン式の補正係数を提案した.さらに,改良工法として天端の嵩上による越波低減効果を明らかにするとともに,現状の20 t型消波ブロックに代わって80 t型消波ブロックを用いる必要があることを示した.
  • 村上 啓介, 山下 真奈, 荒木 豪, 真木 大介, 荻野 啓
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_37-I_42
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     護岸の設計では,設計波や海底勾配,背後の土地利用等が主要な条件となるが,風速や風向に関するパラメータは設計条件に含まれない.一方で,越波被害は強風が作用する場で発生する場合が多く,護岸越波に対する風の影響を定量的に評価する技術は,沿岸域の高度な土地利用を推進する上で重要と考える.本研究は,直立護岸,直立消波護岸,フレア型護岸を対象に,不規則波に含まれる個々波の越波量に対する風速の影響を水理模型実験により評価した.個々波の越波量は風速に伴い増大する傾向を示し,越波量の発生頻度,平均越波量,有義越波量の風速に対する特性は,護岸断面形状と波浪条件で異なることを確認した.また,風速をパラメータに含む越波量比を求める式を提案し,計算結果が実験結果を概ね再現することを確認した.
  • 松田 達也, 高橋 浩司, 阿部 和樹, 川瀬 良司, 前田 健一
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_43-I_48
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     北海道では,冬期間における高潮や波浪の発生に伴い,越波被害が発生している.一部の地域においては,冬期間のみ暫定的に仮設越波柵を設置している箇所も見受けられるが,仮設対策を施しても越波被害が発生している状況から,恒久的な越波対策の早期実現が急務となっている.本研究では,恒久的な越波対策を検討するためにも,越波被害が発生しているサイトにおける越波特性を数値解析により明らかとすることを試みた.特に,護岸前面に設置された消波工が越波特性に与える影響について考察した.消波工を有する場合,累積越波流量を低減させる効果があるが,波浪条件によっては波を打ち上げ,越波高が高くなる可能性があり,海底勾配や消波工,波浪条件によって単調に変化しないことがわかった.
  • 塩畑 英俊, 宇山 友理, 髙橋 研也, 西畑 剛, 山下 徹, 三好 俊康, 林 規夫, 大久保 泰宏
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_49-I_54
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     海岸工事において,波浪が低減された所望の作業空間を確保するとともに,当該作業空間に供する重機等の足場を海上に確保するため,バットレス型消波構造物を開発した.L型壁構造であるバットレスを築堤内に埋設し,石材の重量および摩擦力により滑動・転倒に対して安定させた土留め構造とすることで,築堤側面が鉛直に切り立ち重機足場を作業空間に近接した位置に築造することができるものである.このバットレス型消波構造物の設計に資するため,水理模型実験を実施して基本的な水理性能を確認した.
     その結果,底版梁と石材との噛み合わせ効果が働いていること,揚圧力が非常に小さいこと,最大同時波圧作用時においては合田式の水平波力の低減率λを準用できることが明らかとなった.また,越波流量の推定方法や構造物の破壊モードについても示した.
  • 宇野 州彦, 岩波 光保
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_55-I_60
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     桟橋は港湾構造物の中でも特に塩害に対して厳しい環境に置かれており,より適切な維持管理を行っていかなければならないが,劣化した桟橋の残存耐力や耐震性能に関する研究は少ない.また桟橋の残存耐力を評価する際には詳細定期点検診断が必要となり多大なコストや時間を要するため,特に民間事業者においては比較的簡易な耐力評価手法が求められている.
     そこで本研究では,各劣化度に応じた試験体の載荷実験を行うことで各劣化度と部材の残存耐力の関係性を明らかにし,その結果を汎用の構造解析ソフトに導入する簡易な残存耐力評価手法を提案する.実桟橋を例に劣化度判定結果を構造解析モデルに反映することで,地震動により損傷が生じる範囲やその程度を比較的容易にかつ定量的に示すことができた.
  • 内藤 了二, 鮫島 和範, 佐々木 信和, 福丸 俊哉, 岩波 光保
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_61-I_66
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     損傷劣化が生じている護岸・堤防を対象に,一律に予防保全的に維持管理を実施することは現実的ではなく,確認された損傷劣化の優先度を設定し,計画的に点検診断や維持修繕を進める必要がある.
     このため,本研究では,長崎県で実施した点検診断結果を用い,発生した損傷劣化をパターン化してそれぞれについて維持管理の優先度と予防保全対応の考え方を検討した.検討にあたっては,確認された変状について護岸・堤防の変状連鎖に照らし合わせ,将来的に施設の性能に深刻な影響を与えるおそれのある損傷劣化については優先的に対応することとし,点検診断及び修繕に関する方針を示した.
  • 大熊 千紗都, 岡崎 慎一郎, 吉田 秀典, 車谷 麻緒
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_67-I_72
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     構造物の構造性能および耐久性能は,鉄筋の腐食の有無や腐食減少量に強く依存している.劣化診断に必要な点検は,目視によるのが標準であるため,コンクリート表面に呈した腐食ひび割れの開口幅の情報により,ひび割れ部直近の鉄筋の腐食量が推定できれば,高度な維持管理に資するものと考えられる.本研究では,近年開発された破壊力学に基づく損傷モデルを採用することで,コンクリートの微細なひび割れ進展を再現できる有限要素スキームにより,異形鉄筋と丸鋼鉄筋の腐食膨張によるコンクリートのひび割れ進展シミュレーションを行い,鉄筋の腐食膨張がひび割れ幅に与える影響を検討する.
  • 田中 豊, 川端 雄一郎, 加藤 絵万
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_73-I_78
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     本研究では,桟橋床版における塩化物イオン浸透の非一様性に影響を及ぼす要因を検討するために,供用開始から約30年が経過した桟橋から切り出した2枚の床版を用いて,塩化物イオン濃度測定および濃度分布推定を行った.塩化物イオン濃度測定の結果,海側に位置する床版の測定値が高く,両床版における測定値の平均は大きく異なっていた.また,濃度分布推定の結果,両床版とも床版の陸側で濃度が高く,中央および海側で低い傾向が各測定深度において確認された.これらのことから,施設中における床版の位置,海象条件および床版の周囲に位置する部材の影響を受けて,床版に供給される塩化物イオン量および塩化物イオン供給分布が変化することで,床版における塩化物イオン浸透が非一様性を呈すると考えられる.
  • 藤田 孝康, 松本 力, 斎藤 将貴, 笠井 哲郎, 奥野 正洋, 加藤 広之, 野神 功一, 不動 雅之
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_79-I_84
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     漁港施設は,今後一層,老朽化した施設が増加していくと予想される.これらの診断は,目視が主体であるため,時間やコスト等の労力に加え,点検技術者による精度のばらつき等の問題がある.本研究では,点検技術者による精度のばらつき解消のため,弾性波伝搬の測定法のうち,入力点と測定点を対面配置する方法を用い,漁港施設内部欠陥を診断する方法について検討した.その結果,室内試験で内部欠陥を疑似的に配置した供試体を用いて,健全部と不健全部における弾性波を測定し,欠陥の有無で弾性波速度とパワー伝送比が増減することを確認した.また,これら2つの指標における評価によって,前者が4,400 m/s,後者が10.0 dBの交点で評価できる可能性を確認した.さらに,室内試験と同様の方法を現地既存構造物で試行し,概ね適用できることを確認した.
  • 長谷 一矢, 増田 亨, 木岡 信治
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_85-I_90
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     氷海域におけるコンクリート構造物の劣化は,主に凍害,塩害そして海氷摩耗の複合劣化であると考えられる.海氷摩耗を伴う複合劣化の研究には,氷とコンクリートの摩耗試験が不可欠である.そして,摩耗特性を明確に把握するためにも長期間の摩耗試験が必要である.しかし,従来の気中における摩耗試験では,コンクリートの摩擦面に氷膜が形成され,摩耗の進行が抑制されてしまうことから,長期間の摩耗試験が困難であった.そこで筆者らは,氷膜の形成を抑制する水中摩耗試験法を開発した.不凍液中で摩耗試験を実施することにより,氷膜の形成が抑制され,長期間の摩耗試験が可能であることを確認した.また,気中,塩水中,不凍液中における氷とコンクリートの動摩擦係数に,ほとんど差がないことを確認した.
  • 竹内 貴弘, 木岡 信治, 宮崎 均志
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_91-I_96
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     結氷海域においては, 鋼構造物表面に発生した錆層が冬期間に海氷作用により除去され, 裸鋼材面が露出する現象が毎冬繰り返される.この結果として腐食量が増加し劣化が促進される.しかし,この氷海域特有の現象が設計に反映されていないためにオホーツク海沿岸の導流堤の被害が想定よりも早く発生してきた.本研究では, この鋼構造物の劣化機構を滑り摩耗試験から把握して錆層の定常摩耗時の摩耗率を評価することにより, 経過年数に対し予測される損耗厚の簡易な算定法を提案した.これにより, 構造物の供用期間に応じた損耗厚が算定でき, 予め必要な鋼材厚として部材に付加することでコスト的に有利な犠牲鋼板としての合理的な損耗対策が可能になる.
  • 木岡 信治, 遠藤 強, 宮崎 均志, 竹内 貴弘
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_97-I_102
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     重防食鋼矢板の被覆材料として実績が多いウレタンエラストマー(TPU)の海氷接触による耐久性を調べるため,すべり摩耗試験を実施した. 金属材料と異なり,TPUの場合は砂が含まれない氷でも凝着摩耗が確認され,摩耗進行は直線的であること,その勾配で定義した損耗(摩耗)率は大きく,金属材料の腐食摩耗や海氷に混入する砂による切削摩耗「アブレシブ摩耗」の定常損耗率より1オーダー大きいこと等の基本特性のほか,接触圧,氷温,摩擦速度,そしてアブレシブ摩耗特性として海氷に混入している砂の粒径や種類が及ぼす影響も含めた損傷特性を明らかにした.さらに,氷海域で暴露試験を実施し,剥離を含むTPUの損傷が確認される等,氷海域での使用にあたっては特別に留意する必要があることが示された.
  • 藤田 孝康, 斎藤 将貴, 三神 厚, 笠井 哲郎, 奥野 正洋, 加藤 広之, 野神 功一, 不動 雅之
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_103-I_108
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     漁港施設を適切に維持管理していくために,機能診断の簡易化や効率化を進める必要がある.特に,施設の大半が水中部に位置する防波堤等は,その大部分が水面下にあり,部材の状況を陸上から簡易に視認することが難しく,点検の際に潜水等によってコスト増大や危険性への直面を余儀なくされている.本研究では,地盤上に漁港施設を模した模型を用い,鉛直と水平方向振動(ロッキング振動)の理論値,実測値を比較し,固有振動数による漁港施設不可視部(基礎部)の評価方法を検討した.その結果,室内試験で理論値と実測値がほぼ同等となり,基礎接地面が減少する場合,固有振動数が減少した.また,この結果を現地にも適用し,理論値と同程度の固有振動数が得られる可能性があることを確認した.
  • 宇野 健司, 田中 敏成, 加藤 絵万
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_109-I_114
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     桟橋上部工の点検に対しては,点検者の安全を確保しながら,限られた作業時間の中で個々の部材の劣化を確実に把握するための,より効率的な手法の開発が望まれている.著者らは,遠隔操作式の桟橋上部工点検用ROVを開発し,実海域試験により点検の効率性を検証した.実証試験より,開発装置の利用により目視調査の効率化が図れることが分かったが,開発装置を維持管理の現場に実装するにあたっての問題点が明確になった.これらの問題を解決するため,点検装置操作ソフトへの撮影漏れ防止機能の付加や,3D画像を利用した画像診断補助システムを構築した.
  • 佐々木 信和, 浮田 浩行, 中野 晋, 石河 雅典
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_115-I_120
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     大規模災害発生時,構造物等の状況把握においてUAVは有効なツールとなる.本研究は,UAV操縦の安全性を向上するため,GPSによる自律飛行や,手動による無線操縦をサポートする方法として,地上に設置したLEDパネルを用いた可視光通信によりUAVの操縦技術を開発したものである.
     本研究では,まず,港湾及び海岸における被災した構造物等の調査におけるUAVの適用可能性とその課題について検討した.そして,可視光通信によるUAVの制御システムを試作し,室内において飛行制御試験を実施した.その結果,飛行中のUAVが地上に設置したLEDパネルに示した旋回・上昇下降等のサインを識別し,所定の動作を行うことに成功した.本論文ではその結果を報告すると共に,パネル未検出時の原因とその解決方針,当該技術を用いた災害時調査の方法及び有効性について示した.
  • 大矢 陽介, 伊藤 広高, 小濱 英司
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_121-I_126
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     災害発生時に港湾係留施設の利用可否判断に必要な残留変位を迅速かつ効率的に調査する方法として,無人航空機による取得画像を利用した計測方法を検討した.無人航空機を利用した方法は,航空機やカメラの種別,飛行や撮影の条件および対象施設の立地や形状等の諸条件により,精度が大きく変わる.本研究では,無人航空機を利用した変位計測手法の精度確認および計測時の課題抽出を目的とした検証実験を行った.実験では実際に近い計測条件として,係留施設に岸壁模型を設置し,模型を移動することで地震時の残留変位を模擬した.大規模地震発生時のように,岸壁背後地の地上基準点の移動や地殻変動が懸念される場合,RTK測位を利用可能なUAVを用いた計測手法が優位であることが分かった.
  • 犬飼 直之, 篠原 将也, 小池 悠斗, 塚田 佳樹, 山本 浩
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_127-I_132
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     平成26年5月に新潟県で発生した事故では,砂浜を遡上する波浪で児童を含む5名が死亡した.既往研究では,事故発生時の波浪や砂浜を遡上する波浪の挙動について考察を行ったが,ここでは,異なる波高・周期時の遡上波浪の挙動の変化を把握するとともに,他の緩勾配地形の海岸での同様な内容を把握した.次に,様々な波浪条件における遡上波浪の危険度を遡上流速および遡上水位から定量把握することを試みた.その結果,事故発生海岸では波高1 m以上で大人でも転倒する可能性が高いことを把握した.更にこの手法を用いて異なる勾配地形の海岸での危険度の定量把握を試みた.その結果,1/10勾配よりも急勾配海岸では,波高 1m,周期6秒程度以上で危険度が増大した.この結果を用いて新潟県内の1/10勾配よりも急な海岸の抽出を試みた.
  • 三神 厚, 神山 眞
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_133-I_138
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震によって,東北の太平洋岸の広い範囲で地盤が沈降し,多くの漁港で岸壁の嵩上げ工事が実施されたが,本震後の余効変動(隆起)が漁港施設に影響を及ぼしており,嵩下げ工事を実施する漁港も現れた.漁港の被災から復興に至る過程が高精度の地殻変動データとともに得られていることは過去にない特徴である.本研究では余効変動を伴う巨大海溝型地震による震災からの合理的な復興へ活かすための貴重な教訓を抽出すべく,東北の地震により漁港に生じた様々な不都合や,それに応じた関係機関の対応をヒアリング調査等から明らかにするとともに,地殻変動の推移とともに時系列で整理した.その結果,本震後,すぐに隆起に転じた地域では,漁業の継続性を確保するための段階的な復興工事が結果的に有益であったこと等が明らかになった.
  • 園部 雅史, 羽柴 秀樹
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_139-I_144
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     2011年3月に発生した東日本大震災による津波によって,仙台海岸の沿岸域は甚大な被害を受けた.大規模災害においては,長期的に復旧過程をモニタリングすることが,その後の復旧期間の短縮や復旧計画の再調整等の効率化に寄与することが考えられる.本研究では時系列かつ高詳細な調査に優位な特性を有する5時期の高分解能衛星画像を用いて,仙台海岸沿岸域の海岸堤防および復興道路,海岸林の復旧・復興過程を画像判読により調査した.加えて,高分解能な特性を有する地表の分光特性を利用した正規化植生指標値により,植生環境および植樹事業進捗に伴う沿岸域の土地被覆特性の変化過程を評価した.この結果,大規模災害における長期的且つ継続的な変化過程のモニタリングに有効に活用されることが考察された.
  • 内藤 了二, 鮫島 和範, 近藤 泰徳, 伊藤 直和, 川口 浩二
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_145-I_150
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     長期海面変動量の推定は,定期的に地盤変動量を観測し補正しなければならない.近年,高齢化に伴う測量技術者の不足,費用面の問題があり,簡易手法で地盤高さを管理することが喫緊の課題である.本研究は,GNSS測量による地盤変動量を考慮した海面変動量の推定を試みた.三河港は,検潮記録をもとに推定した年平均海面変動量は,-3.20 (mm/year)であった.伊勢湾沿岸の鳥羽,名古屋港,鬼崎でも,同様に下降していた.三河港での球分体楕円体高は,GNSS測量によると直近5年間で68.4mm (13.7mm/year)上昇していた.また,セミダイナミックパラメータによる1997年から19年間での地盤変動量は,120mm(6.32mm/year)上昇していた.地盤変動を考慮すると三河港での年平均海面変動量は,3.12(mm/year)上昇と推定された.さらに,被災時の復旧段階での検潮所の高さ管理の手法を提案した.
  • 三井 順, 久保田 真一, 松本 朗, 小山 裕文, 古路 裕子, 中口 彰人, 楳田 真也, 斎藤 武久
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_151-I_156
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     防波堤の上部工に津波減衰柵を設置することにより,津波の越流による洗掘が抑制され,防波堤を粘り強くすることができると考えられるが,これまで定量的な評価は行われていない.本研究では,津波減衰柵の設計法の確立に向けて,洗掘抑制効果や背後地への越水低減効果,柵の設置によるケーソンへの作用津波力の変化を水理模型実験により検討した.その結果,柵の遮蔽率や高さに応じて,越流に対する被覆ブロックの移動限界越流水深が向上することが確認された.柵の設置位置に関しては,洗掘抑制効果の点からは港内側付近を避けて柵を設置するのが効果的であること,またケーソンへの作用津波力の増大を軽減するという点からは,港外側付近を避けるのが良いことがわかった.したがって柵の設置位置は防波堤中央付近が望ましい.
  • 橋本 潔, 田中 仁
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_157-I_162
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     東日本大震災の巨大津波によって,宮城県の仙台湾沿岸地域は,かつてない甚大な被害を受け,多くの人命が失われた.仙台湾沿岸には,貞山運河,東名運河,北上運河が,阿武隈川から旧北上川まで約49 kmに亘り日本一の運河群として,今なお存在し続けている. この運河群は,東日本大震災の津波に対して減災効果があったと言われている.そこで,仙台湾沿岸地域における多重防御システムを整備するために,貞山運河及び北上運河の断面形状を反映した平面二次元津波解析により運河群の津波減災効果を評価した結果,これらの運河は津波の威力を減衰させ,津波の戻り流れを集水し効果的に海へ排水させることができ,仙台湾沿岸の運河群には一定の津波減災効果があることが明らかになった.
  • 飯村 耕介, 桑原 雄大, 池田 裕一, 髙橋 勇貴
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_163-I_168
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     レベル2津波に対しては,複数の構造物による減勢が非常に重要となる.本研究では,海岸林の樹冠が減災効果に及ぼす影響について着目し,樹冠の有無による防潮堤越流後の流況の変化について定常流下における水理模型実験により検討した.特に防潮堤越流後の複雑な流れを捉えるため,PIVにより面的に流速を測定した.越流の形態により背後の流況は大きく異なり,特に防潮堤と海岸林の距離が近い場合は,防潮堤が低く,流れが上層に集中する潜越流状態では樹冠に速い流れが作用し,作用力・モーメントが大きくなる可能性があり,従来の平均流速を用いた作用力・モーメントの評価では過小評価となる恐れがある.一方で,防潮堤が高く,不完全越流状態になる場合では,下層に流れが集中し,樹冠部の流れが遅くなるため,潜越流とは逆の傾向が見られた.
  • 高山 百合子, 伊藤 一教, 田中 裕美, 高橋 健吾
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_169-I_174
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     温暖化適応において,海面上昇に起因する災害の増分を知ることは,沿岸域の適応策決定における重要な知見である.本研究では,温暖化と関連のない津波を対象に,海面上昇による津波災害の増分と,適応策としてマングローブ林と堤防を組合せた対策による津波減衰効果について断面1次元計算により整理した.その結果,海面上昇に伴い増加する災害の増分は,マングローブ林と堤防を組合せた場合に増加幅が大きくなるケースが示された.平面地形を用いた計算では,適切な植生・堤防の配置や規模が対象地点との離隔にかかわらず津波到達の遅延効果を発揮させることやその遅延効果により避難施設の建設量を低減するというベストミックスの可能性を示唆し,平面配置による検討の必要性を確認した.
  • 小俣 哲平, 織田 幸伸, チャトラ マナワセカラ
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_175-I_180
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     防潮林は津波の流速や浸水深を低減し,また,背後にある構造物への津波波力を軽減することが期待されているが,水位や波力の低減特性と津波波形の関係には,未解明な部分が多い.一方,数値流体解析技術の高度化により,近年,直接津波波力を解析する手法が一般的になりつつある.そこで,防潮林による津波波力の低減効果の確認を目的に,防潮林を模した円柱群模型を用いた水理模型実験によりその低減特性を検討し,数値解析の適用性について確認した.その結果,防潮林による浸水深の低減効果は,流速の大きい遡上の初期に顕著であり,周期特性の長い波形では最大浸水位発生時には流速が小さいため,その効果は小さいことを確認した.また,数値解析は,実験において確認された防潮林の津波に対する低減効果を良好に再現し,その有効性が示された.
  • 松田 信彦, 武田 将英, 江口 三希子, 西山 大和
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_181-I_186
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     東日本大震災による海岸や港湾被害を契機に,レベル2津波に対してレジリエンスの高い津波対策技術の研究が進められている.このような巨大津波では周期が数十分間継続し,水位や流速が複雑に時間変化するため,巨大津波を一般的な実験水路で造波することは難しい.そのため,著者らは,電動式スルースゲート(以下,電動ゲート)の流量制御を用いた,新しい津波造波装置を開発している.これまでに,ゲート流量と段波波高の関係式を作成し,小型水路の実験で段波波高の制御に成功しているが,分散波の制御と複雑な津波波形の再現に課題があった.本研究では大型水路を用いて東日本大震災の津波波形を再現し,電動ゲートの開閉速度によって分散波波高の制御ができることを明らかにした.
  • 犬飼 直之, 鷲尾 洋平, 政井 雄大
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_187-I_192
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     日本海では複数の断層が存在する事から,今後発生の可能性がある地震津波は想定とは異なる場所で発生する可能性がある.その場合,津波高が想定よりも増大する可能性があり,事前対策時でも発生後でもそれを定量把握できる事が望ましい.本研究では,様々な場所で発生した津波が海岸へ到達する最大水位変動量を迅速かつ簡易的に把握する事を目的に,地震エネルギーから震源水面変動量を求め,グリーンの法則を用いて海岸付近での変動量を平面的に推算した.この際必要となる,地盤変動量を推算する際の震源の断層諸元の推算方法,海底地盤変動に対する水面応答率,震源から海岸までのグリーンの法則の適用性などについて検討を行った.
  • 泉宮 尊司, 篠原 頼人
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_193-I_198
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     津波高の分布を知ることは,地震や津波の規模を把握する上,および全体的な被害を予測する上でも重要である.本研究では,震源域で発生した津波が,複雑な海底地形による浅水,屈折,回折,摩擦および砕波変形を受けることによって,対数正規分布となることを理論的に示している.対数正規分布に従うとき,相似な津波高分布は平均値が変化するだけで,分散は変化しないこと,および津波高比の対数値の分散は,両者の相関が高く,変動誤差が小さいほど小さくなることが示された.また,相似性および類似性指標を新たに提案し,従来のκ値と提案された指標を用いて,地震断層の位置がほぼ決定されることを示した.さらに,津波マグニチュードMtおよびモーメントマグニチュードMwと平均対数津波高および相田によるK値1)との関係を導き,津波高分布よりモーメントマグニチュードを推定できることを示した.
  • 木場 正信, 山本 朗宜, 上野 卓也, 由比 政年
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_199-I_204
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     海底地すべり様式のうち斜面下部から開始する退行性地すべりに着目し,地すべりの分割数や移動開始時間差と津波水位の関係を解析した.また,水深や地すべり速度に対する水位の感度も解析した.ゴドゥノフ型有限体積法を適用した非線形長波数値モデルを用い,各時刻の海底地盤変動を考慮した.全長1kmの比較的小規模な地すべりを対象に退行性の影響評価を行ったところ,エネルギー分散による津波波長の伸張と振幅の低減が主であり,単一ブロックの剛体運動による津波水位が最大級となるが,時間差により地すべり背後側で10%程度の水位の増幅が生じた.これは個別の小ブロックに起因する津波の重畳による.個々の地すべりにおいて退行性による増幅が生じる時間差は長波の波速に基づき水深に応じ推定可能であるので,これを用いて津波の想定に反映できる.
  • 酒井 大樹, 辻本 剛三, 柿木 哲哉, 石原 莉輝, 金澤 剛
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_205-I_209
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     2017年7月の九州北部豪雨では,多数のため池が被災,決壊に至った.九州北部豪雨で決壊した山の神溜池の下流部に位置する鎌塚溜池でも被災が報告されている.被災要因は複雑であるが,ため池のような規模だけでなく,海域,湖沼,貯水池でも斜面崩壊等で土砂が流入,移動することで発生する流動,波動で周辺構造物や人的被害を生じることがある.本研究では,OpenFOAMを用いて土砂を密度流として扱う事で土砂の静水域への流入による現象へのモデルの妥当性を検討した.精度検証として実験を実施し,数値解析による再現ができた.OpenFOAMで本現象を再現するには,土砂の動粘性係数νと密度ρ,土砂に関する界面の表面張力σをチューニングすることで再現性が得られた.また,解析結果から土砂流周辺の流速分布を把握することができ,土砂流先端のnoseとheadの形成過程を捉えることができた.
  • 中村 友昭, 中井 祐斗, 趙 容桓, 水谷 法美
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_210-I_215
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     本研究では,浮遊砂による流体の密度と粘性係数の変化を考慮可能な数値計算モデルにより陸上構造物への作用津波力に関する数値解析を実施し,津波作用開始直後のサージフロント波圧による最大津波力と準定常的な持続波圧による最大津波力に与える浮遊砂の影響を検討した.持続波圧による最大津波力に関して,浮遊砂が存在しない状態での値が与えられれば,想定する浮遊砂濃度に基づく流体の密度を考慮することで,安全側の評価が行える可能性があることが判明した.一方,サージフロント波圧による最大津波力に関しては,浮遊砂を含むことによる流体の密度の増加以上に最大津波力も増加する可能性が高いため,想定する浮遊砂濃度に基づく流体の密度の考慮だけでは評価が行えず,浮遊砂を含んだ津波を対象に検討を行うことの重要性を示した.
  • 有光 剛, 川崎 浩司
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_216-I_221
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     本研究では,津波来襲時に顕著な砂移動が生じる海域の狭窄部を対象に水理模型実験を実施し,狭窄部の幅や形状が砂移動・地形変化に及ぼす影響について議論した.さらに,実験の再現計算を通じて,平面2次元津波移動床モデルの適用性について検討を実施した.
     実験結果から,狭窄部周辺の地形変化量に及ぼす狭窄部幅の影響が大きいことが明らかとなった.一方で,最大侵食深は狭窄部形状による差異が大きく,急縮形状の場合には3次元的な渦の影響を受けて,狭窄部幅に関わらず深掘れが生じることが判明した.また,津波移動床モデルによる再現計算の結果,3次元的な流れによって生じる局所的な洗掘の再現は困難であるものの,局所的な地形変化が問題とならない場合,狭窄部幅による巨視的な地形変化の差異を概ね良好に評価できることが確認された.
  • 佐藤 健彦, 高橋 英紀, 宮田 正史, 竹信 正寛
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_222-I_227
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     防波堤に津波が作用すると,防波堤の港内外の水位差により基礎マウンド内に浸透流が発生し,基礎マウンドの支持力が低下することが,既往の研究により分かっている.一般的な防波堤においては,支持力の低下は,港内外の水位差に比例し,10mの水位差で最大2割程度であると考えられている.しかし,支持力低下のメカニズムや,腹付工を有する防波堤に対する浸透流の影響については,十分に解明されていない.そこで,本研究では腹付工の形状や防波堤諸元(ケーソン幅,基礎マウンド層厚等)を変化させた多数の防波堤断面に対して,基礎マウンド内の浸透流を考慮できる数値計算を実施し,この支持力の低下の程度を定量的に評価した.また,解析結果から支持力低下のメカニズムについて考察するとともに,対策方法として腹付工が有効であることを示した.
  • 三戸部 佑太, 田中 仁, 渡辺 一也
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_228-I_233
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     本研究では北上川を主な解析対象とし,河道内及び周辺の海岸や沖合における2011年津波の観測波形を比較することで河道内における津波遡上特性について議論する.また,北上川を対象とした津波遡上の再現計算を実施し,計算結果に見られる津波遡上の特徴と観測津波波形の特徴を比較することで,河道内における津波挙動の特性を説明する.
     沖合や海岸において最大波高が観測された第一波は堤防を越流するため大きく波高が減衰しながら上流側へ伝播する.その後,水位が初期水位まで低下する以前に後続の波が入射することで,上流側においては第二波以降に最大水位を生じる可能性がある.また,河道湾曲部においては遠心力による外縁部の水位上昇により,越流が生じやすいとともに河川堤防により大きな外力が作用する.
  • 池野 勝哉, 岩波 光保, 川端 雄一郎
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_234-I_239
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     桟橋上部工のプレキャスト化には,鋼管杭との接合部において現行基準を踏襲した剛結条件を満足しつつ,架設時の施工性を損なわない接合方法が望ましい.その一つの方法として,プレキャスト化する上部工に鋼管杭よりも径の大きな鞘管を埋設し,架設時に鞘管内へ鋼管杭を所定の長さ挿入するとともに,その間隙をグラウト等で充填する「鞘管方式」が提案されている.著者らは過去に,実物の1/6縮尺を模した逆T形模型による交番載荷実験を実施し,「鞘管方式」が「従来方式」と同等以上の接合耐力およびエネルギー吸収性能を有していることを示している.本研究では,主として「鞘管方式」の交番載荷実験について三次元の非線形有限要素解析を行い,シアキーの有無や鞘管内への鋼管杭挿入長の影響,および接合部の耐荷機構に関する考察を行ったので報告する.
  • 佐伯 公康, 佐藤 秀政, 藤井 照久, 朝倉 邦友, 不動 雅之, 清宮 理
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_240-I_245
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     我が国の漁港の矢板式係船岸の設計では,地域別震度による静的な耐震性能照査手法が長年使用されている.近年の動的な地震応答解析の実用化をふまえ,静的な手法についても動的解析に基づく再検証が求められている.そこで本研究では静的な手法で設計された矢板式係船岸の断面モデルに正弦波を入力する二次元地震応答解析を実施し,部材別の応力と変形量を正弦波の強さと関連付けて整理した.その結果,変形がレベル1地震動に対する許容値に達したときにはどの部材も降伏しなかった.これより,従来の地域別震度に代えて,周波数特性を考慮して変形量を制御する照査用震度を適用できる可能性を見出した.また,発生した部材応力を降伏値と比較すると,前面矢板に比べてタイロッドおよび控え杭の安全余裕が小さく,現行の設計手法の課題が見出せた.
  • 勝俣 優, 福永 勇介, 竹信 正寛, 宮田 正史, 小濱 英司
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_246-I_251
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     平成19年版の港湾の施設の技術上の基準・同解説において,骨組解析より求めた桟橋バネ定数を用いて桟橋の固有周期を算出する手法(以下,現行法)が示されている.しかし,現行法と2次元地震応答解析では算出される固有周期に乖離があり,後者が常時微動観測や強震観測とよく整合することが既往研究より指摘されている.また,現行法は地震動に関わらず一定の値を算出するが,実際には地震作用により桟橋杭周辺の地盤剛性が低下するため,同一の桟橋であっても地震動の強さに応じて固有周期は変化する.
     本論文では,地震作用時における桟橋の固有周期や地盤剛性の低下率を地震応答解析により評価し,その関係性を整理することで,2次元地震応答解析と整合するように現行法を補正する手法(以下,補正法)を構築する.
  • 王 涛, 谷口 修, 内藤 英晴
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_252-I_257
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     港湾施設における鋼矢板では,集中腐食により干潮面直下付近に孔開きや肉厚減少が生じやすく,それがエプロンの沈下や陥没及び鋼矢板耐力の低下に結びつくため,腐食により劣化した部材の力学性能を回復することは喫緊の課題である.本研究では,孔開きや肉厚減少が生じた鋼部材に対し,ワンサイドボルトを用いた当て板補修を行った場合の,引張耐力の回復効果と接合方法の有効性の確認を目的として,実験と解析の両面から検討を行った.その結果,ワンサイドボルトで当て板を母材に取り付ける補修方法により,補修後の耐力と部材剛性は無補修の場合に比べて大きな改善効果を得ることができた.また,数値解析による検証では,当て板の肉厚を増した場合よりリブ補強を行う方が耐力の向上効果は大きいことを確認した.
  • 中村 友昭, 村岡 宏紀, 趙 容桓, 水谷 法美
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_258-I_263
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     消波ブロック被覆堤を対象とした水理実験において,マウンドや砂地盤を決める際の留意点などを整理することを目指した取り組みとして,鈴木ら(2002)の1/4スケールの大規模実験と同様の実験を1/55.8スケールで実施した.その結果,大規模実験で見られていたマウンド沖側部の下部からの砂の吸い出しは発生せず,マウンドの沖側内部には堆砂が生じることを確認した.この堆砂は,マウンド砕石と砂の粒径比が同程度の鈴木ら(2002)の1/16スケールの中型実験でも生じておらず,本実験で用いたマウンド砕石の粒径が小さく,マウンドの沖側内部に生じる沖向き流速が小さかったために生じたと推測された.以上より,底質の移動形態を相似させる点,マウンド砕石と砂の粒径比を一致させる点,マウンドの透水性を相似させる点に留意する必要があることが示唆された.
  • 小林 孝彰, 佐々 真志, 梁 順普, 後藤 翔矢
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_264-I_269
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     護岸・岸壁などの港湾施設における吸い出し防止策として,裏込石と裏埋砂の間に二層の粒度調整砕石からなるフィルター層を設ける方法に着目し,その実用性を総合的に検討した.その結果,単粒度のフィルター層を対象とした目詰まり効果の検証により,国際基準に定められる従来のフィルター材と比較して,同等かそれ以上の効果を持つことを示した.また地震荷重,交通荷重を想定した繰り返し載荷試験からは,二層の粒度調整砕石から成るフィルター層が十分な力学的安定性を有することが明らかとなった.裏埋砂を用いた模型実験により,実現象に近いスケールで吸い出し,空洞形成,地表面陥没の一連の過程を可視化すると共に,裏埋砂の粒径に起因するサクションの大きさが,これらのプロセスに多大な影響を及ぼすことを示し,フィルター層の吸い出し防止効果を実証した.
  • 村田 湧水, 畠 俊郎, 鍵本 慎太郎, 松村 聡, 水谷 崇亮
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_270-I_275
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     これまでに,チュニジア国のイシュケウル湖を対象とした試験結果から,原位置微生物由来の酵素と天然由来の固化試薬を用いた表層固化から表層堆積物の再懸濁抑制効果が明らかとなっている.本研究では,この技術の適用範囲拡大を目的に,酵素そのものを用いることで施工期間の短縮効果を期待することとした.対象として国内表層堆積物を選定し,提案技術の有効性検証を目的として短期・長期で固化効果を得ることを目的とした2種類の室内試験を実施した.試験の結果より,国内表層堆積物と酵素製剤を用いた場合においても濁度抑制効果が期待できることが明らかとなった.また,底泥表層に析出したカルサイトの膜厚と強度に正の相関があることと,X線CT撮影の結果から析出したカルサイト膜と底泥の間に隙間が生成されることなどが明らかとなった.
  • 小林 薫, 松浦 慶弥, 松元 和伸, 森井 俊広
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_276-I_281
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     半乾燥地における塩類集積防止の有効な対策工の1つとして,礫層とその上に砂層を重ねたキャピラリーバリア地盤(以下,CB地盤と記す)がある.半乾燥地における乾燥砂は,乾燥や施工時の振動等で下部の礫粒子間に混入しやすく,層状地盤を短~長期的に保持することが極めて困難である.筆者らは,この課題に対し,礫材の代替材として破砕貝殻を用いることで,CB機能を保持すると共に,上部の砂が下部の破砕貝殻層内へ混入することも同時に防止できることを明らかにしている.しかし,礫代替材として破砕貝殻を用いた場合,破砕貝殻の粒径により土壌水分特性曲線が異なるため,CB地盤による水分(塩分)上昇遮断機能が異なる可能性がある.本研究では,破砕貝殻の粒径に着目し,特に2mm未満の破砕貝殻の微粒子分が水分(塩分)上昇遮断機能に及ぼす影響を実験結果を基に明らかにした.
  • 渡部 未樹久, 小林 昭男, 宇多 高明, 野志 保仁
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_282-I_287
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     ダム湖内の浚渫土砂を養浜材料として利用する場合,土砂に含まれる細粒分による濁りが沿岸漁業に影響を及ぼすとの危惧から,その実施が困難となる場合が多い.本研究では,これを科学的に明らかにするために,実例として養老川水系の高滝ダム堆砂を同じ房総半島にあり,侵食の著しい九十九里浜へ運んで養浜材に用いるとした場合の課題について検討した.ダム湖と九十九里浜の多数の地点で土砂を採取し,それらの質的比較を行った.この結果,高滝ダム堆砂は,シルト含有率が18.4%であったのに対し,九十九里浜の片貝漁港での含有率は最大でも3.9%であり,シルト分の含有率が約5倍大きいことが分かった.
  • 野志 保仁, 目野 玄也, 宇多 高明, 小林 昭男
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_288-I_293
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     一宮海岸では,2017年7月上旬に8,800 m3の砂を用いた養浜が行われた.この養浜の効果を明らかにするために,養浜前の2017年5月27日,養浜直後の7月14日,養浜1, 3週間経過後の7月22日と8月3日に現地調査を行い,汀線形状と縦断形変化を調べた.また,これらの測線上で底質採取を行うとともに,海浜状況変化を調べるための写真撮影も行った.さらに,野志らのBGモデルを用いて地形変化の再現計算を行った.計算によれば,実測汀線は計算結果とよく一致した.また,総量8,800 m3の養浜により海浜土砂量は5,400 m3増加し,その際の養浜砂の歩留まりは61%であった.
  • Khusnul Setia Wardani, Keisuke Murakami
    2018 年 74 巻 2 号 p. I_294-I_299
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/12
    ジャーナル フリー
     Miyazaki Coast locates between the Hitotsuse River mouth and the northern side of Miyazaki Port. This beach has been suffering from severe beach erosion due to the shortage of sediment supply from rivers and the change of waves and nearshore currents by the construction of an offshore breakwater at Miyazaki Port. In order to preserve the sandy beach, a beach nourishment project has been implemented since 2008 in combination with the installation of Sand-Packed containers that were placed in front of the dune. A certain volume of nourishment sand has been installed for the sand fill work that covers Sand-Packed containers, and the rest has been dumped off the coast. The purpose of this research is to evaluate the effectiveness of the beach nourishment with using long-term bottom sounding data. This study discussed the effect of the beach nourishment on longshore sandbar evolution. The change of the sand volume in research area was also discussed in this study. Furthermore, the method of Empirical Orthogonal Functions, EOF, was applied to some cross sections in order to describe the spatial and temporal variability of longshore sandbars.
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