抄録
底質の砂質化により底層生態系の劣化が懸念される人工干潟の環境保全対策として,堆積層への落ち葉散布に着目し,その有効性について検討するため,易分解性と腐植させた難分解性の落ち葉を用いて,(1)水質と底質への影響評価のための溶出試験,(2)ゴカイとヤドカリの生残試験,(3)現地散布実験によるモニタリング調査を実施した.その結果,易分解性落ち葉を散布した場合,有機物分解により堆積層で硫化物が発生し,ゴカイなどの底生生物の生息に悪影響を及ぼすことが明らかとなった.一方,難分解性の落ち葉は,硫化物はほとんど発生せず,ゴカイの生存率は落ち葉散布なしの場合よりも高くなった.また,現地実験より落ち葉を散布した方が生息する生物種が多くなる傾向が確認でき,腐植落ち葉の散布は底層生態系の保全に有効であることが示唆された.