2020 年 76 巻 2 号 p. I_1025-I_1030
全国約200箇所の海水浴場におけるライフセーバーによる溺水者の救助は毎シーズン2,000~3,000件であるが,応急手当は10,000〜25,000件であり,レスキューに比べて1オーダー大きく,熱中症や意識障害,泥酔等の陸域での傷病も発生している.また,救急車要請は100〜200件であり,傷病者の救護救命のためには,初動の速さが求められる.本研究では,千葉県御宿海岸の海水浴場を対象に,海域のレスキューだけでなく,陸域の応急手当も含めた傷病等の発生特性を統計解析によって調べ,利用客が多い場合や遊泳可,遊泳注意の条件の場合に傷病等が発生しやすいことを明らかにした.また,都市での実用化を目指して開発された救護システムを海水浴場に適用し,現地実験により,システムは砂浜での迅速な救護に有効であり,7~10%の救命率向上を可能にすることを明らかにした.