理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 541
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神経系理学療法
当院における外来小児理学療法の効果判定表を母親と共有する試みについて
*日比野 幹也小川 智也
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抄録
【はじめに】
外来小児理学療法を効果的に施行していく上で、家族との協力体制が重要となる。家族との協力体制を高める1つの試みとして、母親と効果判定表を共有した。今回、その試みに対する母親の感想や実際の効果との関係、また出席率に及ぼした影響を調査した。
【対象】
当院にて、外来小児理学療法を施行している患児34例(1歳以上12歳未満)。主な診断名は脳性麻痺、精神発達遅延である。
【方法】
平成14年4月以降、当院にて外来小児理学療法を約3ヵ月間施行し、その後約3ヶ月間の休止後、2回目の外来小児理学療法を約3ヵ月間施行した。小児理学療法の効果判定表は、各患児に応じた個別の到達目標を決め、到達過程を5段階に分けた。各段階の目標到達度を3ヵ月の期間に達成できたかどうかを評価し、実際の効果については点数化(100点満点)した。1回目の理学療法期間終了後に母親に対し郵送にて質問紙法によるアンケート調査を実施した。アンケートの主な内容は効果判定表を共有することの良し悪しやその理由、効果判定方法の良し悪しやその理由、理学療法に効果を感じたかどうかである。アンケート結果と効果判定表結果、および各時期における出席率との関係を調べた。
【結果】
アンケート回収率は100%であった。 効果判定表を共有することの良し悪しは、良かった33例(97%)、悪かった0例(0%)、どちらでもない1例(3%)であった。効果判定の方法の良し悪しは、良かった28例(82%)、悪かった0例(0%)、どちらでもない6例(18%)であった。良かった理由として、「励みになった」28例であり、どちらでもないと答えた理由として、「目標設定が難しい」5例であった。
母親が感じる効果の有無と実際の効果判定点数は、母親が理学療法に効果が有ると感じていた群28例(82%)の平均点数は80.0点、効果を感じていなかった群6例(18%)の平均点数は33.3点であった。
目標設定を行うことが困難と感じる群(12例)と感じない群(22例)で効果判定点数を比較すると、困難と感じる群55.0±29.7点、感じない群80.9±22.7で有意に(p=0.0201)低かった。
母親が感じる効果の有無により1回目と2回目の期間中の出席率を検討すると、効果有り群(28例)は74.1±2.3%から82.8±2.3%(p=0.0055)と有意に向上し、効果なし群(6例)は83.4±4.3%から56.6±4.9%(p=0.0277)と有意に低下した。
【考察】
小児理学療法を行ううえで母親と効果判定表(評価表)を共有したことは、母親に好印象を与えたが、目標を設定することが困難な症例も少なくない。効果判定表における効果判定が、母親の理学療法効果の感じ方に影響し、さらにその感じ方の有無が、その後の理学療法の出席率にも影響している。目標設定は小児理学療法の効果を左右する重要な因子であり、効果判定表を共有することで母親と適切に詳細な目標設定を行うことが必要である。
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© 2004 日本理学療法士協会
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