2020 年 76 巻 2 号 p. I_1097-I_1102
湾口部が狭隘な岩手県の山田湾を事例として東日本大震災の際に漁船を海上に避難させた漁業者への調査等によって漁船避難の実態を解明するとともに,東日本大震災時の津波シミュレーション等により湾内外の津波流速分布を算定し,東日本大震災時に海上避難した漁船等の最大速度を比較して漂流・転覆等の可能性を検証した.その結果,湾口部において漁船最大速度と同等又はそれを上回る津波流速が発生することが明らかとなったことから湾口部が狭隘な湾においては,一律に水深の深い湾外へ漁船を避難させず,津波シミュレーションにより湾口部付近の最大津波流速と漁船航行速度を確認したうえで湾口部が安全に漁船航行可能か否かを検証すること,湾内の海上で逃げ遅れた漁船等に対し湾内の比較的安全な海域を漁業者へ周知することの必要性等が解明された.