2020 年 76 巻 2 号 p. I_156-I_161
海岸堤防と背後盛土が一体となった粘り強い構造の海岸保全施設を津波が越流する状況を対象に,その背後に立地した建物を模した構造物に作用する津波力を数値解析により検討した.水理実験との比較より,津波による背後盛土の侵食を数値解析により概ね再現できることを示した.盛土の有無や盛土侵食の有無を変化させた数値実験より,津波による盛土の侵食が小規模な条件では盛土の侵食を考慮した場合の方が盛土の侵食を考慮しなかった場合よりも津波力が小さくなる傾向がある一方で,盛土の侵食が大規模な条件では盛土の侵食を考慮した場合の津波力の方が大きくなることが判明した.以上より,津波力の評価を行う際に,盛土の流失を考慮した検討を行うことの重要性と,巻き上がった浮遊砂による流体の見かけの密度の増加を考慮することの重要性を示した.