2020 年 76 巻 2 号 p. I_378-I_383
近年,我が国に寄港する船舶,特にクルーズ船の大型化に伴い,港湾工事共通仕様書の寸法規定に記載のない大型係船曲柱(牽引力1500kN,2000kN)が市販され,各地の岸壁に設置されている.この大型係船曲柱は,高さが高く,上部形状も大きいため,船舶の係留索を係船曲柱に掛け外しする作業(繋離船作業)に際して作業員への負荷が大きく,作業効率の低下を招いているとの意見がある.
本研究では,既往の大型係船曲柱の上部形状の設定方法を整理するとともに,繋離船事業者に対する大型係船曲柱の利用実態に関する調査を実施した上で,力学的な安全性の確保を前提に,繋離船作業の作業効率向上に配慮した上部形状の小型化を検討した.その結果,牽引力2000kNの係船曲柱は,現状の1500kN市販型もしくはそれよりもさらに小型化が可能であることを明らかにした.