2020 年 76 巻 2 号 p. I_762-I_767
長崎県のアサリは,諫早湾北部の小長井地先で漁獲されるものが多いものの,その漁獲量は低迷している.また,島原半島では浮遊幼生の着生が報告されているものの,その後の生残が悪く,漁獲に結び付いていない.そこで,本研究では,長崎県におけるアサリ漁獲量を向上させるため,「食害・逸散」を防止できる砂利入り網袋を用いた成貝移植試験,稚貝採取・保護育成試験を実施した.加えて,夏季の減耗が顕著であることから,要因を明らかにするための室内試験を行った.その結果,砂利入り網袋を用いることで,アサリ稚貝の採取,移植用サイズまでの保護育成,移植して漁獲といった一連の過程で安定したアサリ生産を行える可能性が高まった.一方,夏季の減耗は水温が影響している可能性が高く,更なるアサリの生産向上には,夏季の減耗対策を検討する必要があることがわかった.