2021 年 77 巻 2 号 p. I_577-I_582
干潟・砂浜において,波の遡上や潮汐作用による地下水位変動に伴う土砂内部のサクションの動態が,多様な底生生物が生息する表層土砂の間隙,剛性,硬さ等の住環境を形成する上で本質的な役割を担っており,サクションを核とした地盤環境動態が多様な生物活動の適合・限界場を支配していることが明らかになっている.本研究では,沿岸環境の整備,維持管理及び沿岸生態系の保全再生に活用しうる基盤として,上述の筆者らの知見に基づいて構築した沿岸底生生態-地盤環境動態統合評価予測プラットフォームを断面2次元から3次元に拡張し,現地への適応を行った.その結果,当該プラットフォームは,台風イベントによる干潟地形変化に伴うコメツキガニの分布域の空間的な移動を整合的に予測・再現しており,その有効性を実証した.