2022 年 78 巻 2 号 p. I_43-I_48
干潟は,水質の浄化や生物の生息場など,多くの公益的機能を有しており,近年ではブルーカーボン創出の場などの新たな役割も期待されている.失われた干潟や浅場の創造には基盤材としての砂が必要となるが,天然砂の利用は新たな環境破壊を引き起こす可能性が考えられるため,代替材の開発が求められる.そこで本研究では,一般廃棄物の溶融過程で生成される溶融スラグを使った水槽による比較実験と,溶融スラグを使用した実海域での人工干潟造成実験を実施し,溶融スラグの海域への影響を明らかにすることを試みた.研究の結果,pHやT-N等の水質や飼育したアサリへの著しい影響は確認されず,また全期間を通じて人工干潟に底生生物が着底していたことから,溶融スラグの干潟の基盤材としての利用可能性が示された.