2022 年 78 巻 2 号 p. I_49-I_54
伊良湖岬周辺での漂砂量の長期的変化について考察した.伊良湖岬の北東側に形成されている西ノ浜を構成する海岸低地の総面積に砂礫層の層厚27mを乗じ,この低地が縄文海進極相期以降の経過年6000年で形成されたとし,経過年で除すと,砂礫の堆積速度は7.4万m3/yrとなり,伊良湖岬を通過した沿岸漂砂量は7.4万m3/yrと推定された.一方,伊良湖港周辺の1956年当時の深浅図から読み取った波による地形変化の限界水深6mを与えて沿岸漂砂量を算定したところ,漂砂量は6.9万m3/yrとなり,地質学的時間スケールと工学的時間スケールでの沿岸漂砂量がほぼ一致することが分かった.