2022 年 78 巻 2 号 p. I_439-I_444
北海道内のT海岸において,平成26年12月に発生した高波の襲来による,擁壁背後の道路法面陥没被災事例を基に,これまでに著者らは,被災時の波浪状況や現地調査結果により被災形態の再現実験を実施してきた.令和3年11月に近傍箇所で同様の被災が発生したため,現地踏査結果と数値計算による波浪推算および既往の研究に基づいて両者の被災要因を分析したところ,越波の有無により平成26年被災と令和3年被災では,被災実態と機構に違いがあることを明らかにした.特に,擁壁背後の陥没は越波により影響範囲が拡大し,陥没範囲に重大な影響をもたらすことを推察した.一方で,越波を有しない発生頻度の高い高波が長時間作用した際には,擁壁下面の吸い出しやそれに伴う道路法面の陥没被害が発生することも明らかになった.擁壁背後の道路法面の越波対策と擁壁下面の吸い出し対策を併せて施すことが有効な対策であると示した.