2022 年 78 巻 2 号 p. I_433-I_438
直立壁に浅海波が浅い角度で入射すると,壁面に沿って進むステム波と壁面端部での回折散乱波により直立壁前面で複雑な波高分布が形成され,これとよく対応した越波量分布が得られる.これらは既往の模型実験や数値計算で確認されているが,深海条件での検討例は未だ少ない.そこで,岸壁を想定した直立壁に水深波長比の大きい規則波及び不規則波を浅く入射させた平面実験とその再現計算を実施し,壁面沿いの波高・越波流量分布の特性とその計算精度を調べた.
その結果,不規則波の波高分布は規則波に比べ平滑化され,越波による波高低減はこの分布特性に影響しないこと,ステム波の発達は波形勾配や入射角,方向集中度に依存し,その状況は越波流量分布に反映されること等が明らかになったが,深海条件の越波に対する計算精度の向上は今後の課題である.