2011 年 67 巻 1 号 p. 23-31
本稿では,種々の洪水リスク軽減方策のうち,とりわけダムに対する社会的イメージの形成に影響をもたらす要因を考察し,そこでのイメージ形成過程の健全化のために有効な情報提供戦略について検討をおこなった.その結果,複数の洪水リスク軽減方策について肯定的側面と否定的側面の両者に関する情報提示を行う戦略の方が,従来のような単一の洪水リスク軽減方策に関する情報提供のみの戦略よりも,それぞれの対策がもたらす洪水リスク軽減効果の観点のみならず,それによってもたらされる自然環境への負荷や費用負担などの観点をも含め,地域の実情に応じて広範な観点から総合的かつ相対的に判断するような健全な態度の醸成に繋がり得る,という知見を得るに至った.