土木学会論文集F5(土木技術者実践)
Online ISSN : 2185-6613
ISSN-L : 2185-6613
67 巻, 1 号
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招待論文
  • 藤井 聡, 長谷川 大貴, 中野 剛志, 羽鳥 剛史
    2011 年 67 巻 1 号 p. 32-45
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
     人文社会科学では,「物語」(narrative)は,人間,あるいは人間が織りなす社会の動態を理解するにあたって重要な役割を担うものと見なされてきている.それ故,人間や社会を対象として,その動態に,公共的な観点からより望ましい方向に向けた影響を及ぼさんと志す“公共政策”全般においても,“物語”は重大な役割を担い得る.ついては,本研究では物語に関する基礎的な人文社会科学研究である,西洋哲学,解釈学,歴史学,歴史哲学,文芸批評,心理学,臨床心理学・社会学,民俗学などの主たる学術系譜のそれぞれをレビューすることを通して,プラグマティックな観点から“物語”がどのように公共政策に援用可能であるのかを論ずる.
  • 村田 曄昭
    2011 年 67 巻 1 号 p. 102-107
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
     昨今,公共事業のあり方や社会基盤整備の方向性に,国民の関心が集まっており,広く議論が行われている.我国の持続的発展のためどのような成長戦略を描き,そのために必要な社会基盤整備のグランドデザインを,どのように実現していくかという困難な課題に対し,より一層盛り上がった議論が必要なことは言うまでもない.本論文はこうした議論の一助とすべく,公共事業の歴史と先人たちの実践(業績)を振り返って原点に戻り,将来に向けた公共事業のあり方と土木技術者の役割を述べたものである.
  • 廣谷 彰彦
    2011 年 67 巻 1 号 p. 108-115
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/20
    ジャーナル フリー
     本論文は,戦後復興及び高度経済成長の一端を担ってきた社会資本整備に対する土木技術者の役割さらには,建設コンサルタントの多様化する役割における実践力やグローバル化に向けた国際競争力の向上のための実践の場の重要性を論じる.その背景には,戦後復興期から高度成長期において土木技術者が,技術面などで先行していた海外の技術を実践により習得し,技術革新,技術の高度化を進めてきた.その結果,最先端技術にしかなし得ることができなかった社会資本整備を実現し,現在の国の骨格を形成してきた.今後の日本では,人口減少・超高齢社会やグローバル化の進行等により,社会システムの変更を余儀なくされる.そのような時代にあって,土木技術者の時代感と共に,建設コンサルタントのさらなる飛躍のために実践力の重要性はさらに高まる.
和文論文
  • 片田 敏孝, 金井 昌信, 細井 教平, 桑沢 敬行
    2011 年 67 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
     本稿では,地域住民が参加する避難促進策の多くが,地域の全住民を対象として,知識の習得,意識の啓発を目的とした広義の防災教育に関する取り組みとなっている現状に着目し,その教育効果の限界を指摘するとともに,新たな方向性の避難促進策として,防災意識の高い住民を活用した“率先避難者”を導入することを提案する.
     そして,三重県尾鷲市を対象に“率先避難者”となりえる防災意識の高い住民に対して,津波避難に関する詳細な情報を提供することを目的として津波避難個別相談会を実施した.その結果,相談会参加者は不参加者と比較して,懇談会参加以前から意識が高く,災害に備えて具体的な行動をとっていたことが確認された.また,参加者は,相談会参加後に家族で避難方法を相談する機会を持つなどの行動をとったことが確認された.
  • 片田 敏孝, 金井 昌信, 児玉 真, 及川 康
    2011 年 67 巻 1 号 p. 14-22
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
     大河川の氾濫などを想定した場合,市町村の全域が浸水する可能性のある地域においては,地域内に避難場所を確保することが困難であるため,地域外への広域避難が検討されている.その一方で,危険から身を守るための緊急避難という観点からすると,浸水想定域外へ避難せずとも,高層階を有する建物へ避難することで,とりあえず命の危険を回避することは可能となる.
     以上の認識のもと,筆者らの研究グループは埼玉県戸田市を対象に,荒川氾濫を想定した場合の緊急一時避難体制の構築を目的とした地域住民が参加する防災ワークショップを実施している.具体的には,緊急一時避難場所の選定と災害時要援護者の支援方法の確立である.本稿では,この実践内容を詳述することから,防災ワークショップを活用した地域の緊急一時避難体制の確立手法を提案する.
  • 片田 敏孝, 及川 康, 木村 秀治
    2011 年 67 巻 1 号 p. 23-31
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
     本稿では,種々の洪水リスク軽減方策のうち,とりわけダムに対する社会的イメージの形成に影響をもたらす要因を考察し,そこでのイメージ形成過程の健全化のために有効な情報提供戦略について検討をおこなった.その結果,複数の洪水リスク軽減方策について肯定的側面と否定的側面の両者に関する情報提示を行う戦略の方が,従来のような単一の洪水リスク軽減方策に関する情報提供のみの戦略よりも,それぞれの対策がもたらす洪水リスク軽減効果の観点のみならず,それによってもたらされる自然環境への負荷や費用負担などの観点をも含め,地域の実情に応じて広範な観点から総合的かつ相対的に判断するような健全な態度の醸成に繋がり得る,という知見を得るに至った.
  • 栗林 茂吉, 安田 香平
    2011 年 67 巻 1 号 p. 46-54
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/20
    ジャーナル フリー
     ヒートアイランド現象など熱環境負荷の低減効果が期待される環境技術のひとつに保水性舗装がある.
     保水性舗装は晴天が続くと効果がなくなるという課題があり,その性能を最大限発揮させるためには,継続的な保水が必要である.そこで,効果持続が課題であった保水性能を最大限発揮させる自動散水設備を計画し,2010年6月21日より東京駅前の行幸通りにて自動散水の運用を開始した.
     本稿では,上述した自動散水の実践に向けて実施した,効率的且つ効果的な散水設備の開発に関する各種試験とその研究結果の報告を行っている.
  • 沼田 宗純, 秦 康範, 大原 美保, 目黒 公郎
    2011 年 67 巻 1 号 p. 67-77
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,災害医療情報をリアルタイムに収集し,医療機関・行政・住民等,地域全体で災害医療情報を共有するためのITトリアージシステムを開発した.
     本システムを山梨大学医学部付属病院で行われた450名規模のトリアージ訓練において適用した結果,リアルタイムなトリアージレベル別の患者数の把握,各診療科の受診患者数の把握,容易なトリアージレベルの変更対応等,トリアージの高度化だけでなく,他病院,行政,住民を含めた地域全体で情報共有が可能となり,迅速な転院対応や住民からの問い合わせ対応が可能であることが確認できた.
  • 秦 康範, 近藤 伸也, 目黒 公郎, 大原 美保, 座間 信作, 遠藤 真, 小林 啓二, 鈴木 猛康, 野田 五十樹, 下羅 弘樹, 竹 ...
    2011 年 67 巻 1 号 p. 91-101
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,首都圏における防災関係機関の組織横断的情報共有の実現を目的として,首都直下地震の初動期における災害対応上の課題を抽出し,その課題解決に貢献する防災アプリケーションを開発し,それらを統合した情報連携デモンストレーションを地方公共団体の防災・消防職員を対象に実施する.具体的には,対象地域は神奈川県,横浜市,川崎市の3県市とし,同時多発火災と救急搬送(ヘリによる救急搬送,救急車による患者搬送)を主なテーマとして,火災延焼シミュレーション,災害救援航空機情報共有ネットワーク,救急車搬送システム,災害対応管理システム,汎用災害情報ビューアなどの防災アプリケーションならびに情報共有データベースを統合した情報連携デモンストレーションを実施した.
和文報告
  • 西宮 宜昭, 讃井 一将, 溝田 祐造
    2011 年 67 巻 1 号 p. 78-90
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
     開発途上国で交通インフラとして最も重要視されている道路について,各援助機関は積極的に新設及び改修に対する協力を行ってきたが,必ずしも適切な維持管理が行われていないとの報告が目立つ.その結果,道路の機能低下が進行し,安全上の問題や経済発展への阻害要因ともなっている.このため,日本及び各援助機関も道路・橋梁の維持管理そのものへの協力を重視してきている.JICAも増加する開発途上国からの要請に対応し,10件を越える道路・橋梁維持管理に関する技術協力を実施してきている.
     今回,これまでの協力の総合的なレビューを行い,課題と教訓を整理し,今後の協力の基本的な方針を検討するための基礎的な調査・研究を実施した.本稿はこの調査・研究の結果を取り纏め,さらに課題・教訓について,追加分析と提言を示すものである.
英文論文
  • Keerati SRIPRAMAI, Yasushi OIKAWA, Hiroshi WATANABE, Toshitaka KATADA
    2011 年 67 巻 1 号 p. 55-66
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/20
    ジャーナル フリー
     Generally, in order to improve some regional fire fighting validity, indispensable strategies are not only a reinforcement of the governmental fire fighting ability, but also a strengthening of the cooperative relationship between governmental and non-governmental fire fighting ability. However, for practical purposes, the effective strategy should be different depending on the actual situationin the subject area. So, in this study, we grasp the actual state and background of the problems that need to be solved for the improvement of the regional fire fighting validity in Bangkok as a case study, and examine the appropriate solution focusing on the relationship between official and voluntary fire fighting.
     Through some practicable activities such as interviews, investigati ons, and making the regional fire fighting validity map, it became clear that the problems of uncooperative relationship and the lack of trust between stakeholders should be solved first and foremost.
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