土木学会論文集F5(土木技術者実践)
Online ISSN : 2185-6613
ISSN-L : 2185-6613
最新号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
和文論文
  • 福林 良典, 木村 亮
    2022 年 78 巻 1 号 p. 1-15
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/20
    ジャーナル フリー

     開発途上国では,農村部の小規模道路が河川を横断する箇所で無対策のために,雨季に水位が上昇し通行が遮断され,集落が孤立化してしまうことがある.本稿では孤立化低減に向けて,地域住民による主体的な橋梁の架設を支援する,国際技術協力の手法を示す.現地では水文量や地盤条件,建設材料の力学的特性に関する情報は限定的である.また,先進国からの援助関係者が介入するため地域住民の要望が過大化する傾向にある.そして,地域住民が有する技能により,施工法とその品質が決定される.筆者らは,太平洋州,アフリカ,アジアで住民参加により実施可能な橋梁建設を支援する事業を計画し,実践した.建設から4~7年間経過後も点検や維持管理が行われ,人的被害は無く利用されており,現況に見合う安全性と機能性を保有する橋梁の架設を実現した.

  • 馬渡 真吾, 中西 勇稀, 轟 朝幸, 兵頭 知
    2022 年 78 巻 1 号 p. 16-25
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー

     中山間地域における自動運転車両を活用した公共交通サービス導入に寄与する検討ポイントを明らかにするため,実証実験や本格導入に携わる土木技術者等の実務者の認知を把握した上で,ロジックモデルを用いて構造化して分析し,本格導入に向けた検討ポイントの評価法として提案した.この結果,運営主体の「負担感の低減」や「首長などキーマンのリーダーシップ」は特に重要であり,「自動運転技術への信頼」や「自動走行のための道路環境」など自動運転特有の知見も得た.導入の構想段階では「自動運転技術への信頼」や「地域における導入機運」の醸成など自治体の役割が重要であった.また,本格導入事例に適用し評価したところ,前述の取組みの多くが実施されており,安定的な利用者確保のための「移動目的や交流の場の創出」など課題を明らかにした.

  • 冨岡 健一, 村上 嘉謙, 筒井 勝治
    2022 年 78 巻 1 号 p. 37-49
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

     ラオスでは,都市と農村部にかかわらずごみが散乱しており,特にビニール袋やペットボトルなど「土に還らないごみ」が目立つ.住民たちには「ごみの分別」という概念が無いようにみえる.関西電力が関わったラオスの水力発電プロジェクトでは,貯水池に住む少数民族モン族520世帯3,500人に対して,移転村を建設するとともに固形廃棄物埋立て処理場を建設,運用を開始した.住民らは,山間部で焼畑や狩猟・採集を主とする自給自足の生活から,町に近い平地への都市的な生活へ転換することになり,新たに発生するごみ問題をどう解決したのか,さらに住民の意識は変わったのかの観点から水力発電プロジェクトが果たした役割を検証する.

  • 野口 寛貴, 吉岡 大誠, 力石 真, 塚井 誠人, 布施 正暁
    2022 年 78 巻 1 号 p. 50-64
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

     住民主導型交通は,住民によって管理される地域共有資源「コモンズ」としての側面を有する.本研究の目的は,Ostromのコモンズ管理論の視座から住民主導型交通を捉え,住民の協力行動とその持続性についての考察を行うことである.具体的には,住民主導型交通を運営する5つの地域の住民組織へのヒアリング調査を行い,Ostromのコモンズ管理論の視座からその実態を定性的に把握する.そして,把握した実態をコモンズ管理の指針であるコモンズ設計原理から評価し,住民の協力行動とその持続性について考察する.考察として本研究は,住民主導型交通の運営方式により,コモンズ設計原理から適合しない状況が発生することを指摘し,その状況を改善する取り組みを行う環境づくりの重要性を指摘した.

  • 淺見 知秀, 谷口 綾子, 石田 東生
    2022 年 78 巻 1 号 p. 65-79
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,公共交通のサブスクリプション型運賃は持続可能なのか,採算が取れるのか,導入の意思決定は如何に行われたのかを明らかにするため,筑波大学と小山市におけるエリア乗り放題格安バス定期券の導入プロセスと効果を分析した.筑波大学は,学内交通環境改善検討の結果,大学がバス事業者から1年間有効の定期券6千枚を一括買取りし,大学構成員に再販することで9割引を実現して17年間サービスを継続していた.小山市は,市民のバス利用促進を目的に市内全線定期券の7割引を決断し,販売期間を暫定1年として,延長して2年間サービスを継続,減収が無いため恒久サービスに転換していた.両事例には,公的主体による収入保証,モビリティ・マネジメントの継続と定期券購入者増加,地域の協働などの共通点があった.

  • 筒井 勝治, 冨岡 健一, 村上 嘉謙
    2022 年 78 巻 1 号 p. 80-93
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/20
    ジャーナル フリー

     ラオス国のナムニアップ1水力発電プロジェクトに関わる少数民族モン族3,500人の移転に際し,住民の強い反対に直面し,同意取得と移転完了に至るまでに多大な労力と時間を要した.反対の理由として,移転地の土壌の品質と,山間における焼畑と狩猟・採集を主とする循環型から,平地における水田耕作による定住型の農業形態への移行に対する不安が影響した.この対処として,事業者は移転地内にパイロットファーム(実験農場)を開設し,住民を招待して土壌改良や農業技術の指導を試みた.本論文では,パイロットファームにおける移転計画の実証や情報伝達,フィードバックの効果,ライフスタイルの変化に伴う新たな生産活動を創造する場としての可能性について論じるものである.

  • 金子 玲大, 山中 英生, 真田 純子
    2022 年 78 巻 1 号 p. 94-102
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,空石積みの修復活動のオーガナイザーに半構造化インタビューを行い,参加者がいかにしてオーガナイザーになるのかを把握し,さらに継続的に活動を続ける可能性が高まる場のマネジメントの在り方について考察した.その結果,オーガナイザーに共通する前提として類似する石積みに対する思いと活動を取り巻く環境を有していることなどが分かった.また,活動を実践することによる変化の特徴として様々な役割を果たさざるを得ない実践を経験したこと,即興的なコーディネート,ルールの原則の理解,修復作業のアレンジという4つの特徴が見られた.これらより活動のマネジメントとして,役割分担を固定しない,ルールの優先順位の伝達,雑談を促すの3つを示した.

和文報告
  • 中道 久美子, 井村 祥太朗, 萩原 剛, 菅原 鉄幸
    2022 年 78 巻 1 号 p. 26-36
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

     通勤手段を過度に自動車に頼る状態から公共交通や自転車などをかしこく使う方向へと自発的に転換することを促す「エコ通勤」は,環境対策とともに,健康増進,駐車場経費削減,企業イメージ向上,渋滞対策,公共交通活性化等にも重要である.しかし,「エコ通勤優良事業所認証制度」の登録事業所数は,近年頭打ちとなっていた.そこで,本稿では,1) 最新のブランディング戦略を取り入れたエコ通勤プロモーション刷新の検討状況について概観するとともに,2) 都道府県別の認証制度登録数の要因を明らかにすることで,今後の普及・促進のために有効な施策を示すことを目的とする.分析の結果,公共入札・調達での優遇制度を持つ自治体や,政策としてエコ通勤を推進する自治体で登録数が多く,地方自治体の役割が重要であることが示された.

  • 保田 敬一, 藤井 久司
    2022 年 78 巻 1 号 p. 103-113
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

     国土交通省はインフラシステム海外展開行動計画2021を推進しているが,競合国に比べて日本の建設コストが高いなどの指摘を当該国から頻繁に受けている.競合国との受注競争において日本が優位とならないのは建設コストが高いことも要因の一つではあるが,他にも要因はいくつか存在する.本論では,インフラシステム海外展開を推進していくうえで,本邦企業の受注における現状を示す.次に,本邦企業の受注に際して不利になるような要因の抽出とその対策,および優位に働く要因の抽出と今後の取組み方を提案することを目的とする.対象は橋梁とする.

feedback
Top