2013 年 69 巻 1 号 p. 14-26
現在日本では,地域主権改革の名の下,地方出先機関原則廃止の流れが存在している.また,民主党が掲げる「コンクリートから人へ」のスローガンにより,公共事業は縮小傾向にあり,それに伴い地方建設業もまた縮小傾向にある.しかし,先に起きた東日本大震災で復旧活動を主導したのは,今まさに廃止が論じられている地方整備局であり,その活動の先頭にいたのは地元建設業者である.本研究では,関係資料や関係者の証言に基づき,特に地方建設業に着目し,発災直後の対応として行った「くしの歯」作戦や関連する道路啓開・復旧作業の全容を改めて物語描写し,その物語描写に基づき,地方整備局を中心とした地方建設業界の防災対応力に関する基礎的な知見,ならびに,今後の防災対応を踏まえた行政制度設計に資する基礎的な知見を得ることを目的とする.