抄録
本研究の目的は,公共工事の展開が難しい水辺空間において,具体的な自然再生を実現するための手法として「市民工事」を提案することである.「市民工事」の概念は,新潟県・佐渡島の加茂湖における実践活動から導出した.加茂湖は制度的に法定外公共物として位置付けられており,公共事業によって自然再生を実現することが困難であった.そこで,加茂湖再生に向けた市民組織を設立し,地域住民が自らの手で具体的な湖岸再生事業を実施した.本研究ではその経緯に考察を加え,地域の自然環境を「コモンズ」として,地域に根ざすかたちで再生していくための有効な方法論として「市民工事」を位置付けた.