2009 年 65 巻 1 号 p. 202-213
平成19年度に原子力学会において制定された「原子力発電所の地震を起因とした確率論的安全評価実施基準」においては,地盤物性のばらつきに起因する地盤応答のばらつきを等価線形解析にモンテカルロシミュレーションを適用することにより評価することが示されている.本検討では,等価線形解析における地盤物性のばらつきと地盤応答のばらつきの関係を把握するために,単純な一次元地盤モデルを対象に,地盤の初期せん断剛性G0,せん断剛性のひずみ依存性G/G0∼γ関係,減衰のひずみ依存性h∼γ関係のそれぞれを確率的に変動させモンテカルロシミュレーションを行って,その応答値の変動特性を分析した.その結果,応答値のばらつきに与える影響はG/G0∼γ関係,G0,h∼γ関係の順に影響が大きく,G/G0∼γ関係の影響がとりわけ大きいことを確認した.また,最大応答値を地盤物性の収束値に対応する固有周期で整理すると,個々の応答の挙動は応答スペクトルにより概略評価できることを確認した.また,2点推定法により推定した応答のばらつきとモンテカルロシミュレーションの結果を比較し,2点推定法による予測の問題点を応答スペクトル特性の観点から考察した.