抄録
兵庫県南部地震(1995)での文化財被害の教訓から,博物館などの展示物の転倒安全性を高めるために二次元免震装置が急速に普及した.しかし,新潟県中越地震(2004)では,この免震台上に置かれていた国宝の火焔土器が転倒·破損する被害を受けた.以後,免震台と他の転倒防止具との併用をするなど転倒に対する対策がとられているが,複雑な形状をしている文化財の転倒防止対策を施す必要の有無の判断や, どのような対策をどの程度とるべきかなどの検討は地震工学の専門家にとっても難しい問題である.本研究は, 文化財の地震時転倒安全性評価を支援するシステムの開発を目的としており,専門知識を持たない学芸員や一般の人を対象にし,できるだけ操作が簡易なシステムを目指したものである.