抄録
接着剤で石材間を接着する耐震補強工法は広く採用されているが,接着剤には経年劣化の問題があることから,経年劣化による接着面の強度低下に関する検討を行い,施工後の補修の必要性に関する知見を得ることは重要な課題である.本研究では,経年劣化による接着剤の強度低下の程度を調べるため,まず,最も多く墓石に使用されている変性シリコン接着剤で接着した2枚の石材片の促進耐候性試験を実施し,材齢0,1,5,10,20,30年に相当する試験体を作成した.つぎに,一軸引張試験および繰り返しせん断試験を実施し,経年劣化によって強度がどのように変化するかを調べた.さらに,個別要素法に基づく数値解析によって,経年毎の墓石の地震時挙動を再現し,接着剤の耐震補強効果を検討した.